不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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6巻

6-1

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 1


 冒険都市ルノにおいて最大の冒険者ギルド「氷雨ひさめ」のギルドハウス。
 そこには、氷雨のメンバーであり「剣聖」と称される男性シュンが不機嫌な態度を隠さずにギルド長室に向かう姿があった。
 彼は不遇職の少年レイトに興味を持ち、レイトが闘技場での戦いを終えて戻ってくるところを待ち伏せしていた。だが、世界の狭間はざまからレイトの活躍を見守っているアイリスのアドバイスによって、レイトはシュンに隠れてこっそりと闘技場をあとにしたのである。
 そんなことを知るよしもないシュンはひたすらレイトが闘技場から出てくるのを待ち続けていたが、いつまでも彼が姿を現さなかったため、仕方なくギルドに引き返した。
 そしてすぐに彼はギルド長室に向かった。冒険都市に関する全ての情報を把握している、氷雨のギルドマスターのマリアに直接レイトのことを問いただすためである。
 シュンはノックもなしにギルド長室の扉を開ける。

「おい!! 嬢ちゃんはいるか!?」
「……なんの用かしら?」

 執務机に座っていたマリアが書類から目を上げてシュンを見た。
 シュンは彼女に用件を話そうとして、即座に違和感をいだいて彼女をにらみつける。
 そして自分の相対あいたいしている相手がマリア本人ではないことに気付いた。

「てめえ……シノビだな!!」
「む、よく気付いたな」

 シュンが「シノビ」と呼んだ途端、マリアの声が男性のものに変化した。口調も別人のようになっている。

「その格好での声と口調はやめろっ!! 寒気がするわっ!!」

 ――現在シュンの目の前に立っているのはマリアではなく、「シノビ・カゲマル」という氷雨に所属する暗殺者だった。彼は「変装」と呼ばれる能力を使用して彼女に完全に化けていたのである。
 最初はシュンもだまされかけたが、微妙な声音の違いを敏感びんかんに感じ取ったのだった。
 マリアと瓜二うりふたつの姿になっているカゲマルを内心気味悪く思いつつ、シュンは仕方なく彼に話しかける。

「お前が化けているということは……嬢ちゃんはまたお忍びでどこかに行っているのか?」
「今回は王都に旅立った。少なくとも二週間は戻らない予定だ」
「くそ、こんなときに……おい、この街で、俺がいない間に有名になった剣士はいるか?」
「ここをどこだと思っている? そんな人間はいくらでもいる」
「笑わせんなっ!! 闘技場で俺は見たぞっ!! 右のひとみが赤色のガキだ!!」
「赤色……?」

 カゲマルはシュンの言葉に首をかしげた。
 シュンはカゲマルとそれなりに長い付き合いである。その反応から、シュンはカゲマルには本当に心当たりがないと気付いた。
 だが実は、カゲマルはレイトと知り合いである。彼はレイトが「剣鬼けんき」の力に目覚め、右目を赤く変色させたことを知らなかったのだ。
 そのため、カゲマルは首を横に振って答える。

「悪いが心当たりはないな。そいつがどうかしたのか?」
「いや……なんでもない」
「そこまで取り乱しておいて、なんでもないということはないだろう。俺とお前の仲だ、話せ」

 カゲマルがうながすと、シュンはおもむろに話しだした。

「……誰にも話すじゃねえぞ? 闘技場でとんでもないガキが現れやがった。それと、うちのギルドに所属してるミナとかいう冒険者と一緒に行動していた」

 氷雨にはシュンの他にも「剣聖」と呼ばれる者達がいる。
 彼らに赤目の少年――レイトの存在を知られたくないため、シュンはそれだけ言って誤魔化ごまかそうとした。
 だが、カゲマルはそれを見逃さず、視線を鋭くさせてシュンをにらんだ。
 声と口調を戻したとはいえ、今のカゲマルはマリアと同じ姿である。シュンはマリアに怒られたような気分になり、仕方なく闘技場で起きた出来事を全て話した。
 全てを聞き終えたカゲマルは、シュンが闘技場で見たという少年の正体がレイトだと気付く。カゲマルの表情にわずかな変化が見られたが、話に夢中なシュンは彼の異変を見逃した。

「――まあ、そういうわけで俺はそいつを探している。何か情報が手に入ったら教えろ」
「待ってくれ、その少年を見つけてどうする気だ?」
「そんなもん決まってるだろ。喧嘩けんかだよ喧嘩」
「……お前は自分の立場をわきまえろ。氷雨の冒険者の品格をおとしめる気か」
「うるせえな……マリアの嬢ちゃんだって、よくバルのガキ相手にしょうもない悪戯いたずらを繰り返していただろ」

 バルというのは、レイトの所属する冒険者ギルド「黒虎くろとら」のギルドマスターである。彼女は両親を亡くしたあと、マリアに親代わりとして育てられていたのだった。

「本人いわく、マリア様なりの愛情表現だそうだ」
「それをバルの奴に聞かせたらどういう反応するか楽しみだな」

 マリアが不在でカゲマルも情報を知らないのであれば用はない。
 言いたいことを全て話したシュンは立ち上がり、ギルド長室をあとにしようとした。
 カゲマルはシュンがレイトを探すのをやめさせようとして口を開きかけたが、自分が何を言ったところで彼が止まることはないだろうと思い直し、結局は何も言わない。
 氷雨に所属する冒険者は、ほとんど全ての者がマリアを崇拝すうはいしている。それはカゲマルも例外ではない。
 だが、シュンは別である。彼は氷雨に所属する冒険者ではあるが、立場が少々特別のためマリアをあがめているわけではない。
 カゲマルが「レイトはマリアのおいだ」と言いかけてやめたのは、そのためだった。
 そのまま黙って見送ろうとしたとき、シュンが思い出したように振り返る。

「あ、そうそう……もう一つ聞きたいことがあるんだが、ジャンヌとロウガの奴はどこに行ったんだ? 朝から見かけねえけどよ……ゴウライの奴はいつも通り闘技場にいたがな」

 ジャンヌ、ロウガ、ゴウライはシュンと同じ剣聖だ。
 カゲマルは正直に答える。

「あの二人もここに残っている。お互いの剣の技量を確かめ合っているところだ」
「なるほど……つまり、奴らはまだあのガキを知らないのか」

 他の剣聖はまだ赤目の少年の存在を知らない――つまり、今ならば邪魔者はいない。
 そう気付いたシュンは笑みを浮かべた。

「……無茶はするなよ」

 その笑みを見てカゲマルが忠告した。

「うるせえよ」

 誰に何を言われても、シュンの考えは変わらなかった。
 闘技場で活躍した少年の噂が他の剣聖に届くのは時間の問題だ。
 ならば、彼らが動きだす前に少年と戦う。
 シュンはくだんの少年を、今日中に見つけ出すことを心に強く誓った。

「待ってろよ……小鬼野郎」

 彼はレイトを「小鬼」と表現した。
 闘技場で見せたレイトの活躍を思い出す度にシュンの身体は震える。彼の目には、レイトの姿が人型の大きさのオーガに見えたのだ。
 オーガという魔物は特段珍しい存在ではない。シュン自身も、単独で何度もレッドオーガを討伐している。それにもかかわらず、シュンはレイトの中に鬼の幻影を見た瞬間、確かに恐怖した。
 この恐怖を乗り越えない限り、自分の剣の道は終わりを迎える。
 そのような確信を抱いたシュンは、早急にレイトの居場所を特定するために動きだした。


 ◆ ◆ ◆


 ――時刻は深夜を迎え、誰もが寝静まっている。
 そんな時間帯に、レイトは自分の家の庭で立ち尽くしていた。そばにはレイトの愛狼ウルの姿があり、自分の主人が新しいスキルの習得にはげんでいる光景を観察していた。
 レイトの脳内に、世界の管理者であるアイリスの声が届く。

『なんだか久々にレイトさんにスキルの習得方法を教えるような気がします。まあ、今回は割と早く覚えられると思いますよ』
「頼りにしてるぞ、相棒」

 レイトはそう言って目を布でおおい隠し、庭の中心に座り込んだ。周囲には、彼が作り出した光量を抑えた「光球」がただよっている。
 現在レイトは、「魔力感知」という感知系のスキルを覚えるための練習を行っていた。スライムのスラミンとヒトミンが生まれたときから持っている感知能力でもある。アイリスの話によれば、訓練をすればレイトでも習得できるという。
 スキルを習得するためのポイント、SPも大分余ってきたのでそちらを使用すればすぐに覚えられなくもない。
 だが、基本的にアイリスはレイトが覚えたいスキルがある場合は自力で習得させている。SPの無駄遣いをさせないためでもあるが、自力で習得したスキルは、SPで覚えたときよりも扱いやすいという利点があるのだ。SPを消費して覚えると、最初のうちは扱い切れずに慣れるまで時間がかかってしまう。
 そのため、アイリスはレイトがスキル――特に「魔力感知」のような技能スキルを覚える際は積極的に訓練を行わせているのだった。

「ふうっ……こうしてると森の中で『心眼』のスキルを覚えたときのことを思い出すな」

 目隠ししたレイトが言うと、アイリスが念話でこたえる。

『あのときは習得に苦労しましたね。レイトさんが覚えたスキルの中で、最も訓練期間が長かったんじゃないですか?』

「心眼」は視覚以外の感覚をぎ澄まして生物の位置を把握するスキルである。
 このスキルを覚えるときもレイトは目隠しをし、長期間の訓練を経てどうにか習得した。
 森で訓練に明け暮れていた日々を思い出しつつ、レイトは空中に浮遊する自分の魔力で生み出した光球の位置を探る。
 基本的に魔法で生み出したものはレイトの意志で自由に操作できるが、視覚を封じた状態だと位置を上手く把握できない。
 感知系の技能スキルの中だと、レイトはすでに「気配感知」を習得している。だが、これは生物の気配を感じ取る能力しかないため、魔法で生み出した物体は把握できない。
 一方、今回覚えようとしている「魔力感知」は文字通りに魔力を放つ存在を感知する能力だ。レイトが周囲に漂っている光球の位置を把握することができれば、おのずとスキルも習得できる。
 レイトは意識を研ぎ澄ませる。

『何も考えず、黙って集中してください。雑念を振り払い、周囲に確かに存在する魔力を感じ取るんです』
「分かってる……」

 アイリスの助言を聞いているとき、レイトは無意識に自分が耳を澄ませていることに気付いた。
 レイトは頭を振って、意識を聴覚ではなく触覚に集中させる。音を発しない光球を聴覚でとらえることは無意味である。
 レイトはてのひらを差し出して、手探りで光球を探し出そうとする。

「違う……ここじゃない、こっちか」
「クゥンッ……」

 光球を手探りで探し当てようとする主人の姿にウルは首を傾げた。


 だが、レイトは徐々に光球が存在する位置に近付いていき、ついにはウルの目の前で光球を両手でつつみ込んだ。

「これだっ!!」
『その調子ですよ。このまま一気に全ての光球の位置を捉えてください』

 なんとなくのコツをつかんだレイトは、周囲に漂っている別の光球がある方向に身体を向けた。そして今度は、確実に正確な位置を捉えて光球を回収する。
 訓練を繰り返すごとにレイトは正確に光球の位置を掴めるようになり、やがて完全に魔力を感じ取れるようになる。
 最後の光球を掴んだ瞬間、真っ暗だったレイトの視界にスキルの習得画面が表示された。


〈技能スキル「魔力感知」を習得しました〉


「よしっ!!」

 無事に「魔力感知」のスキルを覚えたレイトは目隠しを外す。

「今回は割と簡単に覚えられたな」
『まあ、一流の魔術師なら誰もが覚えるスキルですからね。習得難度はそこまで高くはありません。これでやっとレイトさんも一流の魔術師に仲間入りしたってことです』
「そうなのか……」
『でも、この年齢で「心眼」「気配感知」「魔力感知」を覚えられる人間なんて滅多にいませんよ。誇りに思ってください』

 アイリスが言うには、「魔力感知」はある一定以上のレベルの魔術師ならば誰もが習得している能力らしい。単独では別に珍しいスキルではないのだが、暗殺者の職業の技能スキルである「気配感知」「心眼」も同時に覚えている人間となると、ほとんど存在しない。
 つまり、一通りの感知系スキルを習得したレイトは、感知分野において彼にかなう者はほぼいなくなった。今の彼ならば、かつてはレイトの世話係であり、その正体は一流の暗殺者だったアリア並みの技能を持つ人間でも位置を把握することができる。
 久々の訓練で少々疲れたが、今後の戦闘にも役立ちそうな技能スキルを覚えたことでレイトは興奮し、疲れが吹っ飛んでしまっていた。
 そんなレイトに対して、アイリスは気遣うように話しかけてきた。

『さて、今日のところはもうお休みになりますか? 闘技場で頑張っていたからお疲れでしょう?』

 レイトはこの日の昼に、闘技場で魔物と戦っていたのだった。
 だが、レイトは首を横に振る。

「いや、例のスキルを覚えたい。協力してくれる?」
『「迎撃」のことですね? ですけど、本当に大丈夫ですか? こちらのスキルを習得するのは本当に大変ですよ。いくらレイトさんでも簡単には覚えられないはずです』
「それならなおさら覚えておきたいな……俺もそんなに若くはない」

 レイトはもう少しで十五歳になる。
 この世界では、スキルの覚えやすさと年齢が深く関係している。端的に言うと、十五歳を迎えると格段にスキルを覚える速度が遅くなるのだ。
 十五歳になる前にレイトがどうしても覚えておきたいスキルは複数存在する。そのため、時間は無駄にできない。

『分かりました。では、それならを利用させてもらいましょう……ちょうどいい具合にこっちに近付いていますね。作戦は分かっていますか?』
「えっ……本当にあれ、やるの?」
『文句を言わないでください。ほら、さっさと準備してください』
「分かったよもうっ……気が進まないな」
「クゥンッ?」

 いつもよりも独り言が多いレイトに、ウルは再度首を傾げた。
 レイトはそんなウルをでやり、収納魔法を発動した。そして異空間から、以前エルフの王女ティナを救ったときに倒した「マモウ」という魔物からぎ取った毛皮のマントを取り出す――


 ◆ ◆ ◆


 ――深夜を迎えた夜の冒険都市の一角。
 シュンは酒瓶を片手に街道を歩いていた。彼はギルドを出たあとに闘技場で見た少年の手がかりを掴もうとして、レイトとともに闘技場で試合に参加していたミナをギルドの周辺で待ち伏せしていた。
 だが、結局ミナはギルドに戻ってこなかった。
 シュンは冒険都市で様々な人に聞き込みをしようかと考えたが、あまり派手に動き回ると他の剣聖に例の少年の存在を知られてしまう危険がある。
 彼は色々と考え、結局は情報屋から「右目が赤い少年」の存在に心当たりがないか問い質したが、高い料金を取られただけで有力な情報は手に入らなかった。

「くそっ……どこにいるんだあのガキ」

 シュンはいらだちを隠そうともせず、酒をぐいっとあおった。
 いくら飲んでも、シュンは昼間の闘技場の光景が忘れられなかった。特に、試合の最後に赤毛熊ブラッドベアを一刀両断したあの少年の姿を思い出すだけで酔いがめてしまう。自分が初対面の人間にここまで興味を抱いたことなど初めての経験であり、シュンは気持ちに整理がつかず酒瓶にひび割れが生じるほど強く握りしめた。
 瓶の中の酒を飲み干した彼は、今日のところは家に戻ろうとする。
 そのとき彼は不意に気配を感じ、上空に目を向けた。
 すると、建物の屋根の上を移動する人物が目に入った。最初は身軽な獣人ビースト族や森人エルフ族が屋根の上を移動しているのかと思ったが、様子がおかしい。
 シュンはその人物を見ていぶかしむ。

「なんだあいつ? 怪盗の真似ごとでもしてんのか?」

 その人物はなぜか毛皮のマントで全身をおおい、顔面を石作りの仮面で隠していた。
 その異様な格好にシュンは顔を引きつらせるが、仮面の人物が自分の元に近付いていることに気付いてさらに驚いた。

「おいおい、意味は分からないが俺狙いかよ。はっ、ちょうどいい……八つ当たり相手を探す手間がはぶけたぜ」

 シュンは仮面の人物を物盗りのたぐいだと判断し、酒瓶を放り投げて腰に差していた「日本刀」のつかに手を伸ばす。
 彼が装備している日本刀は、過去に日本からこちらの世界に召喚された勇者が持ち込んだ武器を模したものである。こちらの世界の鍛冶の知識と技術で作り上げられてはいるが、珍しい武器なのは間違いない。彼の日本刀の銘は「クロガネ」と言い、刀身は鋼鉄とミスリルの合金製だった。青い刃が特徴的である。
 剣聖であるシュンを倒して名声を上げようとする人間は非常に多い。時には過去に敗れて彼に恨みを抱いた剣士が闇討ちを仕掛けてくることもあった。
 そのため、シュンは自分の前に現れた不審人物が自分を狙っていたとしても動揺することなく、むしろ挑発する。

「あっ? 何見てんだてめえ? ぶっ殺されたいのか!!」
『…………』

 シュンの言葉を聞いて屋根の上から仮面の人物が地面に下り立った。
 軽々と着地したのを見たシュンは、相手を運動能力の高い「獣人ビースト族」の剣士かと判断する。
 やはり相手の目的は自分であると確信した彼は、仮面の人物にゆっくりと歩み寄り、剣の柄に手をかけながら話しかける。

「お前、さっきから俺のことを見てただろ? 盗賊か? それとも俺の追っかけか?」
『…………』

 仮面の人物は首を横に振るだけで何も言わない。

「首振ってんじゃねえよ。それなら俺になんの用だ? まあ、どうせ俺を倒して自分の名を上げようとする馬鹿だろ。いいぜ、暇潰しがてらに相手をしてやる!!」
『…………』

 シュンの言葉に、仮面の人物は頭を下げる動作を行った。そして、マントをひるがえして腰に差していた「木刀」を引き抜く。
 刀を引き抜こうとしたシュンはその武器を見た瞬間呆然ぼうぜんとし、即座に激しい怒りを抱く。

「てめえ……なんだその武器は? 訓練用の木刀じゃねえかっ!! 俺を舐めてんのかっ!?」
『……』

 仮面の人物は再び首を横に振り、彼の目の前で木刀を見せつけるように構える。
 そんな相手の行動にシュンは眉をひそめるが、直後に彼の目の前で予想外の出来事が生じる。

『…………』
「なっ……お前、何してんだ!?」

 ――仮面の人物が左手で掴んでいた木刀の刀身に右手を押し当てた瞬間、唐突に木刀全体が光り輝き、やがて刀身が黒くなった。先ほどまでは完全な木製だったが、仮面の人物が掌を押し当てたら、別の「金属」に変化したようにシュンの目には見えた。
 謎の能力で木刀を金属製の刀に変化させた仮面の人物に対し、シュンは鞘からクロガネを引き抜く。先ほどまでは余裕の態度を見せていた彼だが、得体の知れない能力を使用した仮面の人物に最大限の注意を払い、真剣な表情で睨みつける。

「面白い……どんな手品を使ったのか知らないが、俺に剣で挑むつもりか?」
『…………』
「いいぜ、かかってこい!!」

 言葉と同時にシュンは駆けだし、仮面の人物に向けて刃を振り下ろした――


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