1,080 / 2,083
真・闘技祭 本選編
シズネVSキバ
しおりを挟む
『それではこれより第五試合を行います!!両選手、既に試合場に登場していますね!!』
『おおっ!!次の試合は青の剣聖のシズネ選手ですか!!対する相手は……獣人国の国王であるキバ選手だ!!』
試合場には雪月花と白百合を腰に差したシズネと、獣人国の代表選手にして現役の国王であるキバが向かい合う。シズネは一国の王であるキバを前にしても態度は崩さず、それどころか少し拍子抜け表情を浮かべる。
「初戦の相手がまさか貴方とはね……」
「やあ、シズネちゃん。元気?前にうちの国でも活躍してくれたよね~」
『おっと!?これは意外、どうやらシズネ選手とキバ選手はお知り合いのようです!!』
傭兵であるシズネは獣人国にも赴き、実はキバとも面識があった。彼がまだ国王に就任する前に顔を合わせた事があり、その時はシズネは彼の元で一時期働いていた事がある。
「キバ国王……いいえ、今はキバと呼ばせてもらうわ。貴方では私に勝てない、棄権をお勧めするわ」
「そういうわけにもいかないんだよね~こう見えて、僕って王様だから……無様な姿は見せられないんだよ。シズネちゃんこそ棄権したら?今なら君のお気に入りの王子様に慰めてもらえるかも知れないよ」
「そう、なら全力で来なさい。叩き潰してあげるわ」
「ははは、お手柔らかに……」
二人とも表面上は普通に接しているが、言葉の端々に挑発と捉えられる言葉を告げる。互いに視線を交わして火花を散らし、その気迫を感じ取ったのか試合の合図の鐘が鳴らされる。
『では……試合開始ぃっ!!』
「刺突!!」
「牙斬!!」
試合が始まった瞬間、シズネは雪月花を抜いて突きを繰り出すと、キバは両腰に掲げていた短剣を引き抜き、それをシズネの放った刃を受け止める。金属音が鳴り響き、キバは後方へと対比すると、笑みを浮かべて短剣を両手に構えた。反対にシズネの方は眉を顰める。
キバは短剣を逆手に持ち直してシズネの様子を調べるが、彼女は何を考えたのか雪月花を鞘に戻すと、黙って立ち尽くす。その光景に観衆は戸惑い、キバも武器を収めたシズネに疑問を抱く。
「あ、あれ……シズネちゃん?試合、始まってるよ?」
「……もう終わってるわよ」
「えっ……」
「貴方、自分の武器がどうなっているのかも見えないの?」
シズネの言葉にキバは自分の両手の短剣に視線を向けると、いつの間にか短剣の刃が凍り付いており、やがて刃が砕けてしまう。その光景を見た観客は驚愕の表情を浮かべ、一方でキバの方は武器を失い、冷や汗を流す。そんな彼に対してシズネは淡々と告げた。
「貴方、武器無しで私に勝てると思ってるの?」
「はははっ……参ったね、こりゃ。降参するよ」
『そ、そこまでぇっ!!勝者、シズネ選手です!!』
『えええっ!?早い、早いですよ国王様ぁっ!!』
あっさりとキバは降伏を宣言すると、試合は終了してシズネの勝利となる。その光景をみていたラビットは呆れた声を上げ、獣人族の観客は非常に落胆する。その様子を見届けた他の観衆も唖然とするが、特等席のデブリは頭を抱える。
「全く、なんという試合じゃ……試合開始前の話の方が長かったではないか」
「……素晴らしい、あの魔剣を完璧に使いこなしている。これは盲点でしたね、胸が少々心許ないので声を掛けませんでしたが、彼女も十分に私の妻として相応しい人材……いや、やはり胸が小さすぎますね」
「……その言葉、絶対に本人に言っては駄目よ」
ヨシテルの言葉にマリアが反応し、流石の彼女もシズネに同情する。当のシズネ本人がヨシテルの言葉が聞こえていれば間違いなく彼を氷漬けにしただろう――
――試合時間の最短記録をシズネが更新した頃、通路の方では既に次の選手が待ち構えていた。次の試合に登場する予定のミナは城門の前で軽く運動を行い、自分の対戦相手が何者かと内心では緊張していた。
(ふうっ……集中、集中!!必ず次の試合に勝つんだ!!)
ミナは精神を集中させるように槍を握りしめ、気合を込めるように頬を叩く。そして城門が開かれるのを待っていると、ここで後方の通路から足音を耳にする。
(あれ……僕の試合の次の人がもう来たのかな?)
足音を耳にしたミナは不思議に思って振り返ると、そこには通路の奥の方から近づく人影を発見し、何者かと戸惑う。まだ自分の試合が始まる前にもう次の試合の選手が訪れたのかと思ったが、姿を現したのは思いもよらぬ人物だった。
「あれ、君って確か選手の……!?」
「…………」
姿を現した人物を見てミナは驚き、どうしてこの場にいるのかと戸惑うが、そんな彼女に対して現れた人物はゆっくりと手を伸ばす――
――それから1分もしないうちにシズネが城門を潜り抜けると、通路にて倒れているミナを発見する。彼女は驚いた表情を浮かべてミナに駆け寄ると、ミナが深手を負って倒れている事に気付く。いったい何があったのか通路内には彼女の血が広がっていた。
『おおっ!!次の試合は青の剣聖のシズネ選手ですか!!対する相手は……獣人国の国王であるキバ選手だ!!』
試合場には雪月花と白百合を腰に差したシズネと、獣人国の代表選手にして現役の国王であるキバが向かい合う。シズネは一国の王であるキバを前にしても態度は崩さず、それどころか少し拍子抜け表情を浮かべる。
「初戦の相手がまさか貴方とはね……」
「やあ、シズネちゃん。元気?前にうちの国でも活躍してくれたよね~」
『おっと!?これは意外、どうやらシズネ選手とキバ選手はお知り合いのようです!!』
傭兵であるシズネは獣人国にも赴き、実はキバとも面識があった。彼がまだ国王に就任する前に顔を合わせた事があり、その時はシズネは彼の元で一時期働いていた事がある。
「キバ国王……いいえ、今はキバと呼ばせてもらうわ。貴方では私に勝てない、棄権をお勧めするわ」
「そういうわけにもいかないんだよね~こう見えて、僕って王様だから……無様な姿は見せられないんだよ。シズネちゃんこそ棄権したら?今なら君のお気に入りの王子様に慰めてもらえるかも知れないよ」
「そう、なら全力で来なさい。叩き潰してあげるわ」
「ははは、お手柔らかに……」
二人とも表面上は普通に接しているが、言葉の端々に挑発と捉えられる言葉を告げる。互いに視線を交わして火花を散らし、その気迫を感じ取ったのか試合の合図の鐘が鳴らされる。
『では……試合開始ぃっ!!』
「刺突!!」
「牙斬!!」
試合が始まった瞬間、シズネは雪月花を抜いて突きを繰り出すと、キバは両腰に掲げていた短剣を引き抜き、それをシズネの放った刃を受け止める。金属音が鳴り響き、キバは後方へと対比すると、笑みを浮かべて短剣を両手に構えた。反対にシズネの方は眉を顰める。
キバは短剣を逆手に持ち直してシズネの様子を調べるが、彼女は何を考えたのか雪月花を鞘に戻すと、黙って立ち尽くす。その光景に観衆は戸惑い、キバも武器を収めたシズネに疑問を抱く。
「あ、あれ……シズネちゃん?試合、始まってるよ?」
「……もう終わってるわよ」
「えっ……」
「貴方、自分の武器がどうなっているのかも見えないの?」
シズネの言葉にキバは自分の両手の短剣に視線を向けると、いつの間にか短剣の刃が凍り付いており、やがて刃が砕けてしまう。その光景を見た観客は驚愕の表情を浮かべ、一方でキバの方は武器を失い、冷や汗を流す。そんな彼に対してシズネは淡々と告げた。
「貴方、武器無しで私に勝てると思ってるの?」
「はははっ……参ったね、こりゃ。降参するよ」
『そ、そこまでぇっ!!勝者、シズネ選手です!!』
『えええっ!?早い、早いですよ国王様ぁっ!!』
あっさりとキバは降伏を宣言すると、試合は終了してシズネの勝利となる。その光景をみていたラビットは呆れた声を上げ、獣人族の観客は非常に落胆する。その様子を見届けた他の観衆も唖然とするが、特等席のデブリは頭を抱える。
「全く、なんという試合じゃ……試合開始前の話の方が長かったではないか」
「……素晴らしい、あの魔剣を完璧に使いこなしている。これは盲点でしたね、胸が少々心許ないので声を掛けませんでしたが、彼女も十分に私の妻として相応しい人材……いや、やはり胸が小さすぎますね」
「……その言葉、絶対に本人に言っては駄目よ」
ヨシテルの言葉にマリアが反応し、流石の彼女もシズネに同情する。当のシズネ本人がヨシテルの言葉が聞こえていれば間違いなく彼を氷漬けにしただろう――
――試合時間の最短記録をシズネが更新した頃、通路の方では既に次の選手が待ち構えていた。次の試合に登場する予定のミナは城門の前で軽く運動を行い、自分の対戦相手が何者かと内心では緊張していた。
(ふうっ……集中、集中!!必ず次の試合に勝つんだ!!)
ミナは精神を集中させるように槍を握りしめ、気合を込めるように頬を叩く。そして城門が開かれるのを待っていると、ここで後方の通路から足音を耳にする。
(あれ……僕の試合の次の人がもう来たのかな?)
足音を耳にしたミナは不思議に思って振り返ると、そこには通路の奥の方から近づく人影を発見し、何者かと戸惑う。まだ自分の試合が始まる前にもう次の試合の選手が訪れたのかと思ったが、姿を現したのは思いもよらぬ人物だった。
「あれ、君って確か選手の……!?」
「…………」
姿を現した人物を見てミナは驚き、どうしてこの場にいるのかと戸惑うが、そんな彼女に対して現れた人物はゆっくりと手を伸ばす――
――それから1分もしないうちにシズネが城門を潜り抜けると、通路にて倒れているミナを発見する。彼女は驚いた表情を浮かべてミナに駆け寄ると、ミナが深手を負って倒れている事に気付く。いったい何があったのか通路内には彼女の血が広がっていた。
0
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。