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真・闘技祭 本選編
真の格闘家
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お互いに負傷しながらもアイラとリンダは構えると、緊迫した雰囲気が漂う。その様子を控室で見ている選手達は全員がある事に気付く。実力が拮抗しているように見える二人だが、この試合は長くは続かない事を悟る。
「リンダが得意とする発勁は両足が万全な状態でなければ使えない。仮に発動したとしても威力は期待できないだろうな」
『アイラの方も左腕を封じられたのは痛いだろう。アイラが最も得意とするのは打撃、特に拳を使った戦技は封じられる』
アイラとリンダの事を良く知っている者達からすれば二人の損傷を考えてもどちらも短期決戦を挑むと判断し、実際に彼等の予想通りにアイラとリンダは動き出す。
最初に仕掛けたのは今度はリンダからであり、彼女は痛む左足を無視して駆け出すと、アイラに向けて拳を振りかざす動作を行う。それに対してアイラは回し受けの体勢を取ろうとしたが、彼女は左腕を痛めているせいで動きが鈍く、両手を使用できなければ回し受けの効果は半減してしまう。
「乱打っ!!」
「くっ!?」
リンダがボクシングのジャブのように拳を繰り出すと、アイラは片腕のみで拳を払うが、今度は打撃を受け流して体勢を崩す事は出来ず、逆に追い詰められる。そんな彼女に対してリンダは右拳を固めると、掌底を繰り出す。
「遠当て!!」
「っ!?」
掌から衝撃波が放たれ、咄嗟にアイラは頭を下げる事で直撃は回避したが、掌底から繰り出された衝撃波によって試合場を取り囲む壁の一部が崩れ去る。本来は遠距離から攻撃を行う「遠当て」を繰り出してきたリンダにアイラは意表を突かれるが、彼女も負けずに至近距離から戦技を繰り出す。
「四連脚!!」
「くぅっ!?」
アイラは右足を繰り出すと一瞬で四発の蹴りを放ち、その攻撃に対してリンダは咄嗟に両腕を交差して防ごうとするが、完全には受け切れずに後退る。アイラは追撃を仕掛けるために彼女に近付こうとすると、今度はリンダが上空へと跳躍を行う。
痛めていない方の足だけでリンダは空中へと飛ぶと、身体を回転させながらアイラの方へと右足を振りかざす。それに対してアイラは両手を交差して防ごうとしたが、よりにもよって痛めている左腕に叩き込まれる。
「輪脚!!」
「あぐぅっ!?」
左腕を刺激されてアイラは涙目を浮かべるが、それでも気合で堪えると彼女はリンダが着地する寸前を見計らい、足払いを行う。
「はあっ!!」
「うぐぅっ!?」
今度は逆にリンダの痛めた左足の脛にアイラの踵が叩き込まれ、間違いなく骨に罅が入った。一方でアイラの方も左腕の感覚を失い、どちらも完全に左足と左腕が動かない状態へと陥る。
どうにか片足だけで体勢を保つリンダと、腕がぶら下がってバランスがうまく取れないアイラは向かい合い、次の攻撃で決着が着くと互いに気付いていた。そして二人は同時に動くとお互いの最高の技を繰り出す。
「勁撃!!」
「拳撃!!」
発勁と打撃を組み合わせた一撃を繰り出すリンダに対し、アイラは空手の「順突き」のような動作で最高速度と威力を誇る拳を放つ。二人の拳が衝突した瞬間、凄まじい轟音が鳴り響き、お互いの身体に強烈な衝撃が走った。その光景を見ていた観客たちは声を持上げる事を忘れ、どちらが勝ったのかを見届ける。
「うっ……!!」
「くぅっ……!!」
先に膝を付いたのはリンダであり、彼女は左足がもう限界を迎え、立つ事が出来なかった。一方でアイラの方はそんを彼女を見下ろし、冷や汗を流す。先の一撃でリンダの拳は砕かれ、アイラの拳は血が滲む。
「楽しかったわ……リンダちゃん」
「ええ、私もです……ですが、この勝負は」
「……貴女の、勝ちよ」
立ち尽くしていたアイラではあったが、ここで限界を迎えたかのように彼女は背中から地面に倒れ込み、その光景を見た観客は沸き上がる。倒れたアイラと片膝を地面に付きながらも見下ろすリンダ、結果から見ればこの試合の勝者はリンダで間違いなかった。
『試合終了!!勝者、リンダ選手です!!』
『いや、本当に凄い試合でしたね!!もう実況なんて忘れてましたよ!?』
ここで実況席からホネミンとラビットの声が響き、正式に試合の勝者がリンダだと確定した。だが、当の勝者のリンダは砕けた拳と左足に視線を向け、冷や汗を流す。先ほどのアイラの攻防はどう考えても現役を引退した格闘家の動きではなく、もしも彼女が全盛期の時代だったら破れていたのは自分だろうと考えた。
しかし、勝負事にもしもなどはなく、勝者はリンダである事に間違いなかった。アイラが破れた事にナオは悔し気な表情を浮かべ、一方でデブリの方は安堵した表情を浮かべ、これでヨツバ王国の威厳が更に高まった事を確信する。こうしてエキシビジョンマッチは終了すると、遂に本選の第一試合が行われようとした――
※アイラ「ビキニアーマーだったら勝てたのに……」
マリア「絶対にダメよ!!」
「リンダが得意とする発勁は両足が万全な状態でなければ使えない。仮に発動したとしても威力は期待できないだろうな」
『アイラの方も左腕を封じられたのは痛いだろう。アイラが最も得意とするのは打撃、特に拳を使った戦技は封じられる』
アイラとリンダの事を良く知っている者達からすれば二人の損傷を考えてもどちらも短期決戦を挑むと判断し、実際に彼等の予想通りにアイラとリンダは動き出す。
最初に仕掛けたのは今度はリンダからであり、彼女は痛む左足を無視して駆け出すと、アイラに向けて拳を振りかざす動作を行う。それに対してアイラは回し受けの体勢を取ろうとしたが、彼女は左腕を痛めているせいで動きが鈍く、両手を使用できなければ回し受けの効果は半減してしまう。
「乱打っ!!」
「くっ!?」
リンダがボクシングのジャブのように拳を繰り出すと、アイラは片腕のみで拳を払うが、今度は打撃を受け流して体勢を崩す事は出来ず、逆に追い詰められる。そんな彼女に対してリンダは右拳を固めると、掌底を繰り出す。
「遠当て!!」
「っ!?」
掌から衝撃波が放たれ、咄嗟にアイラは頭を下げる事で直撃は回避したが、掌底から繰り出された衝撃波によって試合場を取り囲む壁の一部が崩れ去る。本来は遠距離から攻撃を行う「遠当て」を繰り出してきたリンダにアイラは意表を突かれるが、彼女も負けずに至近距離から戦技を繰り出す。
「四連脚!!」
「くぅっ!?」
アイラは右足を繰り出すと一瞬で四発の蹴りを放ち、その攻撃に対してリンダは咄嗟に両腕を交差して防ごうとするが、完全には受け切れずに後退る。アイラは追撃を仕掛けるために彼女に近付こうとすると、今度はリンダが上空へと跳躍を行う。
痛めていない方の足だけでリンダは空中へと飛ぶと、身体を回転させながらアイラの方へと右足を振りかざす。それに対してアイラは両手を交差して防ごうとしたが、よりにもよって痛めている左腕に叩き込まれる。
「輪脚!!」
「あぐぅっ!?」
左腕を刺激されてアイラは涙目を浮かべるが、それでも気合で堪えると彼女はリンダが着地する寸前を見計らい、足払いを行う。
「はあっ!!」
「うぐぅっ!?」
今度は逆にリンダの痛めた左足の脛にアイラの踵が叩き込まれ、間違いなく骨に罅が入った。一方でアイラの方も左腕の感覚を失い、どちらも完全に左足と左腕が動かない状態へと陥る。
どうにか片足だけで体勢を保つリンダと、腕がぶら下がってバランスがうまく取れないアイラは向かい合い、次の攻撃で決着が着くと互いに気付いていた。そして二人は同時に動くとお互いの最高の技を繰り出す。
「勁撃!!」
「拳撃!!」
発勁と打撃を組み合わせた一撃を繰り出すリンダに対し、アイラは空手の「順突き」のような動作で最高速度と威力を誇る拳を放つ。二人の拳が衝突した瞬間、凄まじい轟音が鳴り響き、お互いの身体に強烈な衝撃が走った。その光景を見ていた観客たちは声を持上げる事を忘れ、どちらが勝ったのかを見届ける。
「うっ……!!」
「くぅっ……!!」
先に膝を付いたのはリンダであり、彼女は左足がもう限界を迎え、立つ事が出来なかった。一方でアイラの方はそんを彼女を見下ろし、冷や汗を流す。先の一撃でリンダの拳は砕かれ、アイラの拳は血が滲む。
「楽しかったわ……リンダちゃん」
「ええ、私もです……ですが、この勝負は」
「……貴女の、勝ちよ」
立ち尽くしていたアイラではあったが、ここで限界を迎えたかのように彼女は背中から地面に倒れ込み、その光景を見た観客は沸き上がる。倒れたアイラと片膝を地面に付きながらも見下ろすリンダ、結果から見ればこの試合の勝者はリンダで間違いなかった。
『試合終了!!勝者、リンダ選手です!!』
『いや、本当に凄い試合でしたね!!もう実況なんて忘れてましたよ!?』
ここで実況席からホネミンとラビットの声が響き、正式に試合の勝者がリンダだと確定した。だが、当の勝者のリンダは砕けた拳と左足に視線を向け、冷や汗を流す。先ほどのアイラの攻防はどう考えても現役を引退した格闘家の動きではなく、もしも彼女が全盛期の時代だったら破れていたのは自分だろうと考えた。
しかし、勝負事にもしもなどはなく、勝者はリンダである事に間違いなかった。アイラが破れた事にナオは悔し気な表情を浮かべ、一方でデブリの方は安堵した表情を浮かべ、これでヨツバ王国の威厳が更に高まった事を確信する。こうしてエキシビジョンマッチは終了すると、遂に本選の第一試合が行われようとした――
※アイラ「ビキニアーマーだったら勝てたのに……」
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