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真・闘技祭 予選編

居候ハルナ

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――屋敷の前に待ち構えていたハルナを見てレナは一先ずは屋敷の中に入れると、すぐにコトミンとティナがウル達と共に出迎えてくれた。彼女達はレナを見て嬉しそうに駆け寄るが、途中でハルナの存在に気付いて不思議そうな表情を浮かべる。


「お帰り、レナた……あれ?」
「レナ、お帰り……その女の人、誰?」
「ウォンッ?」
「うわ、なんだこのデカい犬コロ!?」


コトミンとティナはハルナとは初対面なのでレナの後についてきた彼女を見て首を傾げ、一方でハルナの方はウルの姿を見て驚く。スラミンとヒトミンもコトミンとティナの頭の上で「誰々?」という風につぶらな瞳を向け、二人の足元にいたプルミンはハルナを見て警戒したように鳴き声を漏らす。


「ぷるりんちょっ」
「うわ、何だこの黄色のスライム……変な色をしてるな」
「ぷるっしゃあっ!!」
「うわっ!?何か吐いてきたぞ!?」
「あ、プルミンを刺激するのは止めなよ。意外と短気だからすぐに胃液を出して攻撃してくるから」
「とんでもないスライムだな、おい!?」


プルミンは自分を馬鹿にされたと判断するとハルナの足元に体内の液体を吐き出し、威嚇を行う。スライムでありながら攻撃能力を持つプルミンにハルナは少し警戒した風にレナの背中に隠れると、ティナとコトミンがその様子を見て少し嫉妬したような表情を浮かべる。


「むう、レナたん。また女の子と仲良くなったの?」
「これはいけない……私達という妻がいながら浮気は許さない。愛人のシズネもきっと怒る」
「お願いだからシズネに愛人とか言うなよ……こいつはハルナ、こう見えてもミノタウロスらしい」
「ど、どうも……」


ハルナの紹介を行うとティナとコトミンは不思議そうな表情を浮かべ、どう見てもハルナは外見はミノタウロスのようには見えず、頭に角を生やしているが普通の人間にしか見えなかった。ハルナは二人が連れてきた魔物達に警戒しながらもレナにティナとコトミンの紹介をしてもらう。

魔物使いであるティナはハルナの元へと近づき、本能的に彼女が人間ではなく、ミノタウロスである事を感じ取ったのか納得したように頷く。一方でコトミンはハルナの生やしている角に興味を示し、指先でつつく。


「へえ~本当にミノタウロスなんだね。見た目は私達と殆ど変わりないけど、ミノちゃんと似たような匂いがする」
「おお、この角も本物……うりうり」
「ちょ、止めろよ……角は弱いんだって、ぐりぐりするな」
「闘技祭では敵同士なんだけど、お金を失くして泊まる所もないから俺の家に来たんだけど……何で俺を頼るのかね」
「ウォンッ?」


二人にいじられるハルナに対してレナは改めて自分の屋敷に訪れた理由を尋ね、どうして彼女がわざわざ自分の家に訪れた理由がよく分からなかった。闘技祭では確かに互いに協力する場面もあったが、別にレナはハルナと親交があるわけではない。むしろ闘技祭では敵同士の立場のため、普通ならば助ける義理はない。

しかし、お金を失ったハルナとしては頼れる相手と言えばレナしかいないらしく、彼女はどうして自分が金を失くしてレナの屋敷まで赴いた理由を話し始めた。


「実は俺、泊まっていた宿屋で騒ぎを起こして追い出されてさ……」
「何したんだよ」
「いや、あれは俺は悪くないって!!普通に食堂で飯を食ってるとき、酔っ払った男がよってきておっぱいを触ろうとしてきたから、我慢できずにぶっ飛ばしたんだよ!!でも、それで大騒ぎになって宿屋のおばちゃんから追い出されちゃったんだよ……でも、俺は悪くないだろ?正当防衛だろ?」
「まあ、それは……同情はするよ」
「おっぱいを触られようとしたなら仕方ない」
「そうだよね~私もレナたん以外におっぱいを触られそうになったら……ううっ、考えるだけで気持ち悪くなっちゃった」


ハルナは元々は闘技祭が終了するまでの間は宿屋で世話になるつもりだった。事前に前払いで闘技祭の終了日までの金銭は支払っていたのだが、宿屋で大騒ぎを起こして女主人に追い出されたという。ハルナは必死に正当防衛を主張したが、相手の男が死にかけて警備兵まで出動する事態になったため、結局は聞き入れて貰えずに途方に暮れていたという。

その後は駄目元で他の宿屋も尋ねてみたが、何処の宿屋も世界各国から訪れた観光客で部屋は借り出され、満員状態だったので何処にも泊まる事が出来なかった。仕方ないので酒場で朝まで凄そうかと考えたが、肝心の路銀が宿代を支払った時点で失っていた事に気づく。


「金を稼ごうと思って適当な魔物を狩って素材を売りさばこうとしたんだけど、冒険者ギルドは闘技祭の開催中で閉鎖してるし、他の場所で買い取ろうとして貰おうとしても俺が持ってくる素材は黒焦げばっかりだから買い取れないといわれて……結局、金も手に入らなかったから疲れてこの屋敷の前で座って休んでたら、あんたがきたわけ」
「じゃあ、俺の屋敷の前に待ち構えていたわけじゃなくて、偶然再会しただけか」
「いや、当たり前だろ。今日出会った人間の家なんて分かるわけないじゃん……」


レナはハルナの事情を聞いて頭を悩め、このまま放っておくのは少し可哀想な気がした。だが、別に友達でも仲間でもない相手を屋敷に泊める事にレナは抵抗感を覚えると、ここで扉が開いてアイラが執事を連れて姿を現す。
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