1,045 / 2,083
真・闘技祭 予選編
ヨシテルの提案
しおりを挟む
「まさか和国の剣士も一刀両断を扱える奴がいるとは……正直、驚いたよ」
「や、奴!?レナ殿、この御方をどなたと心得ているのですか!!」
「いえ、良いのですよ。今は敵同士、立場など関係はありませんよ」
レナの言葉にカンエンは憤慨するが、そんな彼女をヨシテルは制すると改めてレナと向かい合う。それだけで二人の間に緊迫した雰囲気が漂い、他の者達も圧倒される。しばらくの間は互いに見つめ合っていたが、やがてレナは何かを思い出したように武器を収めると倒れているハルナの元へ向かう。
自分との戦闘の際中に剣を納めてハルナの元に向かったレナに対してヨシテルは意外そうな表情を浮かべるが、倒れているハルナの様子を調べ、彼女の切り落とされた腕を拾い上げてレナは傷口に繋げる。そして回復魔法を発動させ、治療を行う。
「ハルナ、生きているか?」
「うっ……くそ、あの男女め……」
「それだけ減らず口が叩けるなら大丈夫そうだな」
回復魔法によってどうにか腕を繋げる事に成功し、同時にハルナは意識を取り戻す。相当に血を流したようなのでこのままだと危険な状態だが、今はこれ以上に治療をする余裕はない。ちなみにレナの回復魔法は失った手足の再生は出来ないが、今回の場合は傷口を繋げるだけなので特に支障はなかった。
「何の真似ですか?彼女は敵なのでしょう?その方に情を抱いたのですか?」
「この予選の間は手を組む事を約束したからな。それにハルナのお陰であんたの剣技を見抜く事が出来た……次は俺も本気で行かせてもらう」
「本気?今までは本気ではなかったと?」
「嘘だと思うなら試してみるか?」
レナは背中の大剣に手を伸ばしてヨシテルと向かい合う。両者は対峙すると、先ほどよりも威圧感が増した二人に他の者達は冷や汗を流す中、やがてヨシテルの方が刀を鞘に納めて笑みを浮かべる。
「いえ、ここまでにしておきましょう……このまま貴方と戦うと我が「秘剣」までも他の人間に見られてしまいそうですね」
「……まだ奥の手があるのか」
「ええ、ですが今は見せるつもりはありません。皆様、お騒がせしました。我々はもうここを去ります、本選で会いましょう」
「何!?もう戦わんのか!?」
ヨシテルの発言にゴウライは驚き、彼女としてはヨシテルと戦うつもりだったのだが、レナが間に入ったので戦いに割り込む暇がなかった。そんなゴウライに対してヨシテルは笑みを浮かべ、他の者達にも振り返って提案を行う。
「皆様も闘技場に向かう事をお勧めしますよ。こんな予選で互いに潰し合うよりも、本選で堂々と武人らしく一騎討で戦おうではありませんか」
「武人らしく、だと?」
「勿論、私の提案が受け入れられないというのであればこのまま戦い続けても構いません。ですが、予選を開始されてから相当な時間が経過しています。このままでは本選に出場する前に失格となってしまいますよ。それでは各国の代表の皆様も恥をかく事になるのではないでしょうか?」
「むうっ……」
この場には国の代表選手も多く、もしも代表に選ばれ場ながら予選も突破できない事態に陥れば確かにヨシテルの言う通りに恥をかく事に等しい。また、各々が武人として敵と戦うのならば一騎討ちで仕留めたいという気持ちも少なからずあった。
自分の提案を聞いて他の者達が顔色を変えたのを確認するとヨシテルは微笑み、倒れているヨクヒをカンエンに任せて彼は闘技場へと向かう。その様子をハルナの肩を抱えたレナは見送ると、最後にヨシテルは告げる。
「そうそう、言い忘れていましたが……私は王妃サクラ殿とは良き友人でした」
「何だって……?」
「王妃殿の最期を聞いたときは悲しみましたよ。先代国王よりもあの御方の方が余程国を発展させたでしょうね」
「…………」
「では、失礼します」
まさか王妃の名前が出るとは思わなかったレナは闘技場へ向けて歩いていくヨシテルの姿を見送り、正直に言えばいけ好かない相手だと思った。しかし、ヨシテルの提案を聞いた者達は戦意を失ったらしく、ゴウライは真っ先に大剣を背中に戻す。
「うむ、決めたぞ!!吾輩もやはり一人で戦う方が好きだ!!それにお気に入りの兜を切り捨てられた借りを返さんとな、吾輩も本選に出場させてもらうぞ!!」
「……命拾いしたな」
「……こちらの台詞だ」
「レナ、ダイン……本選で戦おう」
「お、おう……あの、僕と戦う時は出来ればお手柔らかに」
ヨシテルの後を追うようにゴウライとクレナイも続き、ギガンとゴンゾウも武器を下ろして闘技場へと向かう。その様子を見てダインとジャンヌは安堵するが、レナとハルナの方はヨシテルに良いところを持って行かれた様に感じて気に入らない。
「……なあ、レナ。助けてくれてありがとうな」
「本当に感謝してるのなら離れろよ……おっぱいを押し付けるな」
「へへ、悪いな……闘技場まで運んでくれよ、まだちょっと本調子じゃないんでな。それと悪いんだけど、あれもついでに回収してくれるか……?」
ハルナはレナの背中にしがみつき、胸元を押し付けながらもサンドワームの死骸を指差す。彼女の行為にレナは不思議に思うと、サンドワームの死骸を確認して素材を回収して欲しい事を知る。どうやらハルナも諦めるつもりはないらしく、本選に出場するつもりらしい。
「や、奴!?レナ殿、この御方をどなたと心得ているのですか!!」
「いえ、良いのですよ。今は敵同士、立場など関係はありませんよ」
レナの言葉にカンエンは憤慨するが、そんな彼女をヨシテルは制すると改めてレナと向かい合う。それだけで二人の間に緊迫した雰囲気が漂い、他の者達も圧倒される。しばらくの間は互いに見つめ合っていたが、やがてレナは何かを思い出したように武器を収めると倒れているハルナの元へ向かう。
自分との戦闘の際中に剣を納めてハルナの元に向かったレナに対してヨシテルは意外そうな表情を浮かべるが、倒れているハルナの様子を調べ、彼女の切り落とされた腕を拾い上げてレナは傷口に繋げる。そして回復魔法を発動させ、治療を行う。
「ハルナ、生きているか?」
「うっ……くそ、あの男女め……」
「それだけ減らず口が叩けるなら大丈夫そうだな」
回復魔法によってどうにか腕を繋げる事に成功し、同時にハルナは意識を取り戻す。相当に血を流したようなのでこのままだと危険な状態だが、今はこれ以上に治療をする余裕はない。ちなみにレナの回復魔法は失った手足の再生は出来ないが、今回の場合は傷口を繋げるだけなので特に支障はなかった。
「何の真似ですか?彼女は敵なのでしょう?その方に情を抱いたのですか?」
「この予選の間は手を組む事を約束したからな。それにハルナのお陰であんたの剣技を見抜く事が出来た……次は俺も本気で行かせてもらう」
「本気?今までは本気ではなかったと?」
「嘘だと思うなら試してみるか?」
レナは背中の大剣に手を伸ばしてヨシテルと向かい合う。両者は対峙すると、先ほどよりも威圧感が増した二人に他の者達は冷や汗を流す中、やがてヨシテルの方が刀を鞘に納めて笑みを浮かべる。
「いえ、ここまでにしておきましょう……このまま貴方と戦うと我が「秘剣」までも他の人間に見られてしまいそうですね」
「……まだ奥の手があるのか」
「ええ、ですが今は見せるつもりはありません。皆様、お騒がせしました。我々はもうここを去ります、本選で会いましょう」
「何!?もう戦わんのか!?」
ヨシテルの発言にゴウライは驚き、彼女としてはヨシテルと戦うつもりだったのだが、レナが間に入ったので戦いに割り込む暇がなかった。そんなゴウライに対してヨシテルは笑みを浮かべ、他の者達にも振り返って提案を行う。
「皆様も闘技場に向かう事をお勧めしますよ。こんな予選で互いに潰し合うよりも、本選で堂々と武人らしく一騎討で戦おうではありませんか」
「武人らしく、だと?」
「勿論、私の提案が受け入れられないというのであればこのまま戦い続けても構いません。ですが、予選を開始されてから相当な時間が経過しています。このままでは本選に出場する前に失格となってしまいますよ。それでは各国の代表の皆様も恥をかく事になるのではないでしょうか?」
「むうっ……」
この場には国の代表選手も多く、もしも代表に選ばれ場ながら予選も突破できない事態に陥れば確かにヨシテルの言う通りに恥をかく事に等しい。また、各々が武人として敵と戦うのならば一騎討ちで仕留めたいという気持ちも少なからずあった。
自分の提案を聞いて他の者達が顔色を変えたのを確認するとヨシテルは微笑み、倒れているヨクヒをカンエンに任せて彼は闘技場へと向かう。その様子をハルナの肩を抱えたレナは見送ると、最後にヨシテルは告げる。
「そうそう、言い忘れていましたが……私は王妃サクラ殿とは良き友人でした」
「何だって……?」
「王妃殿の最期を聞いたときは悲しみましたよ。先代国王よりもあの御方の方が余程国を発展させたでしょうね」
「…………」
「では、失礼します」
まさか王妃の名前が出るとは思わなかったレナは闘技場へ向けて歩いていくヨシテルの姿を見送り、正直に言えばいけ好かない相手だと思った。しかし、ヨシテルの提案を聞いた者達は戦意を失ったらしく、ゴウライは真っ先に大剣を背中に戻す。
「うむ、決めたぞ!!吾輩もやはり一人で戦う方が好きだ!!それにお気に入りの兜を切り捨てられた借りを返さんとな、吾輩も本選に出場させてもらうぞ!!」
「……命拾いしたな」
「……こちらの台詞だ」
「レナ、ダイン……本選で戦おう」
「お、おう……あの、僕と戦う時は出来ればお手柔らかに」
ヨシテルの後を追うようにゴウライとクレナイも続き、ギガンとゴンゾウも武器を下ろして闘技場へと向かう。その様子を見てダインとジャンヌは安堵するが、レナとハルナの方はヨシテルに良いところを持って行かれた様に感じて気に入らない。
「……なあ、レナ。助けてくれてありがとうな」
「本当に感謝してるのなら離れろよ……おっぱいを押し付けるな」
「へへ、悪いな……闘技場まで運んでくれよ、まだちょっと本調子じゃないんでな。それと悪いんだけど、あれもついでに回収してくれるか……?」
ハルナはレナの背中にしがみつき、胸元を押し付けながらもサンドワームの死骸を指差す。彼女の行為にレナは不思議に思うと、サンドワームの死骸を確認して素材を回収して欲しい事を知る。どうやらハルナも諦めるつもりはないらしく、本選に出場するつもりらしい。
0
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
最強の職業は付与魔術師かもしれない
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。
召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。
しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる――
※今月は毎日10時に投稿します。
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
魔法使いじゃなくて魔弓使いです
カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです
魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。
「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」
「ええっ!?」
いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。
「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」
攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。