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真・闘技祭 予選編

和国のヨシテル

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「ご、ゴンゾウ!?僕達、友達だよな!!まさか本気で戦うつもりじゃないよな!?」
「ダイン、悪いが今は敵同士だ……加減は出来ない。全力で行くぞ!!」
「ダインさん、下がって下さい!!ここは私が……」
『おおっ、ジャンヌ!!お前もそこにいたのか、ならば久しぶりに手合わせしようではないか!!』
「ゴウライ、貴様の相手は俺だといったはずだぞ!!」


戦闘態勢に入ったゴンゾウに対してダインは慌てふためき、そんな彼を庇うようにジャンヌが前に出ると、ゴウライも嬉しそうな声を上げて彼女の元に向かおうとする。それをギガンが遮り、一方でクレナイの方はレナと向かい合う。互いが牽制する形となり、膠着状態へと陥った。


「小僧、貴様の相手は我だ!!」
『むっ!?待て、レナに目を付けたのは吾輩が先だぞ!!』
「何度も言わせるな!!お前の相手はこの俺だ!!」
「ちょちょ、どうなってんだよこれ……なんでこんな時に限ってやばい奴等ばっかりなんだ!?」
「へへへ、面白くなってきたな。よし、じゃあ俺も参加させてもらうぜ!!」
「だからそもそもお前は誰だよ!?」


ハルナも電流を迸らせて誰と戦うかを決めようとした時、ここでさらに数名の人影が上空から舞い降りた。数は3人、その内の二人はレナの顔見知りでもあり、他の者達も驚く。


「おや、どうやら取り込み中のようですね」
「気配が集まっているからと来て見れば、凄い状況に陥ってますね」
「レナ!!やっと見つけたぞ、あたしと勝負しろ!!」
「カンエンさん?それにヨクヒ……?」


姿を現したのは和国の代表のカンエン、ヨクヒ、そしてレナも初めて見る顔の人物だった。マリアにも見劣りしないほどの美貌を誇り、声音も美しい。どう見ても女性にしか見えないが刀の本人は自分の事を男性と言い張り、配下の者達も彼の事を男性として取り扱う。

カンエンとヨクヒを従えて現れたのは和国の将軍であると同時に国を治める立場の「ヨシテル」だった。彼はあろう事か獣人国の国王であるキバと同様にどうやら闘技祭に出場していたらしく、彼の姿を見てギガンは驚く。


「なっ……よ、ヨシテル殿!?どうして貴殿がここに!?」
「おや、そこにいらっしゃるのはギガン殿ですか。はて、どうしてと言われましても私もこの大会に参加しているのでここにいるのはおかしなことではないですよ?」
「一国の王が闘技祭に参加だと……!?」
「それはキバ殿も一緒です。何か問題でも?」


ヨシテルの正体を知っているギガンとクレナイは流石に動揺を隠せず、まさか彼が闘技祭に出場しているなど思いもしなかったのだろう。一方でレナは初めて見る顔に戸惑い、何者なのかと問い質そうとした時、ヨシテルは腰に差した刀に手を伸ばす。

彼が所有する刀の柄には「三日月」を想像させる紋様が施され、ヨシテルが刀身を引き抜くと、そのあまりの刃の美しさに誰もが圧倒される。武器には知識がない素人の人間でさえも魅了され、刀が鞘から引き抜かれるとヨシテルは天に翳す。


「和国の国宝……「宗近」人前で見せるのは初めてかもしれません」
「む、宗近だと!?」
「和国に伝わる伝説の刀……まさか、実在したというのか!?」
『ほう、それが噂に名高い宗近か!!』
「凄い……こんな美しい刀身、見た事がない」


宗近という名前を聞いてクレナイもギガンも驚き、ジャンヌやゴウライも存在を知っていた。ヨシテルが取り出した「宗近」は地球にも存在する「三日月宗近」という刀を参考に作り出された名刀である。

七大聖剣や七大魔剣ほどの知名度はないが、ヨシテルが所有する刀の中でも「宗近」は名前だけが世間にも伝わっているが、実際の所はその刀を見たという人間はいない。他国でも名前だけは知れ渡っている刀だったが、それがどのような形状なのか、どんな色合いの武器なのかを知る者はいなかった。そんな伝説の刀をヨシテルは引き抜くと、彼は円を描くように手首のみを利用して刀を振り回す。


「我が将軍家に伝わる剣技、披露しましょう。最初の相手は……貴方です」
『ぬうっ?吾輩か?』


ヨシテルは視線を向けた先に存在するのはゴウライであり、自分が指名された事にゴウライは首を傾げると、そんな彼に対してヨシテルは刀を正面に構える。まさか最強の剣士であるゴウライに正面から挑むつもりなのかと他の者は戸惑うが、ヨシテルはゴウライへ向けて駆け抜ける。

ゴウライの元へ向かうヨシテルの姿を見てレナは彼が「縮地」を扱えないのかと思ったが、ヨシテルは一歩踏みつける度に加速し、距離を詰めれば詰めるほどに速度を増す。その光景を見てゴウライは咄嗟にデュランダルを構えるが、それに対してヨシテルは彼女が動く前に刃を振り抜く。


「壱の太刀、閃光」
『ぬおっ――!?』


次の瞬間、三日月が光り輝いたかと思うと凄まじい速度で刃が繰り出され、ゴウライの兜に刃が突き刺さる。その光景を見た者達は驚き、ゆっくりとゴウライは膝を崩した。
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