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真・闘技祭 予選編
妖刀「白夜」
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「そういえば自己紹介がまだでしたね。初めまして、私は和国出身のゲンサイと申します」
「ゲンサイ……人斬りで有名な剣豪みたいな名前だな」
「みたいな、ではなくて私の本職は人を斬る事です」
「はあっ!?お、お前……人殺しか!?」
ゲンサイの言葉にレナではなくハルナの方が驚き、一方でレナの方も人を斬る事が本職だと名乗るゲンサイに驚く。しかし、ゲンサイは至って真面目な表情で彼は自分の素性を明かす。
「勘違いしないで欲しいのですが、別に私は無実の人間を斬るような殺人鬼ではありません。死刑が確定した罪人のみ……この国の人間が言う所の処刑人なのですよ」
「処刑人?」
「私の役目は死罪と判断された人間を斬るのが仕事なのです。しかし、いくら悪人といっても相手を苦しませて死なせるのは可哀想でしょう?だから私は人を斬る時は出来る限り苦しまず、一瞬で死ねるように刃を振るのです……この白夜は私が100人の罪人を苦しまずに逝かせたときにヨシテル様から授かった刀なのです」
「ひゃ、100人も斬ったのか……?」
うっとりとした表情でゲンサイは和国の将軍にして国を治める立場にあるヨシテルから授かった白夜を見つめる。その態度にレナとハルナは嫌な悪寒を覚え、あろうことゲンサイは抜き身の刃を掌で掴み、血が滲むほどに強く握りしめた。その様子を見てハルナは慌てふためく。
「ば、馬鹿っ!?何やってんだ指が切れるぞ!?」
「ご安心ください、この刀は先ほども言ったように人を傷つけるのではなく、癒すために作り出された刀なのです。この程度の傷、瞬く間に治りますよ」
「……イカれてるな」
心配した声を上げたハルナに対してゲンサイは刃から手を離すと、彼女とレナに掌を見せつけた。宣言通り、刃に切り裂かれたはずの傷口は一瞬にして塞がってしまい、残されたのは手を切った時に噴き出した血液だけがこびり付いていた。
ゲンサイは手の血液を拭うと、彼の掌は最初から傷などなかったかのように存在せず、白夜で斬られた傷は原理は不明だが一瞬で完治してしまうらしい。そのため、白夜は「殺す」のではなく「生かす」ための武器だと主張する。
「この白夜は元々は罪人に罰を与えるために作り出された妖刀です。この刀に切り付けられた人間は痛みを負っても傷がすぐに塞がるため、いくら刃で切り裂いても痛みを覚えても肉体が傷つく事はないのです。しかし、いくら傷が完璧治るといっても切られれば実際に痛みを感じるし、首や頭を切断すれば激痛に耐え切れずに死んでしまいます。あまりにも残酷な武器として長らくの間封印されていた代物でしたが、ヨシテル様は私の剣の腕を認めて授けてくれたのですよ」
「な、何だこいつ……気持ち悪い奴だな」
「聞いてもいないのにべらべらと喋る奴ほど気味が悪いのはいないな」
自分に酔いしれているようにゲンサイは白夜を天に掲げて語り掛け、彼の言葉はレナとハルナに対しての自慢というより、まるで自分語りを行っているかのような振舞いだった。そんなゲンサイの姿を見てレナとハルナは視線を交わし、気まずい表情を浮かべる。
「私は罪人を斬る際、不必要にいたぶって斬り付けていたのは確かです。人間の身体というのは何処まで傷つければ死ぬのか、あるいはどんな箇所を斬れば苦しむのかを確認するため、私は毎夜のように罪人を斬り続ける日々を送っていました」
「お前、最低だな!!」
「くそ野郎じゃねえか!!」
「しかし、ある時にヨシテル様が自ら赴き、私にこの刀を授かった時、あの御方はこうおっしゃられました。今後、罪人の命を絶つときはこの白夜を使用し、彼等を一撃で確実に苦しまないように殺せと……もしも約束を破った場合、私の命で償えと厳命されました。その言葉を聞いたとき、私は悟ったのです……この御方は私が白夜を持つ資格があるかどうかを試しているのだと!!」
「それ、お前の事が嫌いだから渡したんじゃないの?失敗した殺す気まんまんじゃん」
「明らかに失敗したら殺してやるという意思を感じるんですけど……」
レナとハルナの言葉が聞こえていないのか、ゲンサイは感涙しながらも天に掲げていた白夜を下ろし、改めてレナとハルナと向かい合う。彼は硬骨な表情を浮かべ、二人に対して告げた。
「しかし、今の私は一剣士としてこの場に降り立ったのです。ご安心ください、貴方達を殺すような真似は致しません。ですが、最近は罪人も減って私の仕事も減ってしまったので少々身体が高ぶっているのです……なので、もしかしたら手元を誤るかもしれません」
「お前も殺す気まんまんじゃねえか!!全然反省していないな!?」
「はあっ……もういいや、こいつやっちまおうぜ」
「ふっ、愚かな……私の間合いに入った瞬間に貴方達は立つ事も出来ませんよ」
ゲンサイの本性を知ったレナとハルナは早急に狂気に満ちたこの男を倒そうとするが、それに対してゲンサイは居合の構えを取る。流石に一流の剣士はあって隙はなく、迂闊に彼の刀の間合いに近付けば切り裂かれるのは間違いない。白夜は切った傷を一瞬で完治するといっても、斬られた際の苦痛まではなくなるわけではないため、迂闊に踏み込んで急所を斬られたらあまりの激痛でショック死してしまう可能性も否定は出来ない。
正直に言えばレナとしては面倒な相手と当たったと思い、このまま黙って行かせてくれそうではないため、少し困った表情を浮かべるとここでハルナがレナに話しかけてきた。
「ゲンサイ……人斬りで有名な剣豪みたいな名前だな」
「みたいな、ではなくて私の本職は人を斬る事です」
「はあっ!?お、お前……人殺しか!?」
ゲンサイの言葉にレナではなくハルナの方が驚き、一方でレナの方も人を斬る事が本職だと名乗るゲンサイに驚く。しかし、ゲンサイは至って真面目な表情で彼は自分の素性を明かす。
「勘違いしないで欲しいのですが、別に私は無実の人間を斬るような殺人鬼ではありません。死刑が確定した罪人のみ……この国の人間が言う所の処刑人なのですよ」
「処刑人?」
「私の役目は死罪と判断された人間を斬るのが仕事なのです。しかし、いくら悪人といっても相手を苦しませて死なせるのは可哀想でしょう?だから私は人を斬る時は出来る限り苦しまず、一瞬で死ねるように刃を振るのです……この白夜は私が100人の罪人を苦しまずに逝かせたときにヨシテル様から授かった刀なのです」
「ひゃ、100人も斬ったのか……?」
うっとりとした表情でゲンサイは和国の将軍にして国を治める立場にあるヨシテルから授かった白夜を見つめる。その態度にレナとハルナは嫌な悪寒を覚え、あろうことゲンサイは抜き身の刃を掌で掴み、血が滲むほどに強く握りしめた。その様子を見てハルナは慌てふためく。
「ば、馬鹿っ!?何やってんだ指が切れるぞ!?」
「ご安心ください、この刀は先ほども言ったように人を傷つけるのではなく、癒すために作り出された刀なのです。この程度の傷、瞬く間に治りますよ」
「……イカれてるな」
心配した声を上げたハルナに対してゲンサイは刃から手を離すと、彼女とレナに掌を見せつけた。宣言通り、刃に切り裂かれたはずの傷口は一瞬にして塞がってしまい、残されたのは手を切った時に噴き出した血液だけがこびり付いていた。
ゲンサイは手の血液を拭うと、彼の掌は最初から傷などなかったかのように存在せず、白夜で斬られた傷は原理は不明だが一瞬で完治してしまうらしい。そのため、白夜は「殺す」のではなく「生かす」ための武器だと主張する。
「この白夜は元々は罪人に罰を与えるために作り出された妖刀です。この刀に切り付けられた人間は痛みを負っても傷がすぐに塞がるため、いくら刃で切り裂いても痛みを覚えても肉体が傷つく事はないのです。しかし、いくら傷が完璧治るといっても切られれば実際に痛みを感じるし、首や頭を切断すれば激痛に耐え切れずに死んでしまいます。あまりにも残酷な武器として長らくの間封印されていた代物でしたが、ヨシテル様は私の剣の腕を認めて授けてくれたのですよ」
「な、何だこいつ……気持ち悪い奴だな」
「聞いてもいないのにべらべらと喋る奴ほど気味が悪いのはいないな」
自分に酔いしれているようにゲンサイは白夜を天に掲げて語り掛け、彼の言葉はレナとハルナに対しての自慢というより、まるで自分語りを行っているかのような振舞いだった。そんなゲンサイの姿を見てレナとハルナは視線を交わし、気まずい表情を浮かべる。
「私は罪人を斬る際、不必要にいたぶって斬り付けていたのは確かです。人間の身体というのは何処まで傷つければ死ぬのか、あるいはどんな箇所を斬れば苦しむのかを確認するため、私は毎夜のように罪人を斬り続ける日々を送っていました」
「お前、最低だな!!」
「くそ野郎じゃねえか!!」
「しかし、ある時にヨシテル様が自ら赴き、私にこの刀を授かった時、あの御方はこうおっしゃられました。今後、罪人の命を絶つときはこの白夜を使用し、彼等を一撃で確実に苦しまないように殺せと……もしも約束を破った場合、私の命で償えと厳命されました。その言葉を聞いたとき、私は悟ったのです……この御方は私が白夜を持つ資格があるかどうかを試しているのだと!!」
「それ、お前の事が嫌いだから渡したんじゃないの?失敗した殺す気まんまんじゃん」
「明らかに失敗したら殺してやるという意思を感じるんですけど……」
レナとハルナの言葉が聞こえていないのか、ゲンサイは感涙しながらも天に掲げていた白夜を下ろし、改めてレナとハルナと向かい合う。彼は硬骨な表情を浮かべ、二人に対して告げた。
「しかし、今の私は一剣士としてこの場に降り立ったのです。ご安心ください、貴方達を殺すような真似は致しません。ですが、最近は罪人も減って私の仕事も減ってしまったので少々身体が高ぶっているのです……なので、もしかしたら手元を誤るかもしれません」
「お前も殺す気まんまんじゃねえか!!全然反省していないな!?」
「はあっ……もういいや、こいつやっちまおうぜ」
「ふっ、愚かな……私の間合いに入った瞬間に貴方達は立つ事も出来ませんよ」
ゲンサイの本性を知ったレナとハルナは早急に狂気に満ちたこの男を倒そうとするが、それに対してゲンサイは居合の構えを取る。流石に一流の剣士はあって隙はなく、迂闊に彼の刀の間合いに近付けば切り裂かれるのは間違いない。白夜は切った傷を一瞬で完治するといっても、斬られた際の苦痛まではなくなるわけではないため、迂闊に踏み込んで急所を斬られたらあまりの激痛でショック死してしまう可能性も否定は出来ない。
正直に言えばレナとしては面倒な相手と当たったと思い、このまま黙って行かせてくれそうではないため、少し困った表情を浮かべるとここでハルナがレナに話しかけてきた。
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