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真・闘技祭編

ダインの修行

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「――あいてて……な、何だ!?何が起きたんだ!?」


マリアの転移魔法陣によって強制的に転移したダインは意識を取り戻すと、いつの間にか自分が草原のような場所に存在する事に気づく。驚いた彼は起き上がって周囲の様子を確認すると、マリアが渡した杖が落ちている事に気づく。

ダインは自分が草原にでも転移したのかと思ったが、よくよく確認すると周囲には嫌に見覚えがある大樹がいくつか生えている事に気づき、しかも大樹の周辺部分のみは雑草すら生えていない。しかもダインの傍には見覚えがある果物が落ちていた。


「あ、ちょっと待って……これって、何だっけ?何処かで見たような……あっ!?」


果物を拾い上げたダインはその正体が「樹肉」と呼ばれるアトラス大森林の東聖将が管理する「魔の草原」にしか生えていない大樹の果物だと思い出す。この果物は非常に美味しいのだが、何故か魔物を引き寄せる性質を持ち合わせ、その実を喰らうために魔の草原の近くに訪れた魔物達は樹肉に引き寄せられる。

樹肉の虜になった魔物達は独り占めを行うために争いを行い、仮にそれが同種であろうと自分よりも強い力を持つ相手だろうと躊躇なく襲い掛かる。そのために樹肉が生えている魔の草原には多数の魔物が現れるという事で東聖将軍の狩猟場として利用されている事を思い出す。


「嘘だろ、おい……僕、またヨツバ王国に飛ばされたのか!?」


手にした樹肉を確認して慌ててダインは投げ捨てると、周囲の様子を観察する。仮にここが本当に魔の草原ならば命は危うく、何としてもこの場を離れる必要があった。だが、最悪な事にダインが逃げ出す前に魔物の大群が駆けつけ、多数のオークやコボルトが草原に乗り込んできた。


『プギィイイイッ!!』
『ガアアアアッ!!』
「ぎゃあああっ!?」


数えきれないほどの数の魔獣の群れを確認してダインは悲鳴を上げ、周囲から迫る魔物の群れを見て焦った彼は影魔法を発動させる。何としても自分を身を守るため、ダインは影魔法で近づいてきた魔物を振り払う。


「来るなぁっ!!シャドウ・スリップ!!」
「ギャインッ!?」
「フガァッ!?」


自分の周囲に影を鞭のように変化させて振り払う事で接近してきた魔獣を振り払い、次々と近づいてくるオークやコボルトを吹き飛ばす。だが、樹肉によって理性を失った魔獣達は自分の行動を邪魔するダインの存在を許せず、真っ先に襲い掛かってきた。

無我夢中に影を操作して魔獣達の足元を振り払うダインだったが、鈍重なオークだけならばともかく、身軽で素早いコボルトの場合は影に足を奪われないように跳躍してダインに襲い掛かろうとする。


「ガアアッ!!」
「ひいっ!?シャドウマン!!」
「アガァッ!?」


ダインに噛みつこうとしたコボルトの1体が彼の作り出した人型の影人形によって阻まれてしまう。コボルトは唐突に出現した影人形に戸惑いながらも牙を食い込ませようとするが、物理攻撃は一切通じない影人形の前では意味を為さず、逆に押し飛ばされてしまう。


「この、邪魔だっ!!」
「ギャインッ!?」


影人形に押し飛ばされたコボルトは地面に倒れるが、生憎と影人形には攻撃能力はないため、いくら殴りつけたところで相手に損傷を与える事は出来ない。だが、地面に叩きつけられれば話は別であり、その様子を確認したダインはある方法を思いつく。


(あれ、もしかして僕のシャドウマンなら……こいつらに勝てるんじゃないのか!?)


今までは影人形を防衛のためにしか使った事がないダインだったが、コボルトを圧し飛ばして地面に叩きつけた姿を確認し、ある事を思いつく。危機的状況だが、自分一人では戦う術がないと思っていたダインは試しに影人形を背後に移動させて周囲の様子を伺う。

魔物達は突如として出現した影人形とダインを取り囲み、樹肉を得る邪魔をするならば容赦はせず、同時に襲い掛かってきた。周囲から押し寄せる魔物の群れに対してダインは杖を地面に突き刺した状態で聖痕の力を発動させた。


『ガアアアアッ!!』
「ひいっ……ぼ、僕を守れっ!!」


迫りくる魔獣の姿にダインは怖気づきそうになりながらも影人形に命令を与えると、影人形は巨大化してダインに覆いかぶさるように抱き着く。その結果、無数の魔獣の牙や爪が影人形の肉体によって阻まれる。

魔獣達は必死に牙や爪を食い込ませようとするが、影人形は物理攻撃は一切聞かず、それどころかどんな攻撃も反発する。仮にゴンゾウのような巨人族の攻撃を至近距離から受けようと影人形には損傷は与えられないだろう。ダインは自分の影人形によって阻まれた魔獣の様子を伺い、気合を込めた声を上げながら影人形を操作した。


「離れろぉっ!!」
『ギャインッ!?』


影人形が両腕を振り払うと魔獣達は派手に吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられた。影人形の攻撃自体は痛くもかゆくもないが、勢いを付けた状態で地面に叩きつけられれば損傷は避けられない。
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