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真・闘技祭編

意外な訪問客

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――闘技祭の再開のため、冒険都市には大勢の巨人族と小髭族が集まっていた。彼等は闘技場の大改築のために雇われ、二か月後に開催される闘技祭までに10万人が入れるだけの大きぼな闘技場を作り出そうとしていた。人間よりも力が強い巨人族、器用さを持ち合わせている小髭族が力を合わせれば作り上げられない建物などない。

その一方で冒険都市の方ではまだ闘技祭の開催から二か月の猶予があるにも関わらず、世界中から数多くの武芸者が集まっていた。その中には冒険者だけではなく傭兵なども多く、闘技祭の賞金目当てで訪れる賞金稼ぎも多かった。彼等は来るべき闘技祭に備えて英気を養うため、街中の宿屋を占拠して二か月後の闘技祭まで待機する。

誰もかれもが闘技祭の開催を待ちわびる中、レナの仲間達の中で一人だけ闘技祭の開催などに興味がなく、先日の巨塔の大迷宮にて大儲けしたと思ったのに借金の返済で利益が殆どなかったダインの元に意外な人物が訪れた。


「随分と狭い家ね。それに埃臭いわ、ちゃんと掃除しているのかしら?」
「相変わらずボロい家だね、あんた稼いでるんだからもっといい家に住んだらどうだい?」
「勝手に乗り込んできて失礼過ぎはしませんかね!?いったい何の用だ……いや、ですかっ!?」
「ダイン君、落ち着いて!!焦る気持ちは分かるけど……」


ダインが住んでいる家に訪れたのはミナを護衛にして訪れたマリアと、昔から色々と縁ががあるバルだった。急に自分の家に訪れた3人にダインは怒鳴りながらもお茶を用意すると、3人はお茶を飲んでから一息入れる。


「ふうっ……あら、意外と美味しいわね。お茶の入れ方は中々よ」
「当然だね、こいつに美味しいお茶を汲むように躾けたのはあたしだからね」
「あ、ダイン君。良かったら甘い物も貰えるかな?」
「いや、本当に何しに来たんだよ!?お茶を飲むために僕の家に来たわけじゃないんだろ!?」


甘味を要求してきたミナにダインは来客用に用意していた茶菓子を用意すると、マリアは本題を思い出したようにバルに振り返り、彼女に説明を行わせた。


「ああ、悪い悪い。久しぶりにあんたの茶を飲みたくなってね……というのは冗談だよ。だからその杖を降ろしな」
「あんたの冗談は昔から笑えないんだよ!!たくっ……こっちはレナ達が修行で忙しいから仕事を手伝って貰えなくて大変だっていうのに」
「あれ?ダイン君は一人で依頼を受けたりしないの?」
「僕は魔術師だ!!レナじゃないんだから、普通に単独で依頼を受けるわけないだろ!!魔術師の本領は後方支援なんだから誰かに守って貰わないと討伐系の仕事は出来ないんだよ!?」
「正論ね、肉体面では非力な魔術師が一人で危険を犯すのは自殺行為よ」


ダインはレナもゴンゾウもシズネも現在は闘技祭に備えて修行中のため、彼等の力を借りれないので碌に冒険者ギルドで仕事を受ける事も出来なかった。晴れてAランクにまで昇格したにも関わらず、ダインはお金を稼ぐことが出来ない現況に嫌気を差していた。

闇魔導士の欠点があるとすれば攻撃能力を持つ魔法を覚えられないという点であり、ダインの扱う魔法は相手を拘束するか、あるいはステータスを低下させる事しか出来ない。全く攻撃能力がないというわけでもないのだが、ダインの真価は他の人間の「援護」であるため、レナのように前に出て戦えるわけではない。


「たくっ……闘技祭だか何だか知らないけど、さっさと終わってレナ達も早く戻ってきて欲しいもんだ」
「あんたね、闘技祭がどれだけ大変な行事なのか分かっていってるのかい?」
「知らないよそんなの……こっちは今を生きるだけで精いっぱい何だよ」
「たくっ、よく今まで生きてこれたねあんた……まあ、それはともかく本題に入るよ。ダイン、あんた闘技祭に出場しな」
「はあっ!?」


唐突に訪れてとんでもない事を言い出したバルにダインは目を見開くが、彼女は真剣な表情を浮かべており、決してふざけている様子はなかった。だが、だからこそバルの言葉にダインは信じられない表情を浮かべ、どうして自分が闘技祭に参加しなければならないのかと問う。


「な、なんで僕が闘技祭なんかに参加するんだよ!?今回の闘技祭は部門別がなくなったから、戦闘職も魔法職の人間も同じ規則で戦うんだろ!?そんなの、非力な僕が勝ち残れるわけないだろ!?」
「それは貴方の実力次第よ。今回の闘技祭、私は表立ってレナの協力は出来ないけれど……あの子のために力になりたいと思うのなら手伝いなさい」
「れ、レナのため……それ、どういう意味ですか?」


レナの名前が出てきた事にダインは戸惑い、どうして自分が闘技祭に参加する事がレナの役に立てるのかと思うと、マリアはダインに闘技祭で参加する事の意味を伝えた。
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