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真・闘技祭編

六聖将の参加

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「安心せよ、流石に今回は前回のような失敗はせん。それに今回の場合はマリアがおるからのう。いざという時は転移魔法で安全に送ってもらえば問題はない」
「マリア?」
「新しくハヅキ家の当主に選ばれた者です。先日、貴女の元に訪れたレナ様の叔母に当たる人物です」
「ああ、聞いた事があるぞ。ヨツバ国王の建国されてから一番の天才魔術師だとな」
「マリア、か……」
「ん?どうしたクレナイ?何か気になるのか?」
「いや、なんでもない」


マリアの名前が出て着た途端にクレナイの表情が代わり、そんな彼を見てギンタロウは不思議に思うが、彼は何事もなかったかのようにいつも通りの不愛想な顔立ちへと戻る。だが、内心ではマリアの話を聞いて複雑な感情を抱く。


――実を言えばこのクレナイはマリアの母親であるハヅキとはかつて親交を築いていた。二人とも同世代のため、共に国を支える忠臣同士で気が合う。若かりし頃のクレナイはハヅキに恋心もあったが、結局二人は結ばれる事はなかった。


ハヅキの面影を残すマリアに関してはクレナイも気にかけており、何度か彼女がこの国へ訪れた時は顔を合わせた事もある。だが、当のマリア本人はハヅキと違ってヨツバ国王に対する忠誠心は持ち合わせておらず、母親の遺志を継いでハヅキ家の当主の座を継いだわけではない。


(あのハヅキの孫がバルトロス王国の王子か……何と数奇な運命だ)


ハヅキの孫であるレナがバルトロス王国の王子である事に関してもクレナイは色々と思うところがあり、ハヅキの孫血を継ぐ人間がいるというだけでも実感が湧かない。実際の所、クレナイはレナと顔を合わせた事はなく、どんな人物なのかもしれない。

守備将という立場上、クレナイは王族の警護の役目があるのでこの国から離れる事は出来ない。だが、デブリ国王がこの国から離れるという事であれば話は別であり、彼は進言する。


「陛下、バルトロス王国へ訪れるというのであれば今度は我等も同行します。前回は息子に任せましたが、今回ばかりは我等の同行を御認め下さい」
「何を言うか、王国四騎士はよく戦ってくれた。だが、確かに今回はお前達の力も必要になるだろう」
「お前……達ですか?」


デブリ国王の言い方が気になったクレナイが顔を上げると、彼は真剣な表情を浮かべて手紙に記された内容を示す。


「こちらの手紙はただの招待状ではなく、我が国からも闘技祭に参加を希望する者もいれば同行して欲しいと書かれておる。つまり、これは我が国に対して闘技祭の挑戦者がいるのかを問うておるのだ」
「何とっ!?では、まさか六聖将である我等も参加できるというのか!?」
「うむ、前回は王国四騎士に任せたが……バルトロス王国の戦士達は強い、それはお前達も重々承知しているだろう?」
『…………』


デブリ国王の言葉に六聖将の表情が一変し、誰一人として国王の言葉に否定できなかった。ツバサを除く5名はレナ達と接触し、その強さをよく知っていた。

クレナイも一対一の戦闘ではなかったとはいえ、不覚を取った事は間違いない。他の者達もレナを筆頭にこの国に訪れた冒険者達の強さを思い知らされ、決して油断できぬ相手だと認識している。


「我が国はバルトロス王国に対して大きな貸しを作ったのは事実……しかし、だからといって我が国の精鋭であるお前達がバルトロス王国の戦士に劣る道理はない!!六聖将の名に懸けて、クレナイ、ツバサ、ホムラの3名に大会へ参加する事を命じる!!」
「「はっ!!」」
「……面白い」


名前を呼ばれた3名は闘技祭の参加に関して異論はなく、ホムラに至っては再びレナと相まみえる機会が訪れる事に喜ぶ。前回の決闘では互いの武器が壊れて勝負がつかなかったが、今度は決して壊れぬ武器を用意し、万全の装備で挑むつもりだった。

名前を呼ばれなかったハシラ、ギンタロウ、白虎、の3名に関しては国の守護を任せ、国王はヨツバ王国の最高戦力を整えて闘技祭に挑む事を決意する。そのためには六聖将だけではなく、自国へ帰還したハヤテ、シュンの2名も加え、万全の準備を整える。


(なんとしてもヨツバ王国の威信を取り戻さねばならん……それにあの男が本当に娘に相応しいだけの実力者なのかを見極めねばならん!!)


なし崩し的に愛娘を嫁に出してしまったデブリ国王は未だにレナとティナの結婚に関しては認め切れず、本当にレナがティナの相手に相応しい人物なのかを見極めるため、彼は闘技祭に最強の戦力を送り込む。バルトロス王国側がレナを参加させる事は間違いなく、そもそもレナ以外の人物の中でヨツバ王国の猛将に対抗できる戦力など殆どいない。

また、今回の闘技祭には獣人国や巨人国側からも将軍を代表選手として派遣する事は予想され、恐らくはS級冒険者達も送り込まれるだろう。だからこそデブリ国王はヨツバ王国の最強の将軍達を呼び寄せ、闘技祭に優勝する事を誓わせる。


「六聖将よ、必ずや優勝して我が国が最強の国家である事を示すがいい!!」
『はっ!!』


六聖将は国王の言葉にそれぞれが覚悟を固める中、ツバサだけは複雑な表情を浮かべていた――
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