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S級冒険者編

退魔刀の更なる強化

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「それはそうとレナさん、この白竜の素材をどうするつもりですか?」
「え?普通に持って帰って売ろうと思ってるけど」
「なんと、そんな勿体ない!!こんな貴重な素材を売るなんてとんでもない!!」
「じゃあ、どうすればいいの?」


レナとしては手に入れた白竜の素材に関しては使い道が思い至らず、持って帰って換金するつもりだった。だが、リーリスによると自分に素材を預ければレナの役立つ道具を作り出せるという。


「そういう事でしたら私に素材を譲ってくださいよ。これだけの素材があれば色々と作れそうですからね、何だったらレナさんの大剣を強化してあげましょうか?」
「大剣を強化?でも、俺の大剣はアダマンタイトだよ。世界一硬い金属なんだからこれ以上の強化なんて出来るの?」
「出来ますよ。アダマンタイトは確かに硬度は固く、魔法耐性も優れていますが、これに白竜の素材を使えばより強力な剣を出来ます。私の手に掛かれば恐らく、聖剣を超える代物へと生まれ変わるでしょう!!」
「聖剣よりも凄い武器が出来るの!?」
「なんか、胡散臭いな……本当は白竜の素材をちょろまかそうとしていない」
「どきっ……いやだなぁっ、そんな事あるわけないじゃないですか」
「ガウッ……」


リーリスの言葉にレナは訝しく思うが、白竜も彼女の胡散臭い雰囲気を感じ取ったのか疑うような視線を向ける。だが、白竜の素材を持ち帰っても確かにレナでは他に使い道はなく、自分の分だけなら渡しても構わないかと思う。

退魔刀はこれまでに幾度も強化を施されているが、更に白竜の素材で強化されると聞かされればレナも不満はなく、ここはリーリスの技術を信じて退魔刀と白竜の素材を渡す。しばらくの間は鏡刀だけで戦う事になるが、リーリスの技術ならばそれほど時間を掛けずに作り上げるという。


「じゃあ、この退魔刀は私の方で強化してレナさんの家に送りますね。あ、配達の時はちゃんと判子を用意しておいてくださいよ」
「判子持ってないよ。というか、どうやって俺の家に配達するのか気になるんだけど」
「ドローンを使って送り込みます」
「あ、そこは機械の力で頼るわけか……あの転移リングとかを使うかと思った」
「いえ、あの道具は大迷宮内でしか使えませんので……そうですね、白竜の世話もありますし、数日中には完成しますよ」


鏡刀の時はほんの数分で改造を終えたリーリスだが、今回は白竜の素材の分析を行い、退魔刀をどのように強化するのか模索する必要があるらしく、すぐには出来ないという。別に急ぎ旅というわけでもないため、レナは自分が宿泊している宿屋の場所を教える。


「じゃあ、退魔刀の強化は任せるけど……そういえばリーリスはこの大迷宮から抜け出してもいいの?管理者なんでしょ?」
「私はここを離れる事は出来ませんね。なので代わりにドローンを送ります。途中で誰かに見つからないように迷彩装置を搭載したドローンを送り込むので安心してください」
「むしろ、俺としてはその迷彩装置の方が欲しいんだけど」
「駄目です、そんな装置をレナさんが装備したら今後の展開が書きにくくなります」
「何の話だよ」
「えっと……良く分からないけど、リーリスさんはここから離れられないの?一人で寂しくない?」


この場所に残り続けるというリーリスの言葉にミナが少し心配そうに答えると、彼女は全く気にしていないという風に首を振る。


「大丈夫ですよ。基本的に私は誰かが訪れるまでの間は活動を停止して休んでいますから、寂しくはありません。暇なときはゴレム達と戯れたり、外の様子を伺いに出ているので問題ナッシングです」
「そ、そうなんだ?良く分からないけど、リーリスさんが寂しくないならいいんだけど……」
「まあ、私の事を気にかけてくれたのは有難いですけどね。何でしたらまたここへ来てくださいよ、私はいつでも歓迎しますよ」
「気が向いたらね……あ、そうだ。またあのVR装置を試させてよ。今度は記憶が飛ばないようにちゃんと調整しておいてね」
「分かりました。なんでしたら今度は戦闘訓練ではなく、レナさんを主人公にしたギャルゲーの世界に行きますか?」
「そんな事もできるのかあの装置……オタクは大歓喜だな」
「ぎゃる……?」


リーリスの言葉にレナは呆れ、ミナは意味が分からなかったが、本人曰く別に管理者として何百年もこの地に留まり続ける事自体は苦痛でもなんでもないらしい。だが、他の人間が訪れる事は割と楽しみにしているらしく、定期的にここへ来て欲しいらしい。

一人が寂しくはないといっても、もう勇者も召喚される可能性も低い外の世界ではこの勇者の育成施設が再び利用される日が訪れるのかも怪しく、彼女の役割も必要ないのかもしれない。だが、リーリスは管理者という役目を与えられた以上はこの大迷宮から離れる事は出来ず、それだけに他の人間との接点が滅多に作れないため、レナ達の事を歓迎していた。
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