不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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S級冒険者編

接近不可能

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「つまり……あの建物に近づくだけで私達は魔力を奪われるという事?」
『そういう事です。これぐらいに離れていれば問題ありませんけど、私のように魔力で肉体を維持しているような人にとっては近づくだけで命とりです。レナさんのお陰で命拾いしましたが……』
「後で九尾の経験石の弁償代を要求するね」
『ええっ……』


死にかけていたホネミンは精霊薬と九尾の経験石を取り込む事でどうにか生き延びる事は出来たが、もう少し近づいていれば根こそぎの魔力を奪われて死んでいた可能性が高い。また、接近すればするほどに魔力を吸収される量が高まるらしく、魔術師であるレナ達の命も危ない。

但し、戦闘職である人間はある程度の距離を近づいても特に異変は受けないらしく、この点は魔術師と違って彼等の方が魔力を奪われにくいのかゴンゾウ達の方は特に大きな影響を受けていなかった。


「俺たちは近づいても平気だったのは何故だ?魔力を奪うというのならば俺たちも無事ではあるまい?」
『恐らく、戦闘職の人間の方は普段から魔力を放出……分かりやすく言えば魔法を使う機会がないからです。私達、魔術師は普段から頻繁に魔法を使用する事で魔力を消費します。つまり、魔力を外部に放出しやすい肉体なんですよ。だけど、戦闘職の人間の方は魔力を魔法として攻撃に扱うのではなく、肉体の内側の強化に使用しているので魔力を放出する必要がないんです』
「内側から強化?」
『戦闘職の人間が身体能力が高いのは魔力によって肉体を強化しているからです。レナさんの場合も身体強化の魔法を覚えているでしょう?要は魔術師は魔力で魔法を使う、戦闘職の人間は魔力で身体能力を強化する、この性質の違いで魔力を奪われにくいんです』
「なるほど……?」


ホネミンによると魔術師の場合は魔法を使うので普通の人間よりも魔力を外部に放出しやすい肉体らしく、一方で戦闘職の人間は魔力を体内に収める事で肉体を強化するため外部に放出しにくいという。この二つの違いから戦闘職の人間は魔力を外部から奪われにくく、影響を受けにくいという。


「なら、あの中に入れるのはゴンちゃん達だけか……」
『いえ、確かに戦闘職の方ならばあの建物に入る事は出来ると思いますが、何の影響も受けないわけではありません。私達よりは魔力を吸収される事に対して耐性があるといえど、長時間滞在してればいずれ魔力が尽きるまで奪われるはずです』
「じゃあ、ここまで来たのにあそこまで誰も入れないのか!?」
「長時間、という事は短期間の間ならば入っても問題ないという事てしょう?」
『理論的にはそうです……だけど、はっきり言って私自身が中に入れないときっと中に眠っているはずの研究機材は扱えないはずです』


シズネたちならば短時間の間は建物の中に入れるとは思われるが、彼女たちではホネミンの探し求めている研究機材を発見したとしても見分けがつかず、扱う事は出来ない。だいたいホネミン自身が建物に入らなければその研究機材も扱えないので意味はなかった。


『本当にどうしましょうかね……今回ばかりは流石の私もお手上げです』
「ここまで来たのに収穫無しで帰るのは嫌だな……」
「何か方法はないのか?」
「魔力を吸収されない方法……駄目ね、特に心当たりはないわ」
「そもそも魔力を吸収されるという事は魔法も使えないんだろ?じゃあ、レナの空間魔法で移動する事もできないのか……」
「……一つだけ私に心当たりがある」
「えっ!?コトミンちゃん、それ本当!?」


ここで意外な事にコトミンが挙手を行い、彼女は考えがあるという。コトミンの発言に全員が驚くが、彼女の作戦を聞いたレナ達はさらに驚かされる。


「普段の私のようにスラミンやヒトミンを身体に身に付けた状態なら、もしかしたら魔力を奪われる事はないかもしれない」
『あっ……なるほど、その手がありましたか!!』
「え、どういう事?」


コトミンの発言にホネミンは合点がいったように歓喜の声を上げるが、レナ達は言っている意味が分からずに聞き返すと彼女は説明を行う。


『いいですか、スライムのボディは非常に高い魔法耐性を誇ります!!その魔法耐性を利用すれば吸収されようとする魔力を抑えつけて、あの建物の中を移動する事が出来るかもしれません!!』
「そんな方法で!?」
「でも、ここって大迷宮だぞ?スラミンもヒトミンも連れてこれないだろ……」


大迷宮内では理屈は不明だが外部で生まれた魔物は連れ出す事は出来ず、それはスライムであるスラミンもヒトミンも例外ではない。だが、ここはありとあらゆる生物が生息する大迷宮であることを諭す。


『それならこの第五階層を探しまくってスライムを見つけましょう!!スライムの生息地は水場のある場所、ひとまずはあの湖を探しましょう!!』
「湖って……あの水竜が生息してた?」
「嫌な予感がするわね」
「お、おい……この後の展開が僕には読めるぞ。きっと、あの水竜と戦う羽目になるんだろ……」
『大丈夫ですって、こっちが騒がない限りはきっと手を出しませんよ!!あははははっ!!』
「今、盛大なフラグが立った気がする」


ホネミンの言葉にレナ達は異様な不安を覚えるが、建物の中に入るためにはどうしてもスライムの力が必要になるため、レナ達は引き返して先ほどの湖に戻る事にした。
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