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S級冒険者編

鉱山の封印

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――街に帰還した後、レナ達は九尾の討伐を果たした事、同時に鉱山で発見した巨大生物(炎龍)の存在を領主に知らせた。だが、領主であるセツは九尾はともかく、坑道の奥に潜む巨大生物の存在を知らなかったという。


「きょ、巨大な魔物が鉱山の中で眠っている?そんな話、聞いた事もないんですけど……」
「でも、事実よ。私達はこの目で確かめたわ……あれは迂闊に手を出してはまずい存在ね」
「そ、それは九尾よりも恐ろしいんですか?」
「うむ、眠っているはずなのに近付くだけで凄まじい圧迫感を感じた。流石にあの魔物を倒すには吾輩でも全身骨折だな!!」
「え?あ、骨が折れると言いたいんですか?」
「そうそう、それだ!!」
「……確かにあの魔物は今の我々ではどうしようもありませんね」


鉱山に潜む巨大生物、改め炎龍を目の当たりにしたレナ達は領主にその危険性を伝え、不用意に炎龍を刺激するような真似を止めるように促す。坑道を掘り進めば休眠中の炎龍を刺激し、復活する恐れがある。実際の所はアイリスによればクリムゾンを引き抜かない限りは安全らしいが、それでも下手な刺激を与えて炎龍の意識を呼び起こす真似は避けた方が良いという。


「坑道の奥にそんな危険な存在がいるなんて……で、でも、あの鉱山は魔石の宝庫なんです。もしも鉱山に誰も立ち入らなくなったらこの街は……」
「気持ちは分かるけれど、あの生物が復活すれば真っ先に狙われるのはこの街よ。いえ、相手が竜種だとした場合は被害はもっと最悪になる。何も坑道に入るなと言っているわけじゃないわ、不用意に坑道を掘り進めてあの生物を刺激するような真似は止しなさいと言っているの」
「は、はい……で、でも具体的にはどうすればいいんでしょうか?」
「安心しなさい、既に対処は私とこの子の方でしてあるわ」


炎龍を発見した後、レナとマリアは力合わせて炎龍の側に誰も近づかないように細工を施す。まずは炎龍の肉体にまで到達した坑道に関してはマリアが土属性の魔法を施し、そこにレナが支援魔法で彼女の魔法を強化を行う。その後は坑道の一部を完全に塞いでしまう。

土属性の魔法を利用して鉱山の岩盤を変形させ、土砂を練り固める事で炎龍の肉体まで辿り着いた坑道に関しては誰も入れないように塞いでしまう。今ではもう通路自体が土砂で埋め尽くされてしまったので炎龍の居場所すらも把握できず、今後は坑道を掘り進む内に異様に硬い岩盤に衝突したら無理に掘り進めないように注意する。


「あの生物の正体が掴めない以上、このまま眠らせておく以外に方法はないわ。念のために私の魔法で坑道の一部は塞いだけど、もしも別の坑道を掘り進めて生物の肉体にまで到達したらすぐにでも私に連絡を送りなさい。決して刺激するような真似はしないようにする事ね」
「はい、分かりました!!」
「それと九尾に関しては我々の手で始末しました。今後は襲われる心配はないでしょうが……これからは報告を怠らないように」
「はひっ!?そ、その節は申し訳ありませんでした!!」


最後にレミアはセツにくぎを刺すと、彼女は慌てふためきながら頭を下げた。その様子を見てレナ達はこれで依頼は達成されたと判断すると、ゴウライが急いで王都へ向かう事を提案する。


「さあ、仕事はこれで終わりだ!!すぐに王都へ戻ろう、吾輩は姉上の墓参りをしなければならないのでな!!ついでにナオにも顔を合わせねば……」
「待ちなさい!!ついでとはなんですかついでとは!?ナオ様に対して失礼でしょう!!」
「お、落ち着いてくださいレミア様!!ゴウライ様も悪気があったわけでは……」
「全く、騒がしい子達ね……では私達は失礼するわ」
「どうも……」
「は、はい!!皆様、本当にありがとうございました!!」


レナ達は領主に別れを告げると部屋を退出し、残されたセツは安堵した表情を浮かべた――





――王都へ向けて飛行船が発射すると、レナは飛行船に存在する個室にて外の様子を眺め、炎龍の事を思い返す。これまでにレナは火竜やフェンリル、あるいは腐敗竜や地竜といった強敵を倒してきた。しかし、その全ての強敵を上回る存在が地上に眠っているという事実に落ち着けなかった。


『アイリス、炎龍は本当に放っておいていいの?』
『放っておくしかありませんよ。大丈夫です、何かの拍子で復活しそうになったら私が警告しますから安心してください』
『そっか……』
『それに仮に復活したとしてもその時は私とレナさんで何とかしましょう。そうですね、ホネミンさん辺りに頼んで塔の大迷宮から白竜を呼び寄せて戦わせるという手段があります』
『どんな方法だよ。そもそも色々と無理有過ぎるだろそれ……』


アイリスの冗談にレナは気が紛れるが、炎龍をこの目で見た時の事を思い返し、本当に復活しない事を切に祈りながら飛行船が王都へ到着するまでの間、窓の外を眺め続けた――







――同時刻、二人の話の話題に上がったホネミンはとある古代遺跡にて過去に残した勇者の資料を発見していた。それを見たホネミンは目元を光り輝かせ、遂に長年の宿願が叶うかもしれない事を察した。



『この方法なら……私は身体を取り戻せるかもしれません!!』
『ぷるんっ?』



ホネミンの頭の上に乗っていたプルミンが彼女の言葉に不思議そうな表情を浮かべた。
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