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S級冒険者編
鉱山の秘密
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「この経験石の輝きは普通じゃないわ……この経験石から火竜の経験石以上に強い火属性の魔力を感じるわね」
「それは……どういう意味ですか?」
「九尾の体内から火竜を上回る火属性の魔力を帯びた経験石が出現した。これだけでもおかしな話よ、そもそも経験石の性質は生前に喰らっていた魔物の餌によって左右する。例えば火竜の経験石が破壊した後は良質の火属性の魔石として加工できるのは、火竜が火山地帯に生息して火属性の魔石を何十年、あるいは何百年も喰らい続けたからよ」
「ではこの九尾は火竜のように火属性の魔石だけを喰らって生きてきたのではないか?」
「いいえ、カゲマルの話では九尾は一か所に留まる事はないし、そもそも火山地帯の多くは火竜の生息地である可能性が高い。九尾のような存在が縄張りに入れば火山に生息する火竜が黙っていないでしょう」
「偶々、九尾が火竜の生息していない火山に住んでいた……ではないのですか?」
「その可能性も有り得るけれど、それなばどうして九尾はこんな火山ではない只の鉱山に姿を現したの?火山から発掘される火属性の魔石が好物だとすればこんな場所に九尾が住み着く理由はないはずよ」
「あ、そっか……」
竜種などの体内に存在する経験石は生まれながらに竜種が宿しているわけではなく、その竜種が喰らった魔石の魔力が体内に集まり、まるで二つ目の心臓のように形成して出来上がったのが経験石である。火竜の経験石は彼等が火山地帯に暮らす火属性の魔石を喰らい続けた事で破壊後は良質な火属性の魔石へと加工できるが、九尾の場合はその火竜を超える火属性の魔石を封じ込めた経験石を所有していた。
この事から九尾が生前に並みの火竜よりも良質な火属性の魔石を喰らい続けた事が予想されるが、それならばどうして火山地帯でもない只の鉱山に姿を現したのか理由が判明せず、マリアはこの鉱山に何か秘密があると判断した。そして彼女はレナに視線を向け、周囲の捜索を命じる。
「レナ、貴方の風の聖痕の力を使って風の精霊に周囲の探索を命じなさい。恐らく、この近くに何かが隠されているはずよ」
「え、俺が?叔母様が精霊に命じた方がいいんじゃ……」
「勿論、私も手伝うわ。だけど、風の聖痕を所持する貴方の方が風の精霊もよく従うはずよ」
「そうか……分かった。なら探してみる」
レナは掌を上げて風の聖痕を発動させ、周囲の探索を行う。一方で同時にレナはアイリスと交信を行い、マリアの予測が正しいのかを尋ねた。
『アイリス、叔母様の話を聞いてた?』
『聞いてますよ。それにしてもよく九尾を倒しましたね、まさかカラドボルグをこの状況で作り出すとは……まあ、昔と比べてレナさんも風の聖痕も所持していますし、今なら聖剣の力も扱っても問題はないでしょう』
『風の聖痕のお陰で精霊たちから魔力を分けて貰ってるから大分楽になって来たよ』
聖痕を継承したレナは以前よりも魔法の力が強化され、更に風の精霊の恩恵で魔力の回復速度が上昇していた。風の精霊が傍に存在する限りはレナも精霊から力を分けてもらい、魔力を得られる。最初の頃は制御に苦戦したが、今では風の聖痕の力も扱いこなせるようになってきた。それはともかく、マリアの予想が正しいのかをアイリスに問うと、彼女は九尾が鉱山に訪れた理由を話す。
『マリアの予想に関してですが……流石は歴戦の冒険者ですね、勘に関しては衰えていないようです』
『どういう意味?』
『九尾がこの地に訪れて鉱山を縄張りにしたのは偶然ではありません、この地に眠る強大な力に惹かれて九尾はここへ訪れたんです』
『強大な力……?』
九尾が鉱山を住処にしたのは偶然ではないという話にレナはマリアの予想が正しかった事を知って驚くが、更に続けてアイリスに言われた言葉に驚愕する。
『この鉱山はかつて炎龍と呼ばれる火竜の上位種が住処としていた場所なんです。元々、この地には鉱山など存在しなかったんですがバルトロス帝国が存在した時代に召喚された勇者がこの地に訪れ、炎龍の討伐を行おうとしました。しかし、炎龍はあまりにも強く、大勢の被害を生み出しながらも倒す事が出来ませんでした』
『炎龍……火竜よりもやばい化物なのか』
『強さだけなら白竜にも匹敵すると言われていますからね。実際に炎龍の被害で当時は数万人の人間が犠牲になりました。しかし、勇者は遂に炎龍を追い込み、討伐する事は出来ませんでしたが炎龍を仮死状態に追い込み、そして周囲の土砂を集めて炎龍を封じ込めました。つまり、この地には元々は鉱山など存在せず、過去に存在した勇者が炎龍を封じるためだけに土砂を集めて山を作り、後にその山が鉱山へと変わったんです』
『ええっ!?』
『封じられたとはいえ、炎龍の身体から放たれる魔力によって鉱山に良質な魔石が誕生しました。現代の人々はその事実を知らずに鉱山の近くに街を作り、その魔石を糧にして暮らしていたという訳です』
勇者が炎龍と呼ばれる存在を封印するため、仮死状態に追い込んだ後に大量の土砂で炎龍を埋めた後、巨大な山を作り上げた。そして長い年月が流れて山は鉱山へと変り果てたという。その話を聞いてレナはまず何処から突っ込めばいいのか分からず、とにかく九尾が訪れた理由を聞く。
「それは……どういう意味ですか?」
「九尾の体内から火竜を上回る火属性の魔力を帯びた経験石が出現した。これだけでもおかしな話よ、そもそも経験石の性質は生前に喰らっていた魔物の餌によって左右する。例えば火竜の経験石が破壊した後は良質の火属性の魔石として加工できるのは、火竜が火山地帯に生息して火属性の魔石を何十年、あるいは何百年も喰らい続けたからよ」
「ではこの九尾は火竜のように火属性の魔石だけを喰らって生きてきたのではないか?」
「いいえ、カゲマルの話では九尾は一か所に留まる事はないし、そもそも火山地帯の多くは火竜の生息地である可能性が高い。九尾のような存在が縄張りに入れば火山に生息する火竜が黙っていないでしょう」
「偶々、九尾が火竜の生息していない火山に住んでいた……ではないのですか?」
「その可能性も有り得るけれど、それなばどうして九尾はこんな火山ではない只の鉱山に姿を現したの?火山から発掘される火属性の魔石が好物だとすればこんな場所に九尾が住み着く理由はないはずよ」
「あ、そっか……」
竜種などの体内に存在する経験石は生まれながらに竜種が宿しているわけではなく、その竜種が喰らった魔石の魔力が体内に集まり、まるで二つ目の心臓のように形成して出来上がったのが経験石である。火竜の経験石は彼等が火山地帯に暮らす火属性の魔石を喰らい続けた事で破壊後は良質な火属性の魔石へと加工できるが、九尾の場合はその火竜を超える火属性の魔石を封じ込めた経験石を所有していた。
この事から九尾が生前に並みの火竜よりも良質な火属性の魔石を喰らい続けた事が予想されるが、それならばどうして火山地帯でもない只の鉱山に姿を現したのか理由が判明せず、マリアはこの鉱山に何か秘密があると判断した。そして彼女はレナに視線を向け、周囲の捜索を命じる。
「レナ、貴方の風の聖痕の力を使って風の精霊に周囲の探索を命じなさい。恐らく、この近くに何かが隠されているはずよ」
「え、俺が?叔母様が精霊に命じた方がいいんじゃ……」
「勿論、私も手伝うわ。だけど、風の聖痕を所持する貴方の方が風の精霊もよく従うはずよ」
「そうか……分かった。なら探してみる」
レナは掌を上げて風の聖痕を発動させ、周囲の探索を行う。一方で同時にレナはアイリスと交信を行い、マリアの予測が正しいのかを尋ねた。
『アイリス、叔母様の話を聞いてた?』
『聞いてますよ。それにしてもよく九尾を倒しましたね、まさかカラドボルグをこの状況で作り出すとは……まあ、昔と比べてレナさんも風の聖痕も所持していますし、今なら聖剣の力も扱っても問題はないでしょう』
『風の聖痕のお陰で精霊たちから魔力を分けて貰ってるから大分楽になって来たよ』
聖痕を継承したレナは以前よりも魔法の力が強化され、更に風の精霊の恩恵で魔力の回復速度が上昇していた。風の精霊が傍に存在する限りはレナも精霊から力を分けてもらい、魔力を得られる。最初の頃は制御に苦戦したが、今では風の聖痕の力も扱いこなせるようになってきた。それはともかく、マリアの予想が正しいのかをアイリスに問うと、彼女は九尾が鉱山に訪れた理由を話す。
『マリアの予想に関してですが……流石は歴戦の冒険者ですね、勘に関しては衰えていないようです』
『どういう意味?』
『九尾がこの地に訪れて鉱山を縄張りにしたのは偶然ではありません、この地に眠る強大な力に惹かれて九尾はここへ訪れたんです』
『強大な力……?』
九尾が鉱山を住処にしたのは偶然ではないという話にレナはマリアの予想が正しかった事を知って驚くが、更に続けてアイリスに言われた言葉に驚愕する。
『この鉱山はかつて炎龍と呼ばれる火竜の上位種が住処としていた場所なんです。元々、この地には鉱山など存在しなかったんですがバルトロス帝国が存在した時代に召喚された勇者がこの地に訪れ、炎龍の討伐を行おうとしました。しかし、炎龍はあまりにも強く、大勢の被害を生み出しながらも倒す事が出来ませんでした』
『炎龍……火竜よりもやばい化物なのか』
『強さだけなら白竜にも匹敵すると言われていますからね。実際に炎龍の被害で当時は数万人の人間が犠牲になりました。しかし、勇者は遂に炎龍を追い込み、討伐する事は出来ませんでしたが炎龍を仮死状態に追い込み、そして周囲の土砂を集めて炎龍を封じ込めました。つまり、この地には元々は鉱山など存在せず、過去に存在した勇者が炎龍を封じるためだけに土砂を集めて山を作り、後にその山が鉱山へと変わったんです』
『ええっ!?』
『封じられたとはいえ、炎龍の身体から放たれる魔力によって鉱山に良質な魔石が誕生しました。現代の人々はその事実を知らずに鉱山の近くに街を作り、その魔石を糧にして暮らしていたという訳です』
勇者が炎龍と呼ばれる存在を封印するため、仮死状態に追い込んだ後に大量の土砂で炎龍を埋めた後、巨大な山を作り上げた。そして長い年月が流れて山は鉱山へと変り果てたという。その話を聞いてレナはまず何処から突っ込めばいいのか分からず、とにかく九尾が訪れた理由を聞く。
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