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S級冒険者編
嵐の斬撃、金色の雷
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『グェエエエエッ!!』
全身から熱気を放ちながら九尾は顎が引き裂かれかねない程に開くと、正面から迫るレナに向けて先ほどの火炎の吐息を放とうとした。威力に関しては火竜の吐息と同程度は存在するだろう火力を見に浴びればいくらレナでも耐える事は出来ないだろう。
だが、それでもレナは全く臆さずに進み、まずは退魔刀を右手のみで振り翳す。その際に風の聖痕を発動させる事も忘れず、カイの教えを思い出しながら全力の一撃を繰り出した。
『オァアアアアッ!!』
「一刀、両断!!」
九尾から放たれた火炎に対してレナは剣鬼の力を発動させ、片腕のみで「一刀両断」を発動させる。全身全霊の力を込めて生み出された斬撃は風の聖痕の力を借りて正面から迫りくる炎を掻き消す。攻撃を仕掛けた九尾の目には嵐の如き荒々しい斬撃が炎を振り払い、自分の身体に迫る光景が映った。
『ギャアッ……!?』
「まだまだぁっ!!」
一刀両断から生み出された強烈な一撃が九尾の顔面を切り裂き、顔半分が引き裂かれてしまう。それでもレナは攻撃を止めずに今度は左手に構えた大太刀に視線を向け、錬金術師の「物質変換」を発動させ、ここには存在しないはずの聖剣を生み出す。
――腐敗竜との戦闘の際、レナはただの長剣を聖剣へと変化させた事がある。後々にアイリスからは魔力を大量に使い過ぎるので使用は控えるように言われたが、今のレナならば腐敗竜戦の時よりも何倍もの魔力を身に着けており、その魔力を利用して漆黒の大太刀を「聖剣カラドボルグ」へと変化させる。
カラドボルグはレナが使用した唯一の聖剣と言え、金色の刀身に電流が迸り、対象へ向けて剣を振り下ろした瞬間に雷撃が放たれた。金色の雷は九尾の身体を飲み込み、全身を焼き焦がすと九尾は断末魔の悲鳴を上げる暇もなく絶命した。
聖剣の一撃はすさまじく、しかも使い手がレナである事が原因なのか腐敗竜の時よりも格段に威力が向上しており、その力はマリアの最上級魔法にも匹敵した。その光景を見届けた他の者達は圧倒され、一方でレナの方はカラドボルグを元の大太刀に戻すと、汗を流しながら膝を付く。
「ふうっ……さ、流石にきつい」
カラドボルグを錬金術師の能力で作り出すだけでも相当な魔力を消耗し、しかも一撃を加えるだけでレナの魔力の殆どが失ってしまう。しばらくの間は動く事もままならず、身体を休ませなければならなかった。その様子を見てマリアは駆けつけると、彼女は珍しく驚いた表情を浮かべていた。
「レナ、貴方……本当に凄い子ね」
「そりゃそうだよ……俺はアイラの息子で叔母様の甥だよ」
「……ええ、その通りね」
レナの言葉にマリアは苦笑いしながら彼の身体を抱き締め、そして黒焦げ溶かした九尾に視線を向ける。出来る事ならば貴重な生物なので素材の回収はしておきたい所だったが、既に身体の殆どが電撃によって焼き尽くされ、最早使い道がなさそうだった。
仕方なく九尾の素材の回収は諦めようとした時、立ち尽くしていた九尾の身体が倒れ込むと、身体全体が砕けてしまう。その際に尻尾の付け根の部分から宝石のように光り輝く水晶玉が転がり、それを見たマリアは九尾の核だと気付く。
「これは……どうやら九尾の経験石のようね」
「け、経験石!?九尾は体内に経験石を持つ生物なのですか?」
「ほう、経験石か!!そういえば稀に牙竜の奴等も落とすあの不思議な魔石か」
「経験石……」
マリアが宝石を拾い上げると他の者達も集まり、彼女が手にした魔石を覗き込む。大きさは掌に収まる程に小さいが、色合いに関しては真紅の光を放ち、手にするだけで大きな魔力を感じさせる。火竜の経験石と比べてかなり小さいが、それでも大量の経験値と魔力を宿しているのは間違いない。
経験石が発見された場合、所有者は魔物を倒した人間の物となる。だが、今回の場合は依頼として複数人で討伐を果たしたため、この経験石の所有権は九尾の討伐に参加した人間全員に与えられることになるが、マリアは真紅の輝きを放つ経験石を見て疑問を抱く。
「この経験石は……」
「マリア様、どうかされました?」
「いえ、なんでもないわ……それより、討伐を終えた以上は私達の仕事はもう終わりよ」
「では、引き返して領主に報告を……」
「いいえ、私はもうすこしだけ周囲の探索を行うわ。貴方達はレナを連れて帰りなさい」
「何?どういう意味だ?」
マリアはレナをゴウライに任せると、彼女は不思議そうにレナの身体を持ち上げるが、マリアは経験石を手に取りながらある疑問を抱く。それはどうしてこの地に九尾が訪れ、この鉱山を縄張りとしたかである。
「九尾は本来、一定の場所に留まる事はせず、人前に姿を現さない生物のはずよ。そうでなければ九尾という存在が今まで確認されなかったはずがない」
「た、確かに……私も九尾という名前は初めて聞きました」
「吾輩もだぞ。こんな手強い奴が今まで無名だったとは信じられん」
「そうですね……ですが、それが何か気になるのですか?」
「九尾はこの鉱山を支配して人間の前に姿を現した。そしてこの地には良質な魔石が大量に発掘されている……だからこそ九尾は魔石を独り占めするためにこの鉱山を支配したのかと思ったけど、もしかしたら別の可能性があるわ」
「別の、可能性……?」
レナはマリアの言葉に引っ掛かり、何が気になるのかを彼女に尋ねると、マリアは手にした経験石を見せつける。
全身から熱気を放ちながら九尾は顎が引き裂かれかねない程に開くと、正面から迫るレナに向けて先ほどの火炎の吐息を放とうとした。威力に関しては火竜の吐息と同程度は存在するだろう火力を見に浴びればいくらレナでも耐える事は出来ないだろう。
だが、それでもレナは全く臆さずに進み、まずは退魔刀を右手のみで振り翳す。その際に風の聖痕を発動させる事も忘れず、カイの教えを思い出しながら全力の一撃を繰り出した。
『オァアアアアッ!!』
「一刀、両断!!」
九尾から放たれた火炎に対してレナは剣鬼の力を発動させ、片腕のみで「一刀両断」を発動させる。全身全霊の力を込めて生み出された斬撃は風の聖痕の力を借りて正面から迫りくる炎を掻き消す。攻撃を仕掛けた九尾の目には嵐の如き荒々しい斬撃が炎を振り払い、自分の身体に迫る光景が映った。
『ギャアッ……!?』
「まだまだぁっ!!」
一刀両断から生み出された強烈な一撃が九尾の顔面を切り裂き、顔半分が引き裂かれてしまう。それでもレナは攻撃を止めずに今度は左手に構えた大太刀に視線を向け、錬金術師の「物質変換」を発動させ、ここには存在しないはずの聖剣を生み出す。
――腐敗竜との戦闘の際、レナはただの長剣を聖剣へと変化させた事がある。後々にアイリスからは魔力を大量に使い過ぎるので使用は控えるように言われたが、今のレナならば腐敗竜戦の時よりも何倍もの魔力を身に着けており、その魔力を利用して漆黒の大太刀を「聖剣カラドボルグ」へと変化させる。
カラドボルグはレナが使用した唯一の聖剣と言え、金色の刀身に電流が迸り、対象へ向けて剣を振り下ろした瞬間に雷撃が放たれた。金色の雷は九尾の身体を飲み込み、全身を焼き焦がすと九尾は断末魔の悲鳴を上げる暇もなく絶命した。
聖剣の一撃はすさまじく、しかも使い手がレナである事が原因なのか腐敗竜の時よりも格段に威力が向上しており、その力はマリアの最上級魔法にも匹敵した。その光景を見届けた他の者達は圧倒され、一方でレナの方はカラドボルグを元の大太刀に戻すと、汗を流しながら膝を付く。
「ふうっ……さ、流石にきつい」
カラドボルグを錬金術師の能力で作り出すだけでも相当な魔力を消耗し、しかも一撃を加えるだけでレナの魔力の殆どが失ってしまう。しばらくの間は動く事もままならず、身体を休ませなければならなかった。その様子を見てマリアは駆けつけると、彼女は珍しく驚いた表情を浮かべていた。
「レナ、貴方……本当に凄い子ね」
「そりゃそうだよ……俺はアイラの息子で叔母様の甥だよ」
「……ええ、その通りね」
レナの言葉にマリアは苦笑いしながら彼の身体を抱き締め、そして黒焦げ溶かした九尾に視線を向ける。出来る事ならば貴重な生物なので素材の回収はしておきたい所だったが、既に身体の殆どが電撃によって焼き尽くされ、最早使い道がなさそうだった。
仕方なく九尾の素材の回収は諦めようとした時、立ち尽くしていた九尾の身体が倒れ込むと、身体全体が砕けてしまう。その際に尻尾の付け根の部分から宝石のように光り輝く水晶玉が転がり、それを見たマリアは九尾の核だと気付く。
「これは……どうやら九尾の経験石のようね」
「け、経験石!?九尾は体内に経験石を持つ生物なのですか?」
「ほう、経験石か!!そういえば稀に牙竜の奴等も落とすあの不思議な魔石か」
「経験石……」
マリアが宝石を拾い上げると他の者達も集まり、彼女が手にした魔石を覗き込む。大きさは掌に収まる程に小さいが、色合いに関しては真紅の光を放ち、手にするだけで大きな魔力を感じさせる。火竜の経験石と比べてかなり小さいが、それでも大量の経験値と魔力を宿しているのは間違いない。
経験石が発見された場合、所有者は魔物を倒した人間の物となる。だが、今回の場合は依頼として複数人で討伐を果たしたため、この経験石の所有権は九尾の討伐に参加した人間全員に与えられることになるが、マリアは真紅の輝きを放つ経験石を見て疑問を抱く。
「この経験石は……」
「マリア様、どうかされました?」
「いえ、なんでもないわ……それより、討伐を終えた以上は私達の仕事はもう終わりよ」
「では、引き返して領主に報告を……」
「いいえ、私はもうすこしだけ周囲の探索を行うわ。貴方達はレナを連れて帰りなさい」
「何?どういう意味だ?」
マリアはレナをゴウライに任せると、彼女は不思議そうにレナの身体を持ち上げるが、マリアは経験石を手に取りながらある疑問を抱く。それはどうしてこの地に九尾が訪れ、この鉱山を縄張りとしたかである。
「九尾は本来、一定の場所に留まる事はせず、人前に姿を現さない生物のはずよ。そうでなければ九尾という存在が今まで確認されなかったはずがない」
「た、確かに……私も九尾という名前は初めて聞きました」
「吾輩もだぞ。こんな手強い奴が今まで無名だったとは信じられん」
「そうですね……ですが、それが何か気になるのですか?」
「九尾はこの鉱山を支配して人間の前に姿を現した。そしてこの地には良質な魔石が大量に発掘されている……だからこそ九尾は魔石を独り占めするためにこの鉱山を支配したのかと思ったけど、もしかしたら別の可能性があるわ」
「別の、可能性……?」
レナはマリアの言葉に引っ掛かり、何が気になるのかを彼女に尋ねると、マリアは手にした経験石を見せつける。
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