不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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S級冒険者編

九尾の被害状況

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街に到着したレナ達はすぐに領主の屋敷に訪れ、詳しい話を聞く。領主の名前は「ショウセキ・セツ」という女性であり、バルトロス王国では珍しい黒髪で外見はメガネが似合う知的美人な女性だった。セツはレナ達を迎え入れると、大将軍であるレミアも同席している事を知ってまずは彼女に謝罪を行う。


「レミア大将軍、この度の件で王都への報告を行う際に冒険者様の御力を借りる事をナオ女王様に許可を得ずに行った事をお許しください」
「……既にナオ女王様はこの度の件の事を承認しています。ですので私に許しを請う必要はありません、ですがどうして貴女は最初に王都の軍隊に救援を求めなかったのですか?その事に関してはしっかりと説明をしてもらわなければこちらも納得できません」
「そ、それは……」
「レミア大将軍、貴女の気持ちも分かるけれど、まずはその怖い顔を向けるのは止めてあげなさい。怖がっているじゃない」


レミアは険しい表情を浮かべてセツに視線を向けると、彼女はおずおずとした態度で縮こまり、随分と気弱な性格らしい。仕方なくマリアがレミアを落ち着かせようとすると、レナも助け舟を出す。


「セツさん、俺はナオ女王の弟のレナです。姉から貴女の今回の行動は咎めるつもりはないと言われているのでどうか落ち着いてください」
「も、申し訳ございません王子様……じ、実を言えば王都に救援を求めなかったのは理由があります。それは私の臣下達から反対を受けたのです」
「反対?それはどういう意味ですか?臣下の人間が反対したからといって貴女は領主の立場でありながら役目を放棄したというのですか?」
「ひうっ!?」
「レミア、少し黙ってて」


セツの言い分にレミアは口を挟むと、これでは話が進まないと判断してレナはレミアに黙るように告げる。流石に王子であるレナの言葉にはレミアも逆らう事は出来ず、仕方なく彼女の言い訳を聞く事にした。


「じ、実は……私の配下の中には冒険都市から訪れた人間も多々います。かつて、腐敗竜が冒険都市に現れた際、王都の守備軍は動かずに防衛に専念したという噂はこの地にも届いてます。実際に冒険都市から来た人たちもその話を持ち出して……ここは冒険都市よりも王都からは遠く、援軍を求めたとしても派遣してくれるかどうか分からないならば冒険者に頼ろうという話になりました」
「なるほど、確かにここは王都よりも冒険都市の方が近いわね」
「……腐敗竜の一件に関しては先王様のご判断で王都周辺の警戒態勢を高めていただけです。それに冒険都市側からも援軍は不要という連絡を受けたからこそ動けなかったのです」
「あら?そうだったかしら?あの時は確か、援軍を派遣できる状態ではないと言われたような気がするけど……」
「そんなはずはありません!!少なくとも私は国王様に直訴して腐敗竜の討伐軍を結成するように頼みました!!しかし、ミドル大将軍の反対を受けて援軍として赴く事はできませんでしたが……」
「やっぱり、あの時も王妃の策略があったのか」


王都に滞在していたレミアは腐敗竜が現れたという報告を聞いた時、すぐに自分が軍隊を率いて討伐に向かう事を志願した。だが、それをミドルが止めた事で結局は援軍は派遣される事はなく、腐敗竜の討伐はレナとナオが聖剣を使って成し遂げている。レミアは冒険都市からの援軍の要請は受けていないというが、実際の所はマリア達は援軍が派遣されない旨を伝えられている。


「全く、あの女は私に対する嫌がらせに関しては一流ね……大方、冒険都市に腐敗竜を襲わせたのもイレアビトの仕業でしょうね。わざわざハヅキ家に恨みを持つキラウを利用したという点があの女のやり方らしいわ」
「では……先ほどの話は本当なのですか?援軍を派遣されないとマリア殿は報告を受けていたと?」
「この状況で嘘を吐いてどうするのよ」
「あ、あの……話がよく分からないのですが、イレアビトとは誰の事でしょうか?」
「貴女は知らなくていい事よ。それよりも話を続けなさい」
「は、はひっ!!」


レミアは援軍の派遣を拒否されたという話が虚だった事を知って動揺するが、セツは眼鏡を掛けなおして話を続けた。


「私の配下の中には腐敗竜に滅ぼされた村の人間もいます。その人達の話を聞く限り、王都の軍隊に援軍を求めても対応に時間が掛かるかもしれず、九尾の被害が増す一方です。だから、先に冒険都市の冒険者様に討伐の依頼を行い、その事をナオ女王様に連絡するという形になりました……」
「そうね、腐敗竜によって村を滅ぼされた人間からすれば王都の軍隊が信用できないのは無理はないわね」
「しかし……それはあくまでも先王の行った対応策です。民を大事にするナオ様ならばすぐに対応したはずです」
「も、申し訳ありません!!ナオ様は国王になられたばかりで、しかも今は3人も存在した大将軍はもうレミア様しかおられず、王都の守備の全権を持つレミア様を本当に派遣してくれるのかと不安を抱いてしまいました……」
「この娘、謝っているようで中々口が悪いな……」
「所々で嫌味を感じる気はしますね」
「お、御二人とも……聞こえますよ。もっと小さい声で話してください」


セツの話を聞いてレミアは難しい表情を浮かべ、一方でマリアの方は仕方がないという風に肩をすくめる。確かに腐敗竜の件で国王の取った対応を考えれば彼女の王都ではなく冒険都市の人間に助けを求めるのは無理もない話だった。
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