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外伝 ~ヨツバ王国編~
カレハとティナ
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「ブモォオオッ!!」
「キュロロロッ!!」
「「ぷるぷるっ!!」」
「み、皆!?駄目だよ、危ないから離れて……」
「……相変わらず人以外の存在にも好かれやすいのね」
魔獣達が危険を省みずにティナを庇おうとする姿にカレハは頭を抑え、自分の周りにはもう誰もいないというのにティナの周りには常に彼女の味方が存在する。その事実にカレハは許せず、魔法を発動させようとした。
「これで終わりよ。最上級魔法……」
「まずいっ!?」
「皆で止めるんだ!!」
レナ達は同時に駆け出し、カレハが魔法を発動させる前に止めるために動く。しかし、それを予測していたかのようにカレハは杖を掲げると、予想外の魔法を発動させる。
「フラッシュ!!」
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
「何だと!?」
高火力の魔法が放たれるかと思われたが、予想に反してカレハが発動させたのは目晦ましの効果を生み出すだけの砲撃魔法であり、部屋全体が光によって覆い尽くされる。全身の視界が奪われ、カレハの居場所を捉えられない。
足音が鳴り響き、どうやらカレハが移動を行っているらしく、咄嗟にレナやハンゾウは「心眼」を発動させて視覚以外の五感を研ぎ澄ませて周囲の状況を把握する。その結果、カレハはティナの元へ向かっている事に気付いた。
「ティナ……これでお終いよ」
「カレハお姉ちゃん……!?」
「させるか!!」
杖を構えてティナに突き刺そうとしたカレハに対し、咄嗟にレナは瞬道術を発動させ、ティナの元へ向かう。ハンゾウも同時に動き、カレハに目掛けて苦無を投擲した。そしてカレハの振り下ろした杖がティナの顔面に突き刺さろうとした瞬間、意外な人物がカレハの行動を止めた。
「させるかよ!!」
「ティナ様!!」
「何っ!?」
カレハの杖が扉の方角から放たれた「風の斬撃」によって弾かれ、更に地面に振動が走って彼女の体勢を崩す。結果的にカレハが手放した杖はハンゾウが投げた苦無によって柄の部分が砕かれ、ティナはレナに担がれて距離を離し、カレハは武器を失ってしまう。
「そんな馬鹿なっ……何故、お前達まで!?」
「へっへっへっ……どうした嬢ちゃん、今日はやけに余裕がないな」
「……気配が違う、お前はマリア様ではないな」
「シュンさん!!リンダさん!!」
扉にはボロボロの姿になり果てたシュンとリンダが立っており、どちらも激戦を繰り広げてきたのか大きな怪我を負ってた。しかし、その肩には気絶したハヤテと白虎が抱えられており、無事に二人を倒してここまで来たらしい。
遂には最後まで自分に従っていた二人まで失ったカレハは憎々し気な表情を浮かべるが、杖を失った彼女を全員が取り囲む。いくらマリアの肉体を持っていようと魔法を発動させる前に動けば問題はなく、レナはティナを抱きかかえながらカレハに振り返る。
「お前の負けだ……カレハ」
「カレハお姉ちゃん……もう、止めよう」
「ティナ……お前さえ、いなければ……ぐふっ!?」
「カレハ!?」
カレハは唐突に口元を抑え、その場で膝を付く。そして身体から黒色の瘴気が迸り、彼女は両手を見つめて嘆く。
「マリア……貴女まで私に抗うというの!?」
「これはいったい……」
「そ、そうか……聖属性の魔法を使ったせいだ!!聖属性の魔法を自分で発動させて身体に浴びたせいで、怨霊術が解けかかっているんだ!!」
「自分の魔法で!?そんな事が有り得るのか!?」
「怨霊術は闇属性の魔力で成り立ってる!!だから、その闇属性の魔力を浄化する聖属性の魔法には弱いんだ!!」
自分自身の魔法によって怨霊術が解けかかっている事に気付いたカレハは愕然とし、怨霊術の性質を理解していなかったのか、それとも「教わっていなかった」のか、どちらにしろ彼女は溢れる瘴気を抑える術はない。
「そんな、馬鹿なっ……こんな事で私がっ……!!」
「聖属性の魔法をもっと浴びせれば怨霊術を解除出来るのか?」
「なら、私が……」
「待って、コトミンちゃん……私がお姉ちゃんを」
コトミンが魔法を施す前にレナに抱えられたティナが声を上げ、レナに頷く。それを見たレナは止める事は出来ず、ティナと共にカレハの元へ向かう。
「お姉ちゃん……」
「ティナ……もう、いいわ。貴女の勝ちよ……ふふ、まさか私が貴女に負けるなんてね」
「勝ち負けなんてどうでもいいよ……」
最後の最後に自分を追い詰める存在がティナである事にカレハは自嘲し、敗北を悟ったように潔く両手を広げてティナに魔法を促す。しかし、そんな彼女にティナは抱きしめ、その行為に周囲の人間は驚く。
「お姉ちゃん……私、お姉ちゃんの事は嫌いじゃなかったよ」
「ティナ……?」
「私はお姉ちゃんに嫌われていた事は知っていたけど、それでも子供の頃に皆で外に行った時、魔物に襲われそうな私を助けてくれたよね……その後にすっごく怒ったけど」
「そんな事も……あったかしらね」
魔物使いの素質が完全には目覚めていなかった頃、ティナは一角兎を見つけて不用意に近づいてしまう。しかし、一角兎は可愛らしい外見とは裏腹に性格は獰猛で小さな子供なら殺す事ができる力を持つ。ティナが一角兎に襲われかけた時、それを見ていたカレハは反射的に助けた事があった。
「キュロロロッ!!」
「「ぷるぷるっ!!」」
「み、皆!?駄目だよ、危ないから離れて……」
「……相変わらず人以外の存在にも好かれやすいのね」
魔獣達が危険を省みずにティナを庇おうとする姿にカレハは頭を抑え、自分の周りにはもう誰もいないというのにティナの周りには常に彼女の味方が存在する。その事実にカレハは許せず、魔法を発動させようとした。
「これで終わりよ。最上級魔法……」
「まずいっ!?」
「皆で止めるんだ!!」
レナ達は同時に駆け出し、カレハが魔法を発動させる前に止めるために動く。しかし、それを予測していたかのようにカレハは杖を掲げると、予想外の魔法を発動させる。
「フラッシュ!!」
「うわっ!?」
「きゃあっ!?」
「何だと!?」
高火力の魔法が放たれるかと思われたが、予想に反してカレハが発動させたのは目晦ましの効果を生み出すだけの砲撃魔法であり、部屋全体が光によって覆い尽くされる。全身の視界が奪われ、カレハの居場所を捉えられない。
足音が鳴り響き、どうやらカレハが移動を行っているらしく、咄嗟にレナやハンゾウは「心眼」を発動させて視覚以外の五感を研ぎ澄ませて周囲の状況を把握する。その結果、カレハはティナの元へ向かっている事に気付いた。
「ティナ……これでお終いよ」
「カレハお姉ちゃん……!?」
「させるか!!」
杖を構えてティナに突き刺そうとしたカレハに対し、咄嗟にレナは瞬道術を発動させ、ティナの元へ向かう。ハンゾウも同時に動き、カレハに目掛けて苦無を投擲した。そしてカレハの振り下ろした杖がティナの顔面に突き刺さろうとした瞬間、意外な人物がカレハの行動を止めた。
「させるかよ!!」
「ティナ様!!」
「何っ!?」
カレハの杖が扉の方角から放たれた「風の斬撃」によって弾かれ、更に地面に振動が走って彼女の体勢を崩す。結果的にカレハが手放した杖はハンゾウが投げた苦無によって柄の部分が砕かれ、ティナはレナに担がれて距離を離し、カレハは武器を失ってしまう。
「そんな馬鹿なっ……何故、お前達まで!?」
「へっへっへっ……どうした嬢ちゃん、今日はやけに余裕がないな」
「……気配が違う、お前はマリア様ではないな」
「シュンさん!!リンダさん!!」
扉にはボロボロの姿になり果てたシュンとリンダが立っており、どちらも激戦を繰り広げてきたのか大きな怪我を負ってた。しかし、その肩には気絶したハヤテと白虎が抱えられており、無事に二人を倒してここまで来たらしい。
遂には最後まで自分に従っていた二人まで失ったカレハは憎々し気な表情を浮かべるが、杖を失った彼女を全員が取り囲む。いくらマリアの肉体を持っていようと魔法を発動させる前に動けば問題はなく、レナはティナを抱きかかえながらカレハに振り返る。
「お前の負けだ……カレハ」
「カレハお姉ちゃん……もう、止めよう」
「ティナ……お前さえ、いなければ……ぐふっ!?」
「カレハ!?」
カレハは唐突に口元を抑え、その場で膝を付く。そして身体から黒色の瘴気が迸り、彼女は両手を見つめて嘆く。
「マリア……貴女まで私に抗うというの!?」
「これはいったい……」
「そ、そうか……聖属性の魔法を使ったせいだ!!聖属性の魔法を自分で発動させて身体に浴びたせいで、怨霊術が解けかかっているんだ!!」
「自分の魔法で!?そんな事が有り得るのか!?」
「怨霊術は闇属性の魔力で成り立ってる!!だから、その闇属性の魔力を浄化する聖属性の魔法には弱いんだ!!」
自分自身の魔法によって怨霊術が解けかかっている事に気付いたカレハは愕然とし、怨霊術の性質を理解していなかったのか、それとも「教わっていなかった」のか、どちらにしろ彼女は溢れる瘴気を抑える術はない。
「そんな、馬鹿なっ……こんな事で私がっ……!!」
「聖属性の魔法をもっと浴びせれば怨霊術を解除出来るのか?」
「なら、私が……」
「待って、コトミンちゃん……私がお姉ちゃんを」
コトミンが魔法を施す前にレナに抱えられたティナが声を上げ、レナに頷く。それを見たレナは止める事は出来ず、ティナと共にカレハの元へ向かう。
「お姉ちゃん……」
「ティナ……もう、いいわ。貴女の勝ちよ……ふふ、まさか私が貴女に負けるなんてね」
「勝ち負けなんてどうでもいいよ……」
最後の最後に自分を追い詰める存在がティナである事にカレハは自嘲し、敗北を悟ったように潔く両手を広げてティナに魔法を促す。しかし、そんな彼女にティナは抱きしめ、その行為に周囲の人間は驚く。
「お姉ちゃん……私、お姉ちゃんの事は嫌いじゃなかったよ」
「ティナ……?」
「私はお姉ちゃんに嫌われていた事は知っていたけど、それでも子供の頃に皆で外に行った時、魔物に襲われそうな私を助けてくれたよね……その後にすっごく怒ったけど」
「そんな事も……あったかしらね」
魔物使いの素質が完全には目覚めていなかった頃、ティナは一角兎を見つけて不用意に近づいてしまう。しかし、一角兎は可愛らしい外見とは裏腹に性格は獰猛で小さな子供なら殺す事ができる力を持つ。ティナが一角兎に襲われかけた時、それを見ていたカレハは反射的に助けた事があった。
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