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外伝 ~ヨツバ王国編~

レナとカレハ

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『レナ……?それが貴方をそこまで追い詰めた男だというの?』
『はい……もう、僕に構わないでください』


牢の中で憔悴しきったライコフから話を聞いたカレハは自分の暗殺計画が失敗に終わるが、レナという存在を知る事が出来た。その後、自分と繋がっている緑影を通じてバルトロス王国の状況を把握し、なんとレナの正体が追放されたはずの第一王子だと知る。

王子という身分として生まれ乍らも「不遇職」という理由で殺され、その後は魔物が巣食う森の中の屋敷で隔離されただけではなく、弟が生まれた瞬間に不要と判断されて殺されそうになったという話を知った彼はレナに対して共感する。立場的には自分も似たような物であり、レナとカレハに違いがあるとすれば国を乗っ取る意思があるかどうかであった。

カレハでさえも恐れたイレアビトさえもレナを止める事は出来ず、遂には全てを失った彼女をハヤテが命を絶つ。その事でカレハは自分の中の脅威を取り除き、更にキラウという存在を引き込んだ時点で彼女の人生で最大の好機が到来した。


『今ならこの国を私の物に……いえ、本来の形に正すことが出来る』


イレアビトを殺し、更には石化の魔眼を持つキラウと幸運にも捕縛する事ができたマリアの力を使い、遂には彼女は国の実権を握る立場にまで登る。だが、やっとここまで来たというのに忌まわしい妹が国へ戻り、次々と六聖将を破って自分の立場を奪おうとする事態に彼女は怒りを覚えた。


『命だけは見逃してあげようと思ったのに……いいわ、ティナ。貴女と私、どちらがこの国に相応しいのかを決める日が来たわね』


最早、カレハは国を支配するために手段を選ばず、キラウに命じて王都の兵士も住民も石化させる。レナ達を呼び寄せ、完全な決着を付けるために玉座の間で待機していた――






――全ての話を聞き終えたレナ達は何とも言えない表情を浮かべ、カレハの人生に同情する余地が全くないとはいえない。しかし、自分の目的のために何の関係もない民衆を石像に変え、更には実の家族にまで手を出したカレハに対して怒りを抱かざるを得ない。


「カレハよ……お主はそこまで堕ちたのか」
「違います、御父様。これが本来の私なのですよ……何時までも貴方の機嫌を伺う良い子は止めただけです」
「カレハ!!お前はどうしてそこまで王位に固執する!?」
「アルン、貴方には分からないでしょうね。次期国王として育てられ、厳しい教育を受けてきたというのに魔力が強いという理由だけで甘やかされて育った妹の方が国王に相応しいと言われる毎日……それがどれほどの苦痛だったのか分かるのか!?」


アルンに対してカレハ怒鳴りつけると、そのあまりの迫力に彼は押し黙り、他の者達さえも圧倒される。生まれてきてから人生の殆どを国王としての教育を受けてきたカレハにとっては、自分こそが国王に最も相応しい人物だと信じていた。

しかし、魔力が自分よりも強いという理由だけで全ての面が劣っているティナに王位を渡すなど彼女には我慢できなかった。王位を譲れば自分は何のためにここまで生きてきたのかと思わざるを得ず、カレハはティナを睨みつけた。しかし、普段のティナならば怯える所だが、彼女は真っすぐにカレハと向き合う。


「カレハお姉ちゃん……こんなの間違ってるよ」
「ティナ……少しは成長した様ね、昔は私と視線を合わせるだけで怯えていたのに」
「私、まだ子供かもしれないけどお姉ちゃんのしている事は間違ってる事は分かるよ……でも、お姉ちゃんがそうなったのも私のせいなんだよね」
「ええ、そうよ。貴女さえ生まれてこなければ私だって……!!」
「ふざけんなっ!!」
「れ、レナたん!?」


カレハの言い分にレナは黙ってはいられず、ティナの前に身を乗り出すとカレハに怒鳴りつける。そんなレナの態度にカレハは驚くが、レナは堂々と言い返す。


「ティナが何をしたって言うんだ!?ティナは何も悪い事をしていない、ちょっとおっちょこちょいの女の子だよ!!さっきから話を聞いてれば全てティナが悪いように言い張っているけど、元々を正せばお前が家族を信じられなかっただけだろ!?」
「何ですって……」
「レナ王子よ、それは……!!」
「いいから黙って聞けっ!!」


レナの言い分にカレハは表情を歪め、デブリ国王が口を挟もうとするがそれさえも許さずにレナはカレハに言い返す。


「あんたが辛い思いをしたのはよく分かった。俺だって元々は追放された身分だから気持ちは痛い程よく分かる、だけどあんたが追放されたのはティナの命を奪おうとしたからだろう!?実の妹を殺して王位に縋りつこうとした結果がこれだ!!大切な家族よりも、お前は国王の座が惜しかった!!」
「……その通りよ、それの何が悪いというの!?」


レナの言葉を聞いてカレハも黙ってはいられず、自分の気持ちを他人に理解出来るはずがないと怒鳴りつけた。しかし、そんな彼女にレナは黙ってはいられなかった。
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