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外伝 ~ヨツバ王国編~

無茶苦茶すぎる作戦

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――時刻は20分ほど前に遡り、王都の城下町では全身をフードを覆い隠した怪しげな集団が現れ、堂々と街道の真ん中に座り込んだのだ。道を塞ぐ彼等に対して市民は困り果て、巡回中の警備兵が集まって集団に退去を命じるのだが、彼等は言う事を聞かずに座り続ける。


「こら、貴様等何時までそうしているつもりだ!!これ以上に通行の邪魔をするなら捕まえるぞ!!」
「全く、何なんだこいつらは!!」
「おい、兵士さん!!さっさと退かしてくれよ!!馬車が移動出来ないじゃないか!!」
『…………』


街道を塞ぐ6人組に対して市民は警備兵に早く退かせるように促すが、兵士達は声を掛けても集団は動く様子はなく、見かねた警備兵の隊長が集団の一人に近付いてフードを剥ぎ取ろうとした。


「おい、こんな物で顔を隠して何を考えている!!さっさと顔を見せ……うわぁあああっ!?」
『ひいいっ!?』


集団の中で最も体格が大きい人物のフードを剥いだ瞬間、そこに現れたのは牛の顔面を持つ巨人であり、フードを奪われて正体を現したミノは咆哮を放つ。


「ブモォオオオッ!!」
「み、ミノタウロスだ!?」
「魔人族が街中に現れたぞ!!」
「な、なんでこんな場所にこんな化物がっ!?」


唐突に街中に出現したミノに市民は悲鳴をあげ、慌てて逃げ出す。しかし、兵士達は逃げ出すわけにはいかず、武器を構えてミノを取り囲もうとした。だが、ミノが正体を晒した直後に他の者達も起き上がり、覆い隠していたフードを脱ぎ去るって正体を現す。


「ふうっ……やっと脱げた」
「思っていたよりも時間が掛かったでござる」
「キュロロロッ!!」
「……これで、完全に僕達はこの国で犯罪者だよな」
「何を今更……頼りにしてるよ相棒」
「ぷるぷるっ」
「こ、こいつら……!?」


レナ、コトミン、ハンゾウ、ダイン、アイン、そしてミノの6名(+スラミン)は正体を晒すと兵士達は戸惑い、魔人族が2体に人間が3人、さらに人魚族とスライムだと知ると、非常に困惑する。ヨツバ王国内ではレナ達の存在を知る兵士は少なく、警備隊長はレナ達の目的を尋ねる。


「貴様等、何者だ!!」
「通りすがりの……バルトロス王国の第一王子と愉快な仲間達です!!」
「どんな説明!?」


レナの言葉にダインはツッコミを入れるが、警備兵たちは「バルトロス王国の第一王子」という言葉に驚き、現在はヨツバ王国と表向きは敵対関係にあるバルトロス王国の王子を名乗る者が現れた事に動揺する。そんな彼等を前にしてレナは周囲で逃げ惑う市民たちに声を掛けた。


「皆さん!!俺の話を聞いてください!!」
「な、何だ!?」
「何を言い出すつもりだ!?」
「おい、あいつ人間じゃないか?なんで人間がこんな所に……」
「駄目だ、下がって!!危険ですから市民の方は避難してください!!」


城下町の民衆はレナの言葉を聞いて足を止め、何を言い出すつもりなのかと立ちどまり、それを見た警備兵は慌てて彼等を避難するように注意する。しかし、十分に人目が集まったと判断したレナは大声で自分の正体と王都へ訪れた目的を話す。


「俺はバルトロス王国から来ました!!皆さん、聞いてください!!バルトロス王国がヨツバ王国の王族を拘束して戦争を仕掛けようとしているなんて話は出鱈目です!!バルトロス王国はヨツバ王国に対して戦争を仕掛ける意志はありません!!」
「ほ、本当か?」
「馬鹿野郎、騙されるな!!人間の言う事なんて信じられるか!!」
「そうだそうだ!!それならどうして国王様達は未だに帰らないんだ!!」


レナの言葉に対して民衆は当然だが信じられるはずがなく、バルトロス王国に戦争の意思がないのであればどうして未だに国王を筆頭に王族たちがヨツバ王国へ戻らない理由を説明するように申し出る。そんな彼等の疑問も最ものため、レナは説明を行う。


「デブリ国王を含め、王子と王女たちは既にヨツバ王国内へ帰還しています!!必ず、近日中にはこの王都へ戻ってきます!!」
「何だって!?」
「そ、それは本当か!?」
「本当に国王様達が王都へ……!?」


思いがけぬレナの返答に民衆は混乱し、そんな彼等を見て警備隊長は部下たちに命じてこれ以上にレナが彼等に何かを言う前に捕まえさせようとした。


「ええい、戯言を抜かすな!!お前達、奴等を捕まえろ!!」
「は、はい!!」
「そこを動くな……ひいっ!?」
「ブモォオオッ!!」


兵士達がレナの元へ駆けつけようとした瞬間、ミノが背中に抱えていた「神器アックス」を振り翳し、地面に亀裂を走らせる。それを見た兵士達は悲鳴をあげ、その間にコトミン達も武器を抜いてレナを守るように取り囲む。仲間達に囲まれたレナは演説を続ける。


「皆さん!!カレハ王女の言葉は信じてはいけません!!彼女の仕業で既に守備将軍は東聖将軍と共に壊滅に追い込まれ、六聖将のクレナイも現在は動けない状態に追い込まれています!!」
「クレナイ将軍が!?」
「そんな馬鹿な、有り得えない!!」
「いえ、事実です!!これがその証拠です!!」


レナは背中に手を伸ばすと、退魔刀とは別に背負っていた大剣を取り出し、天高く掲げる。その光景を見て民衆は彼が所持している大剣が六聖将のクレナイが所有する「黒王剣」と呼ばれる鍛冶師の名工が作り出した剣である事を知る。
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