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外伝 ~ヨツバ王国編~
王都襲撃
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――北聖将軍が東壁街へ攻め入った時、北聖将のハシラは命令を無視して退却した事は問題となっていた。しかし、カレハはハシラに謹慎を言い渡しただけで特に咎めもしなかった。しかし、そのハシラが突如として暗殺された事により、兵士達には不安が広がる。
ハシラを殺したのはカレハが差しだした暗殺者の仕業ではないのか、という疑念はヨツバ王国の兵士達の間に広まり、極めつけにここ最近では色々な噂が流れていた。この噂に関しては王族関連の噂が最も多く、既にデブリ国王は帰還しているなど、正当な王位継承者であるティナを東聖将が匿っているなど、様々な噂が王都中に広まっていた。
時期的に考えて噂の出所は北聖将軍の兵士達で間違いなく、彼等が東壁街を引き返した辺りから噂が流れるようになった。この噂に関してはカレハは否定しているが、真相に関しては明らかになっていない。兵士長を務めるロウでさえも噂をただの噂だと思えず、カレハが国王の代理を務めるようになってからヨツバ王国は少しずつおかしくなっているように感じられた。
(この国に一体何が起きているのか……このまま我々は本当にカレハ様に従っているだけでいいのか?)
王族の命令が絶対視されるヨツバ王国ではカレハの命令には逆らう事は出来ず、六聖将ならば異議を申し立てる程度は出来るが、その六聖将さえも既に半分は失っている。急遽、カレハが新たな六聖将としてマリアと「もう一人」の森人族を六聖将として迎えいれたが、こちらに関しても反感を抱く将兵は多い。
(確かにハヅキ家の令嬢のマリアの力は凄まじい……しかし、いくらハヅキ家の跡取りといってもいきなり戻ってきて六聖将の座を与えられるなど簡単には認められん。せめて王国四騎士が残っていればアカイやリンダ辺りさえ六聖将に昇格させれば文句も言われなかっただろうに……)
王族の護衛として向かった王国四騎士が残っていれば六聖将の座を与えられても周囲の人間は反対する事はなかったかもしれない。マリアはハヅキ家の血筋ではあるが、最近まではバルトロス王国の領地で冒険者ギルドを営み、バルトロス王国とも繋がりがあった事で兵士の中には彼女が王国側が送り込んだ密偵ではないかと疑う者も多い。
(いかんな、年齢を重ねすぎると、何事も考えすぎてしまう癖が付いてしまう。今は命令だけに集中しなければ……)
色々と不安や疑問はあるが、ロウは200年以上もヨツバ王国へ仕えており、今までに一度たりとも王族の命令に逆らった事は無い。それにカレハがまだ正統後継者だった頃は彼女の優秀さを知り尽くしているだけにロウはカレハこそが国王に最も相応しい人物だと思っていたため、心の何処かでカレハを信じたいという気持ちも抱いていた。
「まずは報告をせねば……ん?何だあれは!?」
城内を移動中、ロウは窓の外に視線を向けると、王都を取り囲む防壁の城門にて煙が上がっている事に気付く。何事かとロウは窓を開いて外の様子を確認し、火事でも起きたのかと戸惑うと、窓の外から複数人の兵士達が彼の元へ訪れる。
「ろ、ロウ様……!!」
「お前達、これはいったい何事だ!?」
「て、敵襲です!!城門付近にて、人間が侵入しています!!現在、市中を巡回していた警備兵が対応していますが侵入者は逃げも隠れもせずに応戦しています!!」
「馬鹿なっ!?何処から入って来た!!」
王都に侵入者が現れたという言葉に動揺を隠せず、この王都はヨツバ王国で最も警備体制が高く、過去に一度たりとも他国からの侵攻は愚か、侵入者を許した事はない。しかし、既に賊は街中に入り込み、戦闘を開始しているという報告にロウは信じられなかった。
「敵の数は!?ここへ向かっているのか!?」
「人間の少年が二人、人魚族と思われる少女が一人、それとミノタウロスとサイクロプスが現れました!!他に暴れている者は確認できませんが、既に大多数の兵士が倒されています!!」
「ミノタウロスとサイクロプスだと……!?」
敵の中には魔人族を操る魔物使いまで存在するのかとロウは考えたが、ここでサイクロプスという言葉に疑問を抱く。ロウの記憶では狩猟祭が腐敗竜の出現によって中止された後、戻って来た第三王女のティナがサイクロプスを引き連れてきた事を思い出す。基本的にサイクロプスはアトラス大森林には生息せず、街中に現れたというサイクロプスに関してロウはまさかティナが連れて来た個体ではないかと考える。
(まさかティナ様の連れて来たサイクロプスが戻って来たのか?いや、今はそれよりも侵入者の排除を急がねば!!)
気を取り直してロウは城内の警備を高め、自分も城中に残っている兵士を連れて侵入者の討伐に向かう事を宣言する。
「すぐに我々も出るぞ!!お前達も準備を知ろ!!」
「いえ、その事なのですが……」
「実は既に侵入者の討伐のために向かっている御方がおられます」
「何だと!?まさか、ハヤテ殿とマリア殿か?」
「そのお方は――」
彼等の報告を受けて既に六聖将のマリアか剣聖のハヤテが動いたのかとロウは考えたが、兵士達は困惑した表情で討伐に向かった者の名前を語った。
ハシラを殺したのはカレハが差しだした暗殺者の仕業ではないのか、という疑念はヨツバ王国の兵士達の間に広まり、極めつけにここ最近では色々な噂が流れていた。この噂に関しては王族関連の噂が最も多く、既にデブリ国王は帰還しているなど、正当な王位継承者であるティナを東聖将が匿っているなど、様々な噂が王都中に広まっていた。
時期的に考えて噂の出所は北聖将軍の兵士達で間違いなく、彼等が東壁街を引き返した辺りから噂が流れるようになった。この噂に関してはカレハは否定しているが、真相に関しては明らかになっていない。兵士長を務めるロウでさえも噂をただの噂だと思えず、カレハが国王の代理を務めるようになってからヨツバ王国は少しずつおかしくなっているように感じられた。
(この国に一体何が起きているのか……このまま我々は本当にカレハ様に従っているだけでいいのか?)
王族の命令が絶対視されるヨツバ王国ではカレハの命令には逆らう事は出来ず、六聖将ならば異議を申し立てる程度は出来るが、その六聖将さえも既に半分は失っている。急遽、カレハが新たな六聖将としてマリアと「もう一人」の森人族を六聖将として迎えいれたが、こちらに関しても反感を抱く将兵は多い。
(確かにハヅキ家の令嬢のマリアの力は凄まじい……しかし、いくらハヅキ家の跡取りといってもいきなり戻ってきて六聖将の座を与えられるなど簡単には認められん。せめて王国四騎士が残っていればアカイやリンダ辺りさえ六聖将に昇格させれば文句も言われなかっただろうに……)
王族の護衛として向かった王国四騎士が残っていれば六聖将の座を与えられても周囲の人間は反対する事はなかったかもしれない。マリアはハヅキ家の血筋ではあるが、最近まではバルトロス王国の領地で冒険者ギルドを営み、バルトロス王国とも繋がりがあった事で兵士の中には彼女が王国側が送り込んだ密偵ではないかと疑う者も多い。
(いかんな、年齢を重ねすぎると、何事も考えすぎてしまう癖が付いてしまう。今は命令だけに集中しなければ……)
色々と不安や疑問はあるが、ロウは200年以上もヨツバ王国へ仕えており、今までに一度たりとも王族の命令に逆らった事は無い。それにカレハがまだ正統後継者だった頃は彼女の優秀さを知り尽くしているだけにロウはカレハこそが国王に最も相応しい人物だと思っていたため、心の何処かでカレハを信じたいという気持ちも抱いていた。
「まずは報告をせねば……ん?何だあれは!?」
城内を移動中、ロウは窓の外に視線を向けると、王都を取り囲む防壁の城門にて煙が上がっている事に気付く。何事かとロウは窓を開いて外の様子を確認し、火事でも起きたのかと戸惑うと、窓の外から複数人の兵士達が彼の元へ訪れる。
「ろ、ロウ様……!!」
「お前達、これはいったい何事だ!?」
「て、敵襲です!!城門付近にて、人間が侵入しています!!現在、市中を巡回していた警備兵が対応していますが侵入者は逃げも隠れもせずに応戦しています!!」
「馬鹿なっ!?何処から入って来た!!」
王都に侵入者が現れたという言葉に動揺を隠せず、この王都はヨツバ王国で最も警備体制が高く、過去に一度たりとも他国からの侵攻は愚か、侵入者を許した事はない。しかし、既に賊は街中に入り込み、戦闘を開始しているという報告にロウは信じられなかった。
「敵の数は!?ここへ向かっているのか!?」
「人間の少年が二人、人魚族と思われる少女が一人、それとミノタウロスとサイクロプスが現れました!!他に暴れている者は確認できませんが、既に大多数の兵士が倒されています!!」
「ミノタウロスとサイクロプスだと……!?」
敵の中には魔人族を操る魔物使いまで存在するのかとロウは考えたが、ここでサイクロプスという言葉に疑問を抱く。ロウの記憶では狩猟祭が腐敗竜の出現によって中止された後、戻って来た第三王女のティナがサイクロプスを引き連れてきた事を思い出す。基本的にサイクロプスはアトラス大森林には生息せず、街中に現れたというサイクロプスに関してロウはまさかティナが連れて来た個体ではないかと考える。
(まさかティナ様の連れて来たサイクロプスが戻って来たのか?いや、今はそれよりも侵入者の排除を急がねば!!)
気を取り直してロウは城内の警備を高め、自分も城中に残っている兵士を連れて侵入者の討伐に向かう事を宣言する。
「すぐに我々も出るぞ!!お前達も準備を知ろ!!」
「いえ、その事なのですが……」
「実は既に侵入者の討伐のために向かっている御方がおられます」
「何だと!?まさか、ハヤテ殿とマリア殿か?」
「そのお方は――」
彼等の報告を受けて既に六聖将のマリアか剣聖のハヤテが動いたのかとロウは考えたが、兵士達は困惑した表情で討伐に向かった者の名前を語った。
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