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外伝 ~ヨツバ王国編~
クレナイとの交渉
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「ならば使者を送り、話し合いの場を設けるのはどうでござる?上手く行けばそれで戦は回避できるかもしれないでござる」
「楽観は出来んが、確かにやってみる価値はあるか……」
「うむ、ならばキン、ギン、ドウ、お前達が行ってくれるか?」
『はっ!!』
名前を呼ばれたギンタロウの3名は即座に承諾し、早速ギンタロウは手紙をしたためる事にした。これでもしもクレナイとの交渉が成功すれば後はツバサと連絡を取り、彼女も味方に付ければもうカレハを守る存在はいない。ギンタロウはこれまでの経緯を記し、手紙を渡すように3名に命じた。
「頼んだぞお前達!!」
『お任せください!!』
「我等も影から同行させてもらうぞ、万が一の時を考えてな」
「うむ、では君達にも護衛を頼もう」
使者の任務を引き受けた3人の護衛をカゲマルが名乗り出るとギンタロウも承諾し、ハンゾウとアヤメも同行を希望する。すぐに準備を整えた5人は十数名の兵士を引き連れてクレナイの元へ向かう――
――その一方、ギンタロウの屋敷の一室にてレナは布団の上で横たわり、コトミンとスラミンが夜通し看病を行っていた。レナはフェンリルを倒した後、全員を東壁街へ避難した途端に意識を失い、未だに戻ってはいない。
「ぷるぷるっ……」
「ううんっ……」
「……大丈夫、ゆっくり休む」
レナの額の上に氷水を飲み込んで冷えた状態のスラミンが乗っかり、コトミンはそんな彼の掌を握り締める。レナが倒れてから大分時間は経過しているが未だに目を覚ます様子はなく、現在は身体から高熱を発した状態で眠っていた。
医者でもあるギンタロウの妻の見立てでは現在のレナはフェンリルを倒した事でレベルが急激に上昇したらしく、恐らく今のレナのレベルは80に近い。しかし、低レベルの時ならばともかく、元からレベル70を超えていたレナが一気にレベルが上昇したせいで「成長痛」と呼ばれる現象が発生し、レナを苦しめていた。
成長痛は急激なレベルの上昇によって発生する現象であり、レベルが上昇すると肉体は強化されるが、短期間で急激にレベルが上昇すると肉体が適応が間に合わず、身体に異変が生じる。現在のレナは成長痛の影響で意識を失い、完全に目を覚ますまで時間が掛かるという。
「コトミンちゃ~ん、ご飯を持ってきたよ」
「兄貴の様子はどうですか?」
「今の所は特に変わりはない」
看病を見ているコトミンの昼食を持ってきたティナとエリナはレナの容体を尋ね、コトミンは未だに変わりはない事を告げる。2人も心配そうにレナの顔を覗き込み、目を覚ます様子がないレナを心配する。
「兄貴、こうしてみるとティナ様とそんなに年齢が変わらないんですよね……普段から妙に大人びているので忘れてましたけど、兄貴は森人族の基準ではまだ子供なんですよね」
「うん、私とそんなに変わらないのに凄いよね……皆から頼られて、誰よりも頑張って、一番強いんだから」
「そう、レナは凄い……だから皆忘れている。レナが苦労している事を」
今回の南聖将の領地に乗り込み、人質を救出するという作戦はレナが存在しなければ成り立たず、そもそも冒険者達もここへ呼び寄せる事は出来なかっただろう。北聖将の撃退、南聖将の討伐、どちらもレナがいなければ果たす事は出来なかった。
だが、ここまでの無理が祟ってレナは倒れた事を知った仲間達は非常に取り乱し、定期的に見舞いに訪れては目を覚まさないレナを見ては自分達がレナという存在に頼りっぱなしであった事を痛いほど思い知らされる。ティナは自分の姉のせいでレナが苦しみ、ここまで追い詰めたという事実に彼女は申し訳なさから顔を伏せる。
「カレハお姉様のせいで……ううん、私達のせいでレナたんがこんな事に……」
「姫様……」
「……落ち込むことはない、ティナは悪くない」
ティナの言葉にエリナとコトミンは慰め、一刻も早くレナが目覚める事を願う。そんな3人の様子を襖の隙間から伺う人影が存在し、その人物は黙って何も言わずに立ち去った――
――同時刻、屋敷の裏庭の方では一心不乱に腕立て伏せを行うゴンゾウが存在し、彼の背中にはダインが乗っていた。ゴンゾウの鍛錬にダインは付き合い、これからの事を話し合う。
「なあ、ゴンゾウ……僕達って、レナがいなければ本当に何も出来ないよな」
「……急に、どうした?」
ダインの言葉にゴンゾウは身体を休めずに問い返すと、ダインは深いため息を吐きながら答える。
「僕はさ、今までレナはどんな状況でも切り抜けられる凄い奴だって思っていたよ。けどさ、レナがフェンリルを倒した後にぶっ倒れた時、本当に死んだかと思ったよ」
「そう、か……」
「まあ、無事だと分かって安心したけどさ……やっと気づいたよ、僕達はレナに頼り切っていた。だからレナをあんなに無茶させたんだって」
「……そうだな」
ゴンゾウはダインの言葉を否定出来ず、フェンリルとの戦闘の際、自分が殆ど役に立っていなかった事を思い出し、無意識に身体を止めてしまう。
「楽観は出来んが、確かにやってみる価値はあるか……」
「うむ、ならばキン、ギン、ドウ、お前達が行ってくれるか?」
『はっ!!』
名前を呼ばれたギンタロウの3名は即座に承諾し、早速ギンタロウは手紙をしたためる事にした。これでもしもクレナイとの交渉が成功すれば後はツバサと連絡を取り、彼女も味方に付ければもうカレハを守る存在はいない。ギンタロウはこれまでの経緯を記し、手紙を渡すように3名に命じた。
「頼んだぞお前達!!」
『お任せください!!』
「我等も影から同行させてもらうぞ、万が一の時を考えてな」
「うむ、では君達にも護衛を頼もう」
使者の任務を引き受けた3人の護衛をカゲマルが名乗り出るとギンタロウも承諾し、ハンゾウとアヤメも同行を希望する。すぐに準備を整えた5人は十数名の兵士を引き連れてクレナイの元へ向かう――
――その一方、ギンタロウの屋敷の一室にてレナは布団の上で横たわり、コトミンとスラミンが夜通し看病を行っていた。レナはフェンリルを倒した後、全員を東壁街へ避難した途端に意識を失い、未だに戻ってはいない。
「ぷるぷるっ……」
「ううんっ……」
「……大丈夫、ゆっくり休む」
レナの額の上に氷水を飲み込んで冷えた状態のスラミンが乗っかり、コトミンはそんな彼の掌を握り締める。レナが倒れてから大分時間は経過しているが未だに目を覚ます様子はなく、現在は身体から高熱を発した状態で眠っていた。
医者でもあるギンタロウの妻の見立てでは現在のレナはフェンリルを倒した事でレベルが急激に上昇したらしく、恐らく今のレナのレベルは80に近い。しかし、低レベルの時ならばともかく、元からレベル70を超えていたレナが一気にレベルが上昇したせいで「成長痛」と呼ばれる現象が発生し、レナを苦しめていた。
成長痛は急激なレベルの上昇によって発生する現象であり、レベルが上昇すると肉体は強化されるが、短期間で急激にレベルが上昇すると肉体が適応が間に合わず、身体に異変が生じる。現在のレナは成長痛の影響で意識を失い、完全に目を覚ますまで時間が掛かるという。
「コトミンちゃ~ん、ご飯を持ってきたよ」
「兄貴の様子はどうですか?」
「今の所は特に変わりはない」
看病を見ているコトミンの昼食を持ってきたティナとエリナはレナの容体を尋ね、コトミンは未だに変わりはない事を告げる。2人も心配そうにレナの顔を覗き込み、目を覚ます様子がないレナを心配する。
「兄貴、こうしてみるとティナ様とそんなに年齢が変わらないんですよね……普段から妙に大人びているので忘れてましたけど、兄貴は森人族の基準ではまだ子供なんですよね」
「うん、私とそんなに変わらないのに凄いよね……皆から頼られて、誰よりも頑張って、一番強いんだから」
「そう、レナは凄い……だから皆忘れている。レナが苦労している事を」
今回の南聖将の領地に乗り込み、人質を救出するという作戦はレナが存在しなければ成り立たず、そもそも冒険者達もここへ呼び寄せる事は出来なかっただろう。北聖将の撃退、南聖将の討伐、どちらもレナがいなければ果たす事は出来なかった。
だが、ここまでの無理が祟ってレナは倒れた事を知った仲間達は非常に取り乱し、定期的に見舞いに訪れては目を覚まさないレナを見ては自分達がレナという存在に頼りっぱなしであった事を痛いほど思い知らされる。ティナは自分の姉のせいでレナが苦しみ、ここまで追い詰めたという事実に彼女は申し訳なさから顔を伏せる。
「カレハお姉様のせいで……ううん、私達のせいでレナたんがこんな事に……」
「姫様……」
「……落ち込むことはない、ティナは悪くない」
ティナの言葉にエリナとコトミンは慰め、一刻も早くレナが目覚める事を願う。そんな3人の様子を襖の隙間から伺う人影が存在し、その人物は黙って何も言わずに立ち去った――
――同時刻、屋敷の裏庭の方では一心不乱に腕立て伏せを行うゴンゾウが存在し、彼の背中にはダインが乗っていた。ゴンゾウの鍛錬にダインは付き合い、これからの事を話し合う。
「なあ、ゴンゾウ……僕達って、レナがいなければ本当に何も出来ないよな」
「……急に、どうした?」
ダインの言葉にゴンゾウは身体を休めずに問い返すと、ダインは深いため息を吐きながら答える。
「僕はさ、今までレナはどんな状況でも切り抜けられる凄い奴だって思っていたよ。けどさ、レナがフェンリルを倒した後にぶっ倒れた時、本当に死んだかと思ったよ」
「そう、か……」
「まあ、無事だと分かって安心したけどさ……やっと気づいたよ、僕達はレナに頼り切っていた。だからレナをあんなに無茶させたんだって」
「……そうだな」
ゴンゾウはダインの言葉を否定出来ず、フェンリルとの戦闘の際、自分が殆ど役に立っていなかった事を思い出し、無意識に身体を止めてしまう。
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