不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
686 / 2,090
外伝 ~ヨツバ王国編~

レイビ討伐大作戦

しおりを挟む
「まずはこれがアトラス大森林の大まかな地図です。見ての通り、南方の領地を守護しているレイビの方が東聖将の領地より大きいのは分かりますね?」
「本当だ。確かに結構差があるね」
「レイビが領地の管理が自分の兵士達だけで出来なかったのはこの広大な領地が原因なんです。ですが、現在は赤獣を従える事で他の将軍の兵士を借りずに統治しています」
「ギンタロウさんが貸していた500人の兵士は?人質として捉えられているんでしょ?」


ホワイトボードに書き込まれた地図を確認しながらレナはギンタロウの配下の兵士達の居場所を尋ねると、アイリスは南聖将の領地の右端にマジックペンで円を描く。


「レイビに拘束された兵士達はこの場所に捕まっています。彼等は森人族の兵士なのでレイビも殺すような真似はせず、後々に自分に従えさせようと考えて現在は隔離されています」
「けど、500人の兵士でしょ?それだけの兵士を隔離するのなんて難しくないの?」
「その点もちゃんと考えられています。実はこの場所には採掘場が存在します。兵士達は隔離されているわけではなく、この採掘場で強制的に働かされて魔石の原石を掘り起こしているんです」
「採掘場?」
「アトラス大森林にもいくつかの鉱山が存在するんですが、レイビが管理している鉱山では良質な土属性の魔石が取れるんですよ。土属性の魔石は細かく砕いて肥料にすると農作物が育ちやすいですからね。大勢の魔物を従えているレイビにとっては魔物の餌を用意するために常日頃から農作業も行っているんですよ。人間よりも食事代が掛かる魔物達の世話するのも大変ですからね」


アトラス大森林にも鉱山が存在する事にレナは驚いたが、ギンタロウの配下の兵士達が無事である事を聞いて安心する。だが、採掘場で働かされている兵士達を救出するとなると色々と面倒な事になりそうだと感じていた。


「500人の兵士を見張っているとなると、相当な数の兵士も見張りに立たされているんじゃないの?」
「いえ、レイビは採掘場には20人程度の見張りしか用意してません」
「え!?少なくない!?500人を20人で見張るなんて……」
「20人といっても普通の森人族じゃないですよ。見張っているのはレイビの配下の魔物使いが使役している魔人族です」


アイリスによると500人という兵士を見張らせているのは、レイビの配下の中でも精鋭の魔物使いの職業の兵士が使役した20体の魔人族らしく、採掘場で兵士達を馬車馬のように働かせているという。


「この20体の魔人族はレイビの戦力の中でも精鋭と呼ぶに相応しい面子です。名前は「人虎」と呼ばれ、外見は虎と人間が合わさったような姿をしています」
「た、タイガーマ〇ク!?」
「いえ、違いますから!!というか、ネタが古い!!」
「要するに虎男みたいな感じか……けど、そいつらは獣人族とは違うの?」
「獣人族は主に人間に獣の特徴を付け加えたような存在ですからね。ですが、人虎の場合は逆で動物に人間の特徴を付け加えた感じです。分かりやすく言えば人間に獣耳や尻尾を生やしたのが獣人、動物に人間のような手足や二足歩行になったのが魔人族です」
「なるほど」


人虎というのはあまり聞き慣れない名前だが、アイリスによれば危険度はミノタウロスやサイクロプスにも匹敵するらしく、しかも知能が高いので人語を完璧に理解できるという。


「人虎は人間の言葉を理解できるだけではなく、力も強くて足も速いんです。赤毛熊程度の相手なら首をへし折るぐらいの膂力はありますから油断しない方がいいですよ」
「うえっ……」
「しかも採掘場の人虎は野生の種と違って武術も身に着けています。野生の種と違って幼少の頃から鍛え上げられた人虎ですから強いですよ。少なくとも500人の兵士でさえも反抗出来ない程の力を持ってますからね」
「面倒な相手だな……けど、他に見張りはいないの?」
「人虎を操っている魔物使いの兵士は居ますが、彼等を倒して人虎の契約紋を解除した所で状況は変わりません。人虎は自分の意思でレイビに従っているので使役者がいなくなった所で役目を放棄するような輩はいません」
「あらら……」


500人の兵士の救出のためには20体の人虎を倒す必要が必須条件らしく、この強敵を倒さない限りはレイビに勝てないといっても過言ではない。ギンタロウが500人の配下の兵士を人質に取られている以上はレイビに対して攻撃を仕掛ける事は出来ず、この状況下でレイビの軍勢が領地へ攻め込まれた場合はギンタロウは抵抗出来ない。

早急に人質にされている兵士達を救出しなければならないが、問題なのはどのような手段で500人の兵士を無事に救助するのかであり、まずはどのような手段で南方の領地に侵入して兵士達が叩かされている採掘場に忍び込むのかが重要だった――
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。