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最終章 王国編

人質との合流

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「やった!!兜を破壊した……えっ!?」
「お、女ぁっ!?」
「嘘!?女性だったのでござるか!?」
「あらあら……驚いたわ」
「ま、マジかよ……」


ゴウライの素顔が露わになった瞬間にシズネ以外の全員が驚愕の声を上げ、中年男性だと思い込んでいた相手が女性のしかもダークエルフだと知って動揺を隠せない。しかし、今は時間がないのでゴウライの素顔を気にしている暇はなく、隙を見せた彼女を正気に戻すために動く。


「今だ!!全員で掛かれ!!」
「ちっ、しょうがないね……撃剣!!」
「輪脚!!」
「勁撃!!」
「抜刀!!」
「螺旋槍!!」
「回転!!」
「あぐぅっ!?」


シュンの言葉を聞いて即座にバル、アイラ、リンダ、ハンゾウ、ミナ、ジャンヌが動き出し、兜が破壊された事で隙を見せたゴウライに対して全く同時に戦技を放つ。一度に多人数に攻撃されればゴウライであろうと防ぐ事は出来ず、全身に衝撃を受けたゴウライは膝を付いた。


「ブモォオオオッ!!」
「キュロロッ!!」
「糸縛り!!」
「ぬおっ……!?」


その隙にアインとミノがゴウライの両腕を抑えつけ、更にラナが両手から細い糸を取り出してゴウライの首筋を縛り付ける。続けてシュンが駆け抜け、ティナの身体を掴んでゴウライの元へ放り投げた。


「後は頼んだぞティナ様!!」
「うわわっ!?」
「シュン!?貴方、ティナ様になんてことを……!!」


放り投げられたティナは悲鳴を上げながらもゴウライの元へ向かい、そのまま露わになった彼女の顔に向けて手を伸ばすが、若干距離が足りずにゴウライの目の前で落下する。


「あわわっ!?」
「ティナ様!?」
「ういっ!!」
「ぷるるんっ!?」


城壁に居たコトミンが落下するティナを見て咄嗟にスラミンを彼女の元へ放り投げると、地面に墜落する寸前にスラミンが先に地面に叩きつけられると、そのまま弾力を利用してティナの身体を跳ね飛ばす。


「とらんぶりん!!」
「はわわっ!?」
『えええっ!?』


まるでトランポリンのようにスラミンがティナの胸元から彼女の身体を上空へ吹き飛ばすと、今度こそゴウライの頭の上にティナは乗り込み、目を回しながらも回復魔法を施す。


「え、ええ~い!!」
「おああっ!?」


頭に聖属性の魔力を流し込まれたゴウライは目を見開き、彼女の身体に宿っていた闇属性の魔力が浄化され、やがて煙と化してゴウライの身体から離れていく。その際、煙に一瞬だけ老人の顔のような物が浮かんだが、誰にも気付かれる事はなく煙は消散した。

完全に闇属性の魔力を放出したゴウライに全員が視線を向け、冷や汗を流しながらティナはゴウライの目元を覆っていた両手を離すと、そこには虚ろな瞳の彼女の顔が存在し、ゆっくりと地面に倒れ込む。


「うぐっ……」
「わわわっ!?」
「ご、ゴウライ様!?」
「おい、どうした!?」
「退きなさい!!」


唐突に倒れ込んだゴウライの元に慌ててシュンとジャンヌが駆けつけると、シズネが先にゴウライの元へ近づき、頭に手を伸ばす。しばらくの間は沈黙が走り、やがてシズネは手を離すと呆れた表情を浮かべる。


「……気絶した、というよりは疲れて寝ているわ」
『はあっ!?』
「ふごぉおおおっ……ふがっ、んごぉおおおっ……!!」


シズネの言葉の直後にゴウライの寝言が裏庭に響き渡り、その様子を見てシズネは頭を抑え、他の者達は呆れた表情を浮かべる。あれほどの戦技を浴びせてもゴウライの肉体には大きな損傷は見当たらず、遊び疲れた子供が眠るように穏やかな表情を浮かべながら眠るゴウライに全員がため息を吐く。


「な、何なのだこいつは……」
「完全に眠っていますね……起こすべきでしょうか?」
「もういい、そんな馬鹿は放っておけ……くそ、魔力も体力も使い切っちまった」
「ふうっ……こんなに疲れたのは久しぶりだね」
「やっぱり身体が訛っているわ。もう少し普段から運動しておくべきだったわね」
「でも、良かったぁっ……私達、勝ったんだよね」


ゴウライを戦闘不能に追い込んだ事でバルたちは安堵の表情を浮かべるが、そんな彼女達に対してシズネは冷静に否定する。


「いえ、まだ終わっていないわよ。王妃と他の人質を救出するまでは安心出来ないでしょう?」
「あっ!?そうだった!!」
「こうしてはいられません!!すぐに国王様達を見つけ出さないと……!!」
「それにナオちゃんも助けないと!!」
「その必要はないぞ……」


シズネの言葉を聞いて慌ててリンダとティナは立ち上がったが、そんな彼女達の後方から声が響き渡り、全員が振り向くとそこにはナオの肩を抱えたデブリ国王とアルンとノルが歩く姿が存在した。彼等を見て全員が驚き、慌てて4人の元へ向かう。


「国王様!!ご無事だったのですね!?」
「お父さん!!それにお兄ちゃんとお姉ちゃんも!!」
「おお、ティナ!!お前も無事だったのか!!」
「会いたかったですわ!!」
「これは……どういう事なの?」


唐突に現れたデブリ達にティナは涙目で駆けつけ、彼等を抱きしめる。だが、どうして彼等がこの場に現れたのかシズネは疑問を抱くと、デブリに肩を貸してもらったナオが背後を指差す。


「レミアだ……レミア将軍に私達は助けてもらったんだ」
「申し訳ありません……救援が遅くなりました」
「レミア!!貴女も無事だったのね?」


4人の背後にはレミアの姿も存在し、どうやら彼女が牢屋から脱出して捕まっているナオ達の元へ駆けつけたらしく、全員を救い出したらしい。鍵に関してはホネミンのように魔鎧術を応用して突破したらしく、無事に全員の拘束を解除して抜け出したようだった。


「遅れて申し訳ありません……監視が厳しく、抜け出す隙が見つからずに今まで捕まって猪田ですが、地上の様子が騒がしい事に気付いてやっと脱出出来ました」
「そうだったの……随分と苦労したようね」
「いえ、私などよりもナオ様やヨツバ王国の王族の方々が辛い目にあっていたようです……もっと早く私が抜け出していればこんな事には……」
「何を言うかレミア殿、お主のお陰でこうして我等は再会できた。この御恩、一生忘れんぞ」
「あ、ありがとうございます」


デブリに頭を下げられて慌ててレミアも顔を上げるように促すと、これで人質は全員が救出された事になり、後は王妃とミドルを捕まえ、ついでに城門を解放して民衆を城内に引き込めば革命団の目的は果たされる。


「悪いけど、再会の喜びを分かち合うのは後にしましょう。今は他にするべき事があるわ」
「何だ?自分だって捕まってたくせに仕切り始めやがって……」
「今は貴方とくだらない争いをしている暇はないわ。レナとダインが王妃とミドルの元へ向かってる……恐らく、もう戦闘は始まっているわ」
「何だって!?レナが……城内に!?」


義弟のレナが既に城内に存在している事を知ったナオは傷を抑える腕を離して走り出そうとしたが、数日間も牢屋で捕まっていたせいか身体が思う様に動かず、足をもつれて転んでしまう。


「うぐっ……く、くそっ……こんな時に」
「ナオちゃん!!無理しちゃ駄目だよ!!」
「ここは拙者たちに任せて欲しいでござる!!シズネ殿、御二人は今何処に?」
「玉座の間よ……だけど、今から言っても間に合わないわ」
「どういう意味ですか?」


シズネの言葉に全員が驚くと、彼女は深刻な表情を浮かべながら玉座の間が存在する方角へ視線を向け、二人の無事を祈るように呟く。


「……恐らく、もう決着はついているわ」
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