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最終章 前編 〈王都編〉
閑話 〈???〉
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――時刻は数日前に遡り、王妃の命令で王都の守備を任されていたミドルは部下からの報告を受け、城下町で起きた殺人事件の調査を行っていた。被害者はこの王都に暮らしていた元傭兵の男性であり、ミドルの顔見知りでもあった。
「……これは酷いな」
「ええっ……どうやら死後から数時間は経過しています」
人目に目立たない路地裏で40代前半の獣人族の男性の遺体が建物の壁に背中を預けた状態で発見され、その傷口を見てミドルは彼の死因が刀傷によるものだと知る。恐らくは被害者は一太刀で殺された事は間違いなく、死体の顔を眺めながらミドルは兵士に死体を発見した時の状況を尋ねる。
「この死体を最初に発見したのは?」
「被害者の友人です。昨日の夜、被害者と共にこの近くの酒場で酒を飲んでいたそうですが、飲んでいる最中に急に用事を思い出したそうで姿を消したそうです。友人の男性は朝まで飲んだくれていたそうですが、金が尽きた事で店主に追い出されて家に戻る途中、見覚えのある短剣を発見したそうです」
「短剣?」
「被害者が普段から身に着けていた護身用の武器だそうです。被害者はこの短剣を大切に扱っていたそうなので不思議に思った男性は周囲を捜索した時、偶然にも路地裏で倒れている被害者の遺体を発見したと供述しています」
「なるほど……その男性は?」
「話を聞く限りでは嘘を吐いている様子はありませんでした。それに死体が殺害されたと思われる推定時刻は数時間前……ずっと酒場で飲んでいた男性の犯行は有り得ません。店主や酒場に居た他の客からの証言もあります」
「ふむ……」
第一発見者である男性が被害者を殺害した可能性は非常に低く、死体の状態を調べる限りでは死亡してからかなりの時間が経過していた。恐らくは昨日の深夜に殺された事は間違いなく、男性が酒場で飲んだくれていたのならばアリバイは成立する。
しかし、ミドルはただの通り魔に被害者が殺されたとは思えなかった。何しろ被害者は元傭兵で腕が立ち、ミドルとも交流があった人物だった。付き合いは短いがお互いに気が合い、何度か手合わせをしたこともある。それだけにミドルは彼が殺されたという話を聞いて驚きを隠せない。
「彼の実力は本物だった。剣聖には及ばずとも、それに近い実力者だった。なのにそんな彼を一撃で切り殺した人物が王都に存在する……?」
「例の指名手配されている剣士の仕業でしょうか?それとも氷雨の剣聖達が……?」
「いや、彼の仕業じゃない。他の剣聖も恐らく違うだろう……だが、それなら一体誰が?」
傷跡を確認する限りでは大剣で斬りつけられたとは思えず、犯人はレナではない事をミドルは悟る。他の剣聖が行ったという可能性もあるが、彼等が無意味な殺人を犯すとは思えなかった。しかし、剣聖に近い実力を持つ剣士を殺す程の実力者がこの王都に存在する事は確かだった。
「……城下町を巡回させる兵士の数を倍に増やす。それと城下町で起きた事件の資料も用意してくれ。黒影にも連絡を入れておく」
「分かりました」
命令を受けた兵士は早急に立ち去ると、残されたミドルは剣士の遺体に視線を向け、冷や汗を流す。
「不味いな……こういう時の僕の悪い予感はよく当たる」
剣聖と同等かあるいはそれに近い実力者が街に潜伏しているという事実にミドルは不安を覚え、より一層に王都の警戒を高める事にした。
「……これは酷いな」
「ええっ……どうやら死後から数時間は経過しています」
人目に目立たない路地裏で40代前半の獣人族の男性の遺体が建物の壁に背中を預けた状態で発見され、その傷口を見てミドルは彼の死因が刀傷によるものだと知る。恐らくは被害者は一太刀で殺された事は間違いなく、死体の顔を眺めながらミドルは兵士に死体を発見した時の状況を尋ねる。
「この死体を最初に発見したのは?」
「被害者の友人です。昨日の夜、被害者と共にこの近くの酒場で酒を飲んでいたそうですが、飲んでいる最中に急に用事を思い出したそうで姿を消したそうです。友人の男性は朝まで飲んだくれていたそうですが、金が尽きた事で店主に追い出されて家に戻る途中、見覚えのある短剣を発見したそうです」
「短剣?」
「被害者が普段から身に着けていた護身用の武器だそうです。被害者はこの短剣を大切に扱っていたそうなので不思議に思った男性は周囲を捜索した時、偶然にも路地裏で倒れている被害者の遺体を発見したと供述しています」
「なるほど……その男性は?」
「話を聞く限りでは嘘を吐いている様子はありませんでした。それに死体が殺害されたと思われる推定時刻は数時間前……ずっと酒場で飲んでいた男性の犯行は有り得ません。店主や酒場に居た他の客からの証言もあります」
「ふむ……」
第一発見者である男性が被害者を殺害した可能性は非常に低く、死体の状態を調べる限りでは死亡してからかなりの時間が経過していた。恐らくは昨日の深夜に殺された事は間違いなく、男性が酒場で飲んだくれていたのならばアリバイは成立する。
しかし、ミドルはただの通り魔に被害者が殺されたとは思えなかった。何しろ被害者は元傭兵で腕が立ち、ミドルとも交流があった人物だった。付き合いは短いがお互いに気が合い、何度か手合わせをしたこともある。それだけにミドルは彼が殺されたという話を聞いて驚きを隠せない。
「彼の実力は本物だった。剣聖には及ばずとも、それに近い実力者だった。なのにそんな彼を一撃で切り殺した人物が王都に存在する……?」
「例の指名手配されている剣士の仕業でしょうか?それとも氷雨の剣聖達が……?」
「いや、彼の仕業じゃない。他の剣聖も恐らく違うだろう……だが、それなら一体誰が?」
傷跡を確認する限りでは大剣で斬りつけられたとは思えず、犯人はレナではない事をミドルは悟る。他の剣聖が行ったという可能性もあるが、彼等が無意味な殺人を犯すとは思えなかった。しかし、剣聖に近い実力を持つ剣士を殺す程の実力者がこの王都に存在する事は確かだった。
「……城下町を巡回させる兵士の数を倍に増やす。それと城下町で起きた事件の資料も用意してくれ。黒影にも連絡を入れておく」
「分かりました」
命令を受けた兵士は早急に立ち去ると、残されたミドルは剣士の遺体に視線を向け、冷や汗を流す。
「不味いな……こういう時の僕の悪い予感はよく当たる」
剣聖と同等かあるいはそれに近い実力者が街に潜伏しているという事実にミドルは不安を覚え、より一層に王都の警戒を高める事にした。
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