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最終章 前編 〈王都編〉
石像の迷宮
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「暗視のスキルを使え、ここから先は声を控えろ……奴に聞かれるぞ」
「ここは……凄いな」
隙間を潜り抜けると通路の中に入り込み、冒険都市の地下に存在する地下通路と酷似した空間が広がっていた。暗視のスキルのお陰で暗闇でも周囲の状況を見渡せるが、入って早々にレナはとんでもない代物を発見した。
「これは……ゴブリンの石像?」
「奴に石像にされた者達だ。慎重に動かなければ……我等もこうなる」
通路内にはゴブリンの石像が大量に存在し、全ての石像が驚愕と恐怖の表情を浮かべながら固まっていた。試しに触れてみても石の感触しか存在せず、外見は精巧に作られた石像にしか見えないが、ラナの話によれば全てメドゥーサに魅入られた地下迷路の侵入者たちらしい。
ゴブリン以外の魔物の石像も多数存在し、中には人間の姿も存在した。偶然にもこの場所に入り込んだのか冒険者や盗賊のような恰好をした人間も多く、身に着けている衣服や武器も巻き込んで石化していた。
「迂闊に石像には触れるな。そいつらはまだ生きている、仮に粉々に砕かれても石化が解除するまで生きているからな」
「凄い数の石像だな……」
「奥に進めばもっとある……この迷路では石像が見かけない場所は存在しない」
ラナは先に進むとレナも後に続き、様々な石像を目にしながらも警戒心を緩めずに進む。石像の中には人間以外にも小髭族や獣人族の姿もあり、中には兵士の格好をした人間も少なくはない。
「王都までどれぐらいで辿り着ける?」
「……1時間だ。しっかりついてこい」
レナの質問に答えるとラナは通路内を音も立てずに駆け抜け、彼女も「無音歩行」の技能を習得している事を知ったレナは後に続く。移動の最中、通路の至る箇所に存在する石像が障害物となるので気を付けて進まなければならなず、迂闊に石像を壊さないようにしながらラナを追う。
緑影の中でも古株というだけはあってラナの移動速度は速く、見失わないように気を付けながらもレナは自分の身体能力を確かめる。支援魔法の補助がなくとも彼女についていける事から確実に火竜の経験石を破壊した効果が表れており、レナは自分のステータスを確認してレベルの上昇率を調べる。
(72か……65から上がったと考えたらかなりの上昇率なんだろうけど、それでも思ったより上がってはいないな)
ミドルのレベルは推定では80を超えている事から考えても未だにレベルの差は大きく、今の状態で戦闘を挑んでも勝てる保証はない。それでもカイから教わった「一刀両断」の戦技や風の聖痕の力を使えばミドルを打ち倒す方法もあるかもしれず、王都に到着するまでの間にレナはミドルを倒す手段を考えた。
(あいつに勝つにはどうしたらいい?)
ミドルは10年以上も王国の大将軍として国を支えてきた将軍であり、その実力はレミアやカノンを上回るだろう。さらに土竜の経験石を破壊した事で驚愕な力を得た事は間違いなく、今のレナでは正直勝てる気はしない。
(アイリスと交信できるようになったら夢の世界でまた模擬戦をしてもらうしかないかもな……ん?)
移動中に考え事をしていたレナは前方のラナが立ち止まった事に気づき、何かあったのかと彼女の顔を見ると、ラナは石像の一体に視線を向けていた。彼女の見ている先にはフードで全身を覆い隠した石像が一体存在し、身体を震わせながらラナは石像に手を伸ばす。
「プラト……!!」
「……知り合い?」
「私の……夫だ」
ラナは石像の顔を覗き込んで悲し気な表情を浮かべ、黙って抱きしめる。その様子を見てレナはどのように声を掛けるべきか悩み、プラトと呼ばれた石像の顔を見つめる。他の石像と違い、こちらの石像は怒気を滲ませた状態で武器を握り締めていた。
「20年前、このプラトは王都へ忍び込むためにこの通路を利用した。だが、ここでメドゥーサと遭遇して石像とされた……誰よりも優れた暗殺者だったのに」
「……メドゥーサを殺せばその人は戻るの?」
「そうだ。だが、そんな事が出来るはずがない。奴は只の魔人ではない……あいつは――」
レナの言葉にラナは悔し気に彼の方を振り向いた瞬間、目を見開く。そんな彼女の反応にレナは違和感を抱くと、背後の方から異様な殺気を感じ取って振り返る。すると暗闇の中から無数の灰色の蛇が出現し、二人の足元に目掛けて接近してきた。
「いかん!!見つかった、すぐに離れるぞ!!」
「こいつらは……」
「メドゥーサの頭の蛇だ!!こいつらの先にメドゥーサが存在する!!」
地面を這う蛇をよく観察すると全ての蛇の胴体が異様に長い事に気付き、ラナによればこの蛇はメドゥーサの頭と繋がっているらしく、胴体の先にメドゥーサが存在するという。急いで二人はその場を離れようとしたが、地面を移動する蛇達は口元を開き、二人に目掛けて牙を剥く。
『シャアアアッ!!』
「避けろ!!こいつらに噛まれても石化するぞ!!」
「くそっ……近寄るな!!」
飛び掛かってくる蛇達を二人は回避しながら通路を移動し、全速力で駆け抜ける。複雑な迷路ではあるが道順は覚えているのかラナは迷いなく進み、やがて大きな広間へと辿り着いた。
「止まれ……蛇達がいなくなった。振り切れたのかもしれない」
「あいつら……気配感知や魔力感知でも反応しなかった」
「当たり前だ。奴等は生き物ではない、あくまでもメドゥーサの髪の毛だ。だから感知系のスキルも通用しない」
「厄介な相手だな……ここから先はどう進めばいい?」
「そこの通路を進めば地上へ繋がる梯子が……!?」
「ラナ?」
言葉が途中で途切れた事に疑問を抱いたレナはラナに視線を向けると、彼女の背後に何時の間にか人影が存在した。それを確認したレナは瞼を閉じて直視しないよう気を付けると、広間内に不気味な声が響き渡る。
『愚か者が……私から逃げられると思ったか』
「あ、ぐうっ……!?」
『お前の恰好をした奴等は覚えがあるぞ……何度も私の縄張りを犯した侵入者め』
「ラナ!!」
瞼を閉じた状態からレナは腰に差していた反鏡剣を引き抜き、心眼の能力を発動させて周囲の状況を把握する。五感を限界まで研ぎ澄まし、ラナの背後に現れた存在を確かめると、そこには異業の化け物が存在した。頭髪は全て蛇の頭のように変形させ、顔立ちは美しいが怪しく光り輝く黄色の瞳、体型は細身だがその細腕でラナの身体を抱きしめて離さず、恐ろしい腕力で彼女の骨を軋ませる程に抱きしめていた。
唐突に現れたメドゥーサにレナはラナを救うために切りかかろうとしたが、それを予期していたようにメドゥーサは頭髪の蛇を操作してレナに放つ。100を超える蛇の頭の形を成した頭髪が襲い掛かり、それらを全てレナは反鏡剣で防ぎながら後方へ退避する。
「くっ!?」
『人間が……私の邪魔をするな!!』
『シャアアアッ!!』
本物の蛇のような鳴き声を上げながら襲い掛かる頭髪の蛇に対してレナは「受け流し」の戦技を発動させながら弾き返し、剣から伝わる感触から頭髪の硬度が異様に硬い事に気付く。
「くっ……ラナを離せ!!」
「何をしている……早く、行け!!私に構うな!!」
『逃がすか!!』
自分を助けようとするレナに対してラナは身体を拘束された状態で逃げるように促すが、メドゥーサは逃すつもりはないのか更に頭髪の蛇を増加させてレナに襲わせた。
「ここは……凄いな」
隙間を潜り抜けると通路の中に入り込み、冒険都市の地下に存在する地下通路と酷似した空間が広がっていた。暗視のスキルのお陰で暗闇でも周囲の状況を見渡せるが、入って早々にレナはとんでもない代物を発見した。
「これは……ゴブリンの石像?」
「奴に石像にされた者達だ。慎重に動かなければ……我等もこうなる」
通路内にはゴブリンの石像が大量に存在し、全ての石像が驚愕と恐怖の表情を浮かべながら固まっていた。試しに触れてみても石の感触しか存在せず、外見は精巧に作られた石像にしか見えないが、ラナの話によれば全てメドゥーサに魅入られた地下迷路の侵入者たちらしい。
ゴブリン以外の魔物の石像も多数存在し、中には人間の姿も存在した。偶然にもこの場所に入り込んだのか冒険者や盗賊のような恰好をした人間も多く、身に着けている衣服や武器も巻き込んで石化していた。
「迂闊に石像には触れるな。そいつらはまだ生きている、仮に粉々に砕かれても石化が解除するまで生きているからな」
「凄い数の石像だな……」
「奥に進めばもっとある……この迷路では石像が見かけない場所は存在しない」
ラナは先に進むとレナも後に続き、様々な石像を目にしながらも警戒心を緩めずに進む。石像の中には人間以外にも小髭族や獣人族の姿もあり、中には兵士の格好をした人間も少なくはない。
「王都までどれぐらいで辿り着ける?」
「……1時間だ。しっかりついてこい」
レナの質問に答えるとラナは通路内を音も立てずに駆け抜け、彼女も「無音歩行」の技能を習得している事を知ったレナは後に続く。移動の最中、通路の至る箇所に存在する石像が障害物となるので気を付けて進まなければならなず、迂闊に石像を壊さないようにしながらラナを追う。
緑影の中でも古株というだけはあってラナの移動速度は速く、見失わないように気を付けながらもレナは自分の身体能力を確かめる。支援魔法の補助がなくとも彼女についていける事から確実に火竜の経験石を破壊した効果が表れており、レナは自分のステータスを確認してレベルの上昇率を調べる。
(72か……65から上がったと考えたらかなりの上昇率なんだろうけど、それでも思ったより上がってはいないな)
ミドルのレベルは推定では80を超えている事から考えても未だにレベルの差は大きく、今の状態で戦闘を挑んでも勝てる保証はない。それでもカイから教わった「一刀両断」の戦技や風の聖痕の力を使えばミドルを打ち倒す方法もあるかもしれず、王都に到着するまでの間にレナはミドルを倒す手段を考えた。
(あいつに勝つにはどうしたらいい?)
ミドルは10年以上も王国の大将軍として国を支えてきた将軍であり、その実力はレミアやカノンを上回るだろう。さらに土竜の経験石を破壊した事で驚愕な力を得た事は間違いなく、今のレナでは正直勝てる気はしない。
(アイリスと交信できるようになったら夢の世界でまた模擬戦をしてもらうしかないかもな……ん?)
移動中に考え事をしていたレナは前方のラナが立ち止まった事に気づき、何かあったのかと彼女の顔を見ると、ラナは石像の一体に視線を向けていた。彼女の見ている先にはフードで全身を覆い隠した石像が一体存在し、身体を震わせながらラナは石像に手を伸ばす。
「プラト……!!」
「……知り合い?」
「私の……夫だ」
ラナは石像の顔を覗き込んで悲し気な表情を浮かべ、黙って抱きしめる。その様子を見てレナはどのように声を掛けるべきか悩み、プラトと呼ばれた石像の顔を見つめる。他の石像と違い、こちらの石像は怒気を滲ませた状態で武器を握り締めていた。
「20年前、このプラトは王都へ忍び込むためにこの通路を利用した。だが、ここでメドゥーサと遭遇して石像とされた……誰よりも優れた暗殺者だったのに」
「……メドゥーサを殺せばその人は戻るの?」
「そうだ。だが、そんな事が出来るはずがない。奴は只の魔人ではない……あいつは――」
レナの言葉にラナは悔し気に彼の方を振り向いた瞬間、目を見開く。そんな彼女の反応にレナは違和感を抱くと、背後の方から異様な殺気を感じ取って振り返る。すると暗闇の中から無数の灰色の蛇が出現し、二人の足元に目掛けて接近してきた。
「いかん!!見つかった、すぐに離れるぞ!!」
「こいつらは……」
「メドゥーサの頭の蛇だ!!こいつらの先にメドゥーサが存在する!!」
地面を這う蛇をよく観察すると全ての蛇の胴体が異様に長い事に気付き、ラナによればこの蛇はメドゥーサの頭と繋がっているらしく、胴体の先にメドゥーサが存在するという。急いで二人はその場を離れようとしたが、地面を移動する蛇達は口元を開き、二人に目掛けて牙を剥く。
『シャアアアッ!!』
「避けろ!!こいつらに噛まれても石化するぞ!!」
「くそっ……近寄るな!!」
飛び掛かってくる蛇達を二人は回避しながら通路を移動し、全速力で駆け抜ける。複雑な迷路ではあるが道順は覚えているのかラナは迷いなく進み、やがて大きな広間へと辿り着いた。
「止まれ……蛇達がいなくなった。振り切れたのかもしれない」
「あいつら……気配感知や魔力感知でも反応しなかった」
「当たり前だ。奴等は生き物ではない、あくまでもメドゥーサの髪の毛だ。だから感知系のスキルも通用しない」
「厄介な相手だな……ここから先はどう進めばいい?」
「そこの通路を進めば地上へ繋がる梯子が……!?」
「ラナ?」
言葉が途中で途切れた事に疑問を抱いたレナはラナに視線を向けると、彼女の背後に何時の間にか人影が存在した。それを確認したレナは瞼を閉じて直視しないよう気を付けると、広間内に不気味な声が響き渡る。
『愚か者が……私から逃げられると思ったか』
「あ、ぐうっ……!?」
『お前の恰好をした奴等は覚えがあるぞ……何度も私の縄張りを犯した侵入者め』
「ラナ!!」
瞼を閉じた状態からレナは腰に差していた反鏡剣を引き抜き、心眼の能力を発動させて周囲の状況を把握する。五感を限界まで研ぎ澄まし、ラナの背後に現れた存在を確かめると、そこには異業の化け物が存在した。頭髪は全て蛇の頭のように変形させ、顔立ちは美しいが怪しく光り輝く黄色の瞳、体型は細身だがその細腕でラナの身体を抱きしめて離さず、恐ろしい腕力で彼女の骨を軋ませる程に抱きしめていた。
唐突に現れたメドゥーサにレナはラナを救うために切りかかろうとしたが、それを予期していたようにメドゥーサは頭髪の蛇を操作してレナに放つ。100を超える蛇の頭の形を成した頭髪が襲い掛かり、それらを全てレナは反鏡剣で防ぎながら後方へ退避する。
「くっ!?」
『人間が……私の邪魔をするな!!』
『シャアアアッ!!』
本物の蛇のような鳴き声を上げながら襲い掛かる頭髪の蛇に対してレナは「受け流し」の戦技を発動させながら弾き返し、剣から伝わる感触から頭髪の硬度が異様に硬い事に気付く。
「くっ……ラナを離せ!!」
「何をしている……早く、行け!!私に構うな!!」
『逃がすか!!』
自分を助けようとするレナに対してラナは身体を拘束された状態で逃げるように促すが、メドゥーサは逃すつもりはないのか更に頭髪の蛇を増加させてレナに襲わせた。
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