481 / 2,083
放浪編
勇者の遺物
しおりを挟む
ダインの案内の元、神殿を抜け出したレナ達は文字通りに「謎の広間」へと到着した。円形型の大きな広場であり、中央部には金色に光り輝く台座と直径が10メートルを超える巨大な金色の金属の輪が浮揚していた。その色合いを見てレナはゴンゾウが装備している「金銀の闘拳」と同じ輝きを放つ事に気付く。
「これがダインの言っていた奴?確かに不思議な光景だな……」
「いや、これ不思議どころじゃないだろ!?こんな大きな物体が浮かんでいるんだぞ!?前にハンゾウが持ってきた浮揚石の類でおかしいと思わないの!?」
「前にハンゾウが持ってきた浮揚石という空に浮かぶ魔石じゃないのか?」
「僕も最初はそう考えたんだけど、ちょっと見てろよ……てりゃっ!!」
「あっ」
ダインは落ちていた石を拾い上げ、広場の台座に向けて投げ込む。そのまま小石は輪の中に潜り抜けようとした瞬間、輪の中心部が光り輝いて投げ込まれた小石を跳ね返す。その光景を見たレナ達は驚き、ダインはため息を吐きながら背中をさする。
「僕が最初に調べようと近づいてみたら、さっきみたいに輪っかが光り輝いて弾き飛ばされたんだよ。でも、不思議な事に結構な勢いで飛ばされたんだけど、吹き飛ばされた時は痛みはなかった……まあ、背中から地面に倒れて腰を痛めたんだけどさ」
「近寄ろうとする物体を反射するというわけか……」
「レナ、ここに何か書いてる」
「え、どれどれ?」
コトミンの言葉にレナは視線を向けると、確かに台座の部分に文字が記されており、しかもこの世界の文字ではなく地球の日本語で記されていた。久しぶりの日本語を見てレナはここが勇者が残した遺跡だと確信する一方、その文章を見て驚愕の事実を確認する。
――地球から転移された人間のためにこの装置の使い方を書き記します。これは「転移門」という別の場所へ転移するための機械です。転移先は別の場所に設置された転移門に固定されますが、この世界を旅するのに便利な道具になるでしょう。
転移門の使用方法は「十字鍵」と呼ばれる鍵を台座に設置する必要があります。設置した十字鍵は転移の際に自動的に転移先に転送されるので失くす心配はありません。これから召喚されるであろう勇者の皆さんの役に立つことを願います。
文章の内容からどうやら転移門と呼ばれる装置を作り出した人間が記した物らしく、一番下の方には名前が記されていた。その名前を見てレナは疑問を抱く。
(霧崎……レア?従弟の兄ちゃんと同じ名前だ)
偶然なのか記された名前には地球で暮らしていた頃のレナの従弟と同じ名前が記されているが、まさか本人ではないのか考えてしまうが、今更確かめる手段はない。
(この文字を残されたのは少なくとも数百年前ぐらいだろうから生きてるとは思えないな……それよりも転移門に十字鍵か。昔の勇者はこれを使って色々な場所に転移していたのか)
過去に召喚された勇者が使用したと思われる「転移門」と呼ばれる機器を前にしてレナは感動を覚え、同じ地球人の作り出した物に興味を抱かざるを得ない。だが、残念な事に十字鍵と呼ばれる道具がなければ機器を発動させる事は出来ないようであり、台座には鍵の差込口と思われる鍵穴が存在した。大きさはかなり大きく、短剣でも這い切れる程の深さは存在した。
「どうやら昔の勇者が使っていた別の場所へ転移するための魔道具みたいだね。でも、今の状態だと発動出来ないみたい」
「マジで!?そんなに凄い代物だったのか……」
「それならどんな場所にでも行けるのか?」
「いや、これと同じ物が世界中にあるみたいだから別の場所に存在する転移門に移動できるだけ。最も今はここに嵌め込む道具がないと発動出来ないみたいだけどね」
「……残念」
レナが指差した鍵穴を覗き込んだコトミンがつまなそうな表情を浮かべ、実際に起動出来たのならば良かったのだが、肝心の十字鍵と呼ばれる鍵が無ければ何も出来ない。広間の存在を確かめる事が出来たのでレナ達は立ち去ろうとした時、不意にレナは頭を抑える。
「うっ……?」
「レナ?どうかした?」
「いや、ちょっと頭痛が……え?」
唐突に襲われた頭痛にレナは頭を抑えると、不意に視界に存在したコトミン達の動作が止まり、まるで時間が止まったように動かなくなる。それを見たレナは懐かしささえ感じる感覚に驚きを隠せず、頭の中に数日ぶりのアイリスの声が響いた。
『レナさ~ん、聞こえますか?』
『この邪心に満ちた声は……アイリスか!!』
『ぶっ飛ばしますよ。生意気な事を言っていると交信を遮断しますからね』
『冗談だよ。でも、久しぶりだなこの感じ……』
――随分と久しぶりに脳内に聞こえてくるアイリスの声を聞いてレナは自分が「交信」の状態に陥っている事に気付き、数日ぶりに夢の世界以外でアイリスの声を耳にして安心感を得る。だが、その一方で随分と早くアイリスと交信出来るようになった事に疑問を抱く。
「これがダインの言っていた奴?確かに不思議な光景だな……」
「いや、これ不思議どころじゃないだろ!?こんな大きな物体が浮かんでいるんだぞ!?前にハンゾウが持ってきた浮揚石の類でおかしいと思わないの!?」
「前にハンゾウが持ってきた浮揚石という空に浮かぶ魔石じゃないのか?」
「僕も最初はそう考えたんだけど、ちょっと見てろよ……てりゃっ!!」
「あっ」
ダインは落ちていた石を拾い上げ、広場の台座に向けて投げ込む。そのまま小石は輪の中に潜り抜けようとした瞬間、輪の中心部が光り輝いて投げ込まれた小石を跳ね返す。その光景を見たレナ達は驚き、ダインはため息を吐きながら背中をさする。
「僕が最初に調べようと近づいてみたら、さっきみたいに輪っかが光り輝いて弾き飛ばされたんだよ。でも、不思議な事に結構な勢いで飛ばされたんだけど、吹き飛ばされた時は痛みはなかった……まあ、背中から地面に倒れて腰を痛めたんだけどさ」
「近寄ろうとする物体を反射するというわけか……」
「レナ、ここに何か書いてる」
「え、どれどれ?」
コトミンの言葉にレナは視線を向けると、確かに台座の部分に文字が記されており、しかもこの世界の文字ではなく地球の日本語で記されていた。久しぶりの日本語を見てレナはここが勇者が残した遺跡だと確信する一方、その文章を見て驚愕の事実を確認する。
――地球から転移された人間のためにこの装置の使い方を書き記します。これは「転移門」という別の場所へ転移するための機械です。転移先は別の場所に設置された転移門に固定されますが、この世界を旅するのに便利な道具になるでしょう。
転移門の使用方法は「十字鍵」と呼ばれる鍵を台座に設置する必要があります。設置した十字鍵は転移の際に自動的に転移先に転送されるので失くす心配はありません。これから召喚されるであろう勇者の皆さんの役に立つことを願います。
文章の内容からどうやら転移門と呼ばれる装置を作り出した人間が記した物らしく、一番下の方には名前が記されていた。その名前を見てレナは疑問を抱く。
(霧崎……レア?従弟の兄ちゃんと同じ名前だ)
偶然なのか記された名前には地球で暮らしていた頃のレナの従弟と同じ名前が記されているが、まさか本人ではないのか考えてしまうが、今更確かめる手段はない。
(この文字を残されたのは少なくとも数百年前ぐらいだろうから生きてるとは思えないな……それよりも転移門に十字鍵か。昔の勇者はこれを使って色々な場所に転移していたのか)
過去に召喚された勇者が使用したと思われる「転移門」と呼ばれる機器を前にしてレナは感動を覚え、同じ地球人の作り出した物に興味を抱かざるを得ない。だが、残念な事に十字鍵と呼ばれる道具がなければ機器を発動させる事は出来ないようであり、台座には鍵の差込口と思われる鍵穴が存在した。大きさはかなり大きく、短剣でも這い切れる程の深さは存在した。
「どうやら昔の勇者が使っていた別の場所へ転移するための魔道具みたいだね。でも、今の状態だと発動出来ないみたい」
「マジで!?そんなに凄い代物だったのか……」
「それならどんな場所にでも行けるのか?」
「いや、これと同じ物が世界中にあるみたいだから別の場所に存在する転移門に移動できるだけ。最も今はここに嵌め込む道具がないと発動出来ないみたいだけどね」
「……残念」
レナが指差した鍵穴を覗き込んだコトミンがつまなそうな表情を浮かべ、実際に起動出来たのならば良かったのだが、肝心の十字鍵と呼ばれる鍵が無ければ何も出来ない。広間の存在を確かめる事が出来たのでレナ達は立ち去ろうとした時、不意にレナは頭を抑える。
「うっ……?」
「レナ?どうかした?」
「いや、ちょっと頭痛が……え?」
唐突に襲われた頭痛にレナは頭を抑えると、不意に視界に存在したコトミン達の動作が止まり、まるで時間が止まったように動かなくなる。それを見たレナは懐かしささえ感じる感覚に驚きを隠せず、頭の中に数日ぶりのアイリスの声が響いた。
『レナさ~ん、聞こえますか?』
『この邪心に満ちた声は……アイリスか!!』
『ぶっ飛ばしますよ。生意気な事を言っていると交信を遮断しますからね』
『冗談だよ。でも、久しぶりだなこの感じ……』
――随分と久しぶりに脳内に聞こえてくるアイリスの声を聞いてレナは自分が「交信」の状態に陥っている事に気付き、数日ぶりに夢の世界以外でアイリスの声を耳にして安心感を得る。だが、その一方で随分と早くアイリスと交信出来るようになった事に疑問を抱く。
0
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。