上 下
480 / 2,083
放浪編

聖剣レーヴァティン

しおりを挟む
「ダイン、さっきの魔水晶を貸してよ。これが本当に聖剣なのか確かめたいから」
「えっ!?や、やだよ!!こいつは僕の家宝にするんだ!!」
「我儘言わないのもう!!ほら、早く貸しなさい!!」
「お母さん……?」


嫌がるダインを母親のように叱りつけながらレナは魔水晶を差し出す様に促し、渋々とダインは小袋を取り出して魔水晶を差し出す。柄の窪みに魔水晶を嵌め込むと虹色の刀身がより光り輝き、掌を通して熱が送り込まれる。


「おおっ……何か、凄い力を感じる」
「強い魔力を出してる。前にレナが腐敗竜を倒した時の剣みたい」
「す、凄いな……」
「俺にはよく分からないが……」


魔術師ではないゴンゾウには聖剣の力を感じ取れないようだが、他の3人は並みの魔術師よりも優れているので剣から発せられる魔力を感じ取り、その魔力の強さはカラドボルグにも匹敵した。レナは聖剣レーヴァティンと思われる剣を握り締め、もしも勇者の作り出した聖剣ならば勇者の血筋でもあるレナにも扱えるはずだった。

エクスカリバーはカラドボルグは大量の魔力を消耗する事で剣の力を発揮出来たが、レーヴァティンも同様に所持しているだけで魔力を吸収する仕組みらしく、試しにレナは剣が突き刺さっていた台座に視線を向けて剣を振り下ろす。


「よし、行くぞ……はあっ!!」
「うわっ!?」


刃を振りぬいた瞬間、刀身から真紅の火炎が放出されて台座を飲み込み、金属を容易く溶かす。どうやらカラドボルグと同様に放出系の攻撃が行えるらしく、カラドボルグが光線のような雷撃を生み出すのに対してレーヴァティンは火炎放射のように真紅の炎を生み出せる事が発覚した。

七大魔剣である紅蓮の場合は刃に衝撃を受ける事で爆発を引き起こすのに対し、聖剣レーヴァティンの場合は炎を自由自在に放出する事が出来るらしく、似ているようで性質が異なるらしい。思いもよらずに強力な武器を手に入れたレナは慌てて剣を下ろす。


「ふうっ……カラドボルグよりは魔力の消費量は少ないけど、そう何度も使えなさそうだな」
「な、なあレナ?もうそれが本物だって分かっただろ?なら魔水晶は僕に返して……」
「ダイン、諦めろ。聖剣を扱えるのはレナだけだ」
「でもそれ僕が最初に見つけたんだぞ!?」


ダインが聖剣に装着していた魔水晶を諦めきれずに駄々をこねるが、今後の事を考えると聖剣はレナが所持していた方が安全のため、仕方なくレナはダインに「紅蓮」を渡す。


「じゃあ、ダインには代わりにこれを上げるよ。七大魔剣の紅蓮は聞いたことがあるでしょ?」
「え、マジで!?ほ、本当にいいのか?後で返せとか言われても返さないからな!?」
「別にそんな事言わないよ。というか、それでいいの?」
「う~ん……七大魔剣か、僕には扱いにくそうだけど値打ち物なのは間違いないしな……」
「売る気なのか!?」


紅蓮を受け取ったダインは難しい表情を浮かべ、自分が装備するべきか売却するべきか本気で悩む。その様子を見てゴンゾウが呆れた声を上げるが、ダインの場合は剣士ではないので刀を受け取っても扱いに困るのは無理はない。その間にレナは空間魔法を発動させてレーヴァティンを異空間に回収すると、コトミンが聖剣の熱に当てられたのか気分が悪そうに頭を抑えている事に気付く。


「コトミン、大丈夫?」
「……ちょっと頭が痛い、さっきの炎のせいで身体が熱くなった」
「不味いな……ほら、俺の水筒を飲みなよ」
「ありがとう……あ、関節キス?」
「いちいちボケなくていいから早く飲め」


スラミンやヒトミンが不在のせいでコトミンの肉体は熱を帯びやすくなり、陸上では定期的に水分を補給しないと彼女の身体が持たない。自分の水筒を渡しながらレナはコトミンのために早々に遺跡から離れて川が流れている場所へ向かう事を決める。


「よし、ここをすぐに出よう。コトミンは川まで歩いて戻れる?」
「大丈夫……と思う。いざという時はレナにおんぶしてもらう」
「俺よりゴンちゃんに抱えてもらった方が安全だと思うけど……」
「レナが良い……ほら、おんぶして」
「うわっ!?」


自分に構えとばかりにコトミンはレナの背中に飛びつき、その豊満な乳房を押し付ける。背中の感触に気づきながらもレナは仕方なくコトミンを背負い、二人に振り返る。


「急いでここを出よう。ダインを襲ってきた石像が他にもいるかもしれないし……」
「そうだな」
「やっとここを出られるのか……あ、でも少し寄り道しちゃ駄目かな?どうしてもレナ達にもあの場所を見て貰いたいんだけど……」
「さっき話していた広場の事?」


ダインが立ち去る前に他の人間にも自分が発見したという謎の広場を見て欲しいと願い、レナはコトミンに顔を向けると彼女は問題ないとばかりに頷き、遺跡を立ち去る前に最後にダインが発見した広場を確認する事が決まった。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。