上 下
475 / 2,083
放浪編

思わぬ再会 〈ダイン〉

しおりを挟む
「ぐぐぐっ……!!駄目だ、押しても引いてもびくともしないな……」
「ゴンちゃんの力でも開かないか……形状高速変化を使えば無理にでも開けそうだけど、結構魔力を使いそうだな。上から忍び込む?」
「止めておいた方がいい。多分、入れない」


ゴンゾウの怪力でも扉は開く事は出来ず、レナは防壁を乗り越える事が出来ないのかと考えたがコトミンが止める。コトミンは地面に落ちている小石を拾い上げると、防壁の上空に向けて投げつけた瞬間、小石が防壁を超えようとした瞬間に防壁に設置された結果石が発動して緑色の防護壁を展開して小石を弾く。


「私が中に居たときに何度か空から鳥が入ってこようとしたけど、今の様に結界に弾かれた。だから上から入るのは無理だと思う」
「なるほど、壁を破壊するのも難しそうだし、やっぱり東門から入るしかないのか」
「仕方ないな」


防壁を飛び越えられない以上は東門から入るしかないと判断したレナ達は移動を開始すると、途中で魔物と全く遭遇しない事に違和感を抱く。森を移動するときに何度か魔獣は見かけたが交戦には至っておらず、何故か魔物達が遺跡の周囲には近寄らない事に気付く。

防壁を確認した限りでは結果石は施されているが魔物だけが嫌う異臭を放つ「腐敗石」の類は取り付けられていないにも関わらずに魔物が防壁付近に近寄らない事に疑問を抱き、レナは深淵の森に存在した遺跡にも魔物があまり見かけなかった事を思い出す。

深淵の森では「戦人形」とレナ達が呼ぶ特殊なゴーレムが遺跡の守護をしていたので魔物は近寄らなかったが、こちらにも同様に遺跡を守護する存在がいる可能性もある。しかし、先に遺跡に入ったコトミンはそれらしい存在を確認していない事が気になり、もしかしたらレナ達が知らないだけで魔物が近寄らない仕掛けが施されているのかもしれない。


「レナ、東門はここだぞ?」
「あ、ごめん……考え事していた」


森の様子を観察していたせいか危うく東門を通り過ぎようとしたレナはゴンゾウの言葉に振り返り、開け放たれた大きな門を確認する。こちらの門の扉は最初から開け放たれており、コトミンはこちらから脱出したという。


「ここの門の材質もアダマンタイトみたいだな……希少金属のはずなのに門の材料に使うあたり、昔は手軽に手に入る金属だったのかな?」
「前のように持って帰るのか?」
「う~ん……アダマンタイトは地味に重いからな」


伝説の武器の素材としても利用される希少金属「アダマンタイト」は非常に硬く、耐久性が高い金属である。だが、反面にかなりの重量が存在するので武器として加工しても扱いにくいという難点があり、空間魔法で異空間に収めるとしても制限重量が圧迫されてしまう。


「今回は別にいいかな……あ、ゴンちゃんの闘拳を作ってあげようか?」
「アダマンタイトの闘拳か……」
「待って……何か聞こえる」


アダマンタイト製の闘拳が欲しいかを尋ねられたゴンゾウは悩むが、彼が返事を行う前にコトミンが何かに気付いたように扉を潜り抜けて中に入る。2人も後に続くと、何処からか人間の声が聞こえてくる事に気付いた。



――けてぇっ……!!



防壁の内部は以前に深淵の森に訪れた遺跡と同じ建築技術で構成された建物が広がり、ここが勇者が関与している遺跡である事を確信する一方でレナは何処からか聞こえてくる人間の声に目を見開く。


「ねえ、この声って何か聞きなれてる気がしない?」
「ああ……何だか久しぶりに感じるな」
「あっちの方から聞こえてくる」


妙に聞きなれた声にレナ達は顔色を変えて悲鳴のした方向に視線を向けると、そこには背中に大きな包みを抱えて全力疾走でこちらに向かう青年の姿が存在した。


「うおおおおっ!!誰か助けてくれぇえええっ!?」
「ダイン!?」


レナ達の元へ駆け抜けてくるのは同じ冒険者集団の自称一流の闇魔導士の「ダイン」で間違いなく、背中に大量の魔石を包んだ布袋を抱えながら駆け抜けるダインはレナ達の存在に気付いて笑顔を浮かべた。


「あれ!?そこにいるのってレナか!?助かった、早くこいつを何とかしてくれぇっ!!」
「こいつって……何だあれ!?」
「ゴーレム……なのか!?」
「おおうっ……凄い光景」


ダインの背後から土煙が舞い上がり、彼の背後から全身が灰色の甲冑の騎士の姿をした「石像」が追ってくる事に気付いたレナ達は戦闘体勢に入る。何が起きているのかは不明だが、ダインを救うためにレナは退魔刀を握り締めて駆け抜ける。


「頭を下げろダイン!!」
「ちょ、待っ……うわぁあああっ!?」
『ッ……!!』


横薙ぎに振り払われた退魔刀の刃をダインは身体を伏せて回避すると、背後に迫っていた石像の騎士は左腕に装着していた大盾を構て刃を受け止め、正面から耐え抜く。例えオーガであろうと切り裂くレナの斬撃を受け切った石像に対して全員が驚き、その一方でレナは大剣から伝わる感触に違和感を覚えた。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。