466 / 2,083
放浪編
領主の企み
しおりを挟む
――結局、領主に押し切られる形でレナ達は今晩は領主の屋敷に宿泊する事が決まり、3人は別々の部屋へ案内される。一応は部屋は隣同士だが、何故か部屋の中には窓の類は存在せず、扉も内側からは鍵が掛けられない設計になっていた。
「完全に怪しいなあの領主……しょうがない、今日はゴンちゃんとコトミンは俺の部屋に来てもらうか」
別に部屋を三人分用意させてもらっても同じ部屋で寝泊まりする事を咎められる謂れはなく、他の二人を夜が迎える前に招くことを決めたレナは部屋の様子を伺う。何処かに覗き穴でもあるのではないかと警戒しながら室内を見渡すと、壁の方に肖像画が立てかけられている事に気付く。
「あの領主の肖像画か……ん?目元の部分がおかしいな……」
観察眼の技能を発動させてレナは肖像画の様子を調べると、肖像画の目元の部分がくりぬかれている事に気付き、慎重に穴の中を覗くと隣の部屋の様子が確認出来た。どうやらこの穴を通して部屋の様子を伺っていたらしく、丁度良く隣の部屋ではゴンゾウが鍛錬に励んでいる様子が伺えた。
『45、46、47……』
「……何で俺はゴンちゃんの部屋を覗かないといけないんだ?」
最初の内はゴンゾウの鍛錬を観察していたが、冷静に考えれば別に覗く必要はなく、ゴンゾウに事情を伝えるのが先決である。肖像画から離れるとレナは隣室のゴンゾウの元へ向かおうとした時、不意にコトミンの事が気になる。
「待てよ、ここから隣の部屋が覗けるという事はコトミンの部屋の方も見えるのかな?」
肖像画が取り付けられている壁の反対側に視線を向けると、予想通りというべきか今度はこの領主の息子と思われる肥え太った男性の肖像画が立てかけられており、こちらの方も目元の部分に不自然な穴が存在した。どうせならばこちらの方から先に気づいていればコトミンの部屋を覗けたのだが、流石に女子がいる部屋を覗くような行為は出来ない。
しかし、隣室の部屋の様子を伺える事が発覚した以上、必然的にゴンゾウとコトミンはレナの部屋と反対側の部屋にも覗き穴が存在する可能性が高く、既に監視されている恐れもある。もしもレナが不用意に自分の部屋に招こうとすれば隣室で覗いていた相手にも知られてしまい、仮に二人を呼び寄せても結局は左右の部屋から覗かれる事に変わりはない。
(参ったな、これだと二人に事情を伝えるのは難しいな……仕方ない、ここは俺一人で動くか)
覗き穴を仕込んでいる時点で領主が怪しい事は間違いなく、報酬を出し渋っている時点で自分達を嵌めようとしていたと判断し、二人に相談せずにレナは屋敷の中を探索する事にした。
(どうやら俺は見張られていないみたいだし、昼間に襲ってくる可能性も低いだろうから二人にも黙っておくか)
部屋を見張られている可能性がある以上はゴンゾウとコトミンには相談は出来ず、レナは暗殺者の技能を利用して部屋の外へ抜け出す。通路側に人がいない事を確認した後、使用人に見つからないように気を配りながらレナは探索を行う。
領主の屋敷というだけはあって部屋の数も多く、1つ1つ調べていくと日が暮れてしまうので手短に部屋の様子を確認しながら領主の部屋を探す。鍵が施されている部屋だろうと錬金術師の能力を駆使すればどんな鍵でも開錠出来るため、誰にも見つからないように気を配りながらレナは屋敷の中を移動する。
(ここが領主の自室っぽいな……ここだけ扉の装飾が妙に豪華だ)
1階に戻ったレナは最初に招かれた客室からそれほど離れていない場所に存在した領主の自室と思われる扉を発見し、まずは気配感知と魔力感知の能力を発動させて部屋の中に人間が存在しないのか確認する。誰も居ないのか感知に反応がない事を確認すると、扉に手を伸ばして形状高速変化の能力を応用して鍵を開く。
「開けごま……何だここ?」
だが、領主の自室だと思われた部屋の中は予想よりも非常に狭く、家具の類も置かれていない部屋だった。壁には肖像画どころか窓さえも存在せず、部屋の四方に蝋燭が取り付けられているだけの殺風景な部屋だった。
「倉庫?」
部屋の中に入って早々にレナは足元に違和感を感じ取り、観察眼の能力を発動させると床が外れる事が発覚し、壁に設置されている燭台の1つに指紋が残っていた。レナは指紋が張り付いている燭台に手を伸ばすと、燭台が時計回りに動かす事が出来る事に気付く。
「なるほど、隠し通路か……凝った仕掛けだな」
燭台を動かすと床の一部が盛り上がり、やがて地下へ続く階段が露わになる。階段を確認すると先客が存在するのか比較的に新しい靴の跡が残っており、それを確認したレナは警戒心を抱きながらも階段を下りる。
(鬼が出るか蛇が出るか……少し楽しくなってきたな)
階段を下りながらレナは自分が暗殺者になりきった気分に陥るが、そんな気分も数分後には消えてなくなる事をこの時のレナには予想さえ出来なかった――
「完全に怪しいなあの領主……しょうがない、今日はゴンちゃんとコトミンは俺の部屋に来てもらうか」
別に部屋を三人分用意させてもらっても同じ部屋で寝泊まりする事を咎められる謂れはなく、他の二人を夜が迎える前に招くことを決めたレナは部屋の様子を伺う。何処かに覗き穴でもあるのではないかと警戒しながら室内を見渡すと、壁の方に肖像画が立てかけられている事に気付く。
「あの領主の肖像画か……ん?目元の部分がおかしいな……」
観察眼の技能を発動させてレナは肖像画の様子を調べると、肖像画の目元の部分がくりぬかれている事に気付き、慎重に穴の中を覗くと隣の部屋の様子が確認出来た。どうやらこの穴を通して部屋の様子を伺っていたらしく、丁度良く隣の部屋ではゴンゾウが鍛錬に励んでいる様子が伺えた。
『45、46、47……』
「……何で俺はゴンちゃんの部屋を覗かないといけないんだ?」
最初の内はゴンゾウの鍛錬を観察していたが、冷静に考えれば別に覗く必要はなく、ゴンゾウに事情を伝えるのが先決である。肖像画から離れるとレナは隣室のゴンゾウの元へ向かおうとした時、不意にコトミンの事が気になる。
「待てよ、ここから隣の部屋が覗けるという事はコトミンの部屋の方も見えるのかな?」
肖像画が取り付けられている壁の反対側に視線を向けると、予想通りというべきか今度はこの領主の息子と思われる肥え太った男性の肖像画が立てかけられており、こちらの方も目元の部分に不自然な穴が存在した。どうせならばこちらの方から先に気づいていればコトミンの部屋を覗けたのだが、流石に女子がいる部屋を覗くような行為は出来ない。
しかし、隣室の部屋の様子を伺える事が発覚した以上、必然的にゴンゾウとコトミンはレナの部屋と反対側の部屋にも覗き穴が存在する可能性が高く、既に監視されている恐れもある。もしもレナが不用意に自分の部屋に招こうとすれば隣室で覗いていた相手にも知られてしまい、仮に二人を呼び寄せても結局は左右の部屋から覗かれる事に変わりはない。
(参ったな、これだと二人に事情を伝えるのは難しいな……仕方ない、ここは俺一人で動くか)
覗き穴を仕込んでいる時点で領主が怪しい事は間違いなく、報酬を出し渋っている時点で自分達を嵌めようとしていたと判断し、二人に相談せずにレナは屋敷の中を探索する事にした。
(どうやら俺は見張られていないみたいだし、昼間に襲ってくる可能性も低いだろうから二人にも黙っておくか)
部屋を見張られている可能性がある以上はゴンゾウとコトミンには相談は出来ず、レナは暗殺者の技能を利用して部屋の外へ抜け出す。通路側に人がいない事を確認した後、使用人に見つからないように気を配りながらレナは探索を行う。
領主の屋敷というだけはあって部屋の数も多く、1つ1つ調べていくと日が暮れてしまうので手短に部屋の様子を確認しながら領主の部屋を探す。鍵が施されている部屋だろうと錬金術師の能力を駆使すればどんな鍵でも開錠出来るため、誰にも見つからないように気を配りながらレナは屋敷の中を移動する。
(ここが領主の自室っぽいな……ここだけ扉の装飾が妙に豪華だ)
1階に戻ったレナは最初に招かれた客室からそれほど離れていない場所に存在した領主の自室と思われる扉を発見し、まずは気配感知と魔力感知の能力を発動させて部屋の中に人間が存在しないのか確認する。誰も居ないのか感知に反応がない事を確認すると、扉に手を伸ばして形状高速変化の能力を応用して鍵を開く。
「開けごま……何だここ?」
だが、領主の自室だと思われた部屋の中は予想よりも非常に狭く、家具の類も置かれていない部屋だった。壁には肖像画どころか窓さえも存在せず、部屋の四方に蝋燭が取り付けられているだけの殺風景な部屋だった。
「倉庫?」
部屋の中に入って早々にレナは足元に違和感を感じ取り、観察眼の能力を発動させると床が外れる事が発覚し、壁に設置されている燭台の1つに指紋が残っていた。レナは指紋が張り付いている燭台に手を伸ばすと、燭台が時計回りに動かす事が出来る事に気付く。
「なるほど、隠し通路か……凝った仕掛けだな」
燭台を動かすと床の一部が盛り上がり、やがて地下へ続く階段が露わになる。階段を確認すると先客が存在するのか比較的に新しい靴の跡が残っており、それを確認したレナは警戒心を抱きながらも階段を下りる。
(鬼が出るか蛇が出るか……少し楽しくなってきたな)
階段を下りながらレナは自分が暗殺者になりきった気分に陥るが、そんな気分も数分後には消えてなくなる事をこの時のレナには予想さえ出来なかった――
0
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
魔法使いじゃなくて魔弓使いです
カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです
魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。
「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」
「ええっ!?」
いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。
「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」
攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。