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放浪編
闘拳の行方
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「……ゴンゾウさん、もしかしたら貴方の探し物が見つかったかもしれません」
「何?どういう事だ?」
探し物という言葉にゴンゾウの頭の中に「金銀の闘拳」が思い浮かび、先にネズミに尋ねたときは彼も闘拳が何処に存在するのかは分からないと答えたが、ネズミは掌に乗せたマウスを見せつけて説明を行う。
「僕は魔物使いの職業なんですが、レベルの問題で従えさせられる魔物は小鼠系の魔獣だけなんです。その代わりに僕は数十匹の小鼠を従える事が出来ます」
「そ、そんなにいるのか……」
「情報屋の僕がどのように情報を収集しているのかというと、この監獄都市のあらゆる場所に小鼠を放逐して定期的に情報を集めているんです。僕は小鼠と触れる事で「記憶」を共有化させて小鼠が見た物や聞いた物を知る事が出来ます」
「なるほど、だからネズミか……」
子供であるネズミがどのような方法で情報を集めているのか気になっていたゴンゾウは説明を聞いて納得し、彼の渾名の由来も判明する。ネズミは名前通りに大量のネズミを操り、彼等を利用して監獄都市内の情報を集める事からネズミと呼ばれるようになったという。
「普通の魔物使いは強力な魔物を従えさせようとしますが、僕のように情報を集めるなら身体が大きい魔獣よりも小さくて素早い小鼠の方が便利ですけどね」
「という事は別に名前があるのか?」
「ええ、まあ……でも、残念ながら本名は気に入らないので普通にネズミと呼んでください。そっちの方が僕も馴染みますし」
「そ、そうか……」
鼠は自分の本名に対してコンプレックスでも抱いているのか、あくまでも「ネズミ」という渾名を呼ぶように伝えると本題に戻る。ネズミが呼び寄せた「マウス」という個体の小鼠の記憶によると、ゴンゾウが捜索している「金銀の闘拳」を装備する人物を見かけたらしい。
「このマウスによると闘技区の方でゴンゾウさんの闘拳を装備している人物を発見したようです」
「誰だ?巨人族の囚人か?」
子供とはいえ巨人族であるゴンゾウの闘拳を装備出来るのは限られており、ゴンゾウは自分以外の巨人族の囚人や兵士が装着しているのかと考えたが、ネズミは冷や汗を流しながら装着している人物の正体を伝えた。
「看守……ミノタウロスと伝えれば分かりやすいですか?」
「……あいつが?」
――ゴンゾウの脳裏にミノタウロスの顔が思い浮かび、無意識に拳を握り締めてしまう。昨日、ゴンゾウが監獄都市内に転移したとき、実はゴンゾウは兵士達と交戦したときに看守であるミノタウロスとも戦っていた。彼の一撃を受けて気絶してしまい、その間にゴンゾウは装備品を剥ぎ取られ、親友からの贈り物である大切な闘拳も奪われた事を思い出す。
「そうか……今は奴が持っているのか」
「よりにもよってあの牛男ですか……取り返すのは難しいですね。看守長を覗けばこの監獄都市最強の看守だと噂される程に厄介な相手ですよ」
「そこまで強いのか?」
「はい。看守長が起きていない間は基本的にあの牛男が都市の管理を任されています。昼間に見かけたサイクロプスを覚えてますか?あの看守が暴走したとき、いつも抑えつけるのがあの牛男です」
「あいつをか?」
サイクロプスはオーガを上回る怪力とゴーレムよりも頑丈な鱗で覆われた魔人族であり、興奮して暴れ狂うと小さな村なら壊滅出来る程に恐ろしい存在である。しかし、そのサイクロプスをミノタウロスは抑えつける程の戦闘力を誇るらしく、看守長を覗けば都市最強の存在と言っても過言ではない。
実際に夜の間しか動けない看守長の代わりに昼間はミノタウロスが囚人達の監視を行い、数千人の囚人達を管理している事になる。実際に数々の修羅場を潜り抜けたゴンゾウさえも一撃で敗れており、まともに戦えば今の彼では決して勝てる相手ではない。
(レナに奴に闘拳が奪われた事を伝えるか……いや、駄目だ。何としてもあれは俺の手で取り返さなければ……!!)
ゴンゾウがレナに協力を求めればミノタウロスから闘拳を取り戻す方法を共に考えてくれるだろうが、元々は闘拳が奪われたのはゴンゾウがミノタウロスに敗北したからであり、自分の不始末は自分で解決するためにゴンゾウはネズミに願う。
「ネズミ……今回の話はレナには話さないでくれ」
「え、でも……」
「頼む」
ネズミが驚いた表情を浮かべてゴンゾウに顔を向けると、既に彼は頭を下げた状態で床に膝を着いていた。ゴンゾウの行動にネズミは呆気に取られ、しばらくすると溜息を吐き出しながら承諾する。
「はあ……分かりましたよ。何を考えているか知りませんけど、この件はレナさんには黙っておきます」
「すまない……だが、今回は俺一人で解決しなければ意味はないんだ」
「そこまで言うなら何も言いませんよ……一人で大丈夫ですか?」
「ああ、何とかしてみせる」
「ただいま~……」
ミノタウロスから闘拳を一人で取り返す事をゴンゾウが改めて決意したとき、丁度良く教室の窓から疲れた表情のレナが戻って来た。
「何?どういう事だ?」
探し物という言葉にゴンゾウの頭の中に「金銀の闘拳」が思い浮かび、先にネズミに尋ねたときは彼も闘拳が何処に存在するのかは分からないと答えたが、ネズミは掌に乗せたマウスを見せつけて説明を行う。
「僕は魔物使いの職業なんですが、レベルの問題で従えさせられる魔物は小鼠系の魔獣だけなんです。その代わりに僕は数十匹の小鼠を従える事が出来ます」
「そ、そんなにいるのか……」
「情報屋の僕がどのように情報を収集しているのかというと、この監獄都市のあらゆる場所に小鼠を放逐して定期的に情報を集めているんです。僕は小鼠と触れる事で「記憶」を共有化させて小鼠が見た物や聞いた物を知る事が出来ます」
「なるほど、だからネズミか……」
子供であるネズミがどのような方法で情報を集めているのか気になっていたゴンゾウは説明を聞いて納得し、彼の渾名の由来も判明する。ネズミは名前通りに大量のネズミを操り、彼等を利用して監獄都市内の情報を集める事からネズミと呼ばれるようになったという。
「普通の魔物使いは強力な魔物を従えさせようとしますが、僕のように情報を集めるなら身体が大きい魔獣よりも小さくて素早い小鼠の方が便利ですけどね」
「という事は別に名前があるのか?」
「ええ、まあ……でも、残念ながら本名は気に入らないので普通にネズミと呼んでください。そっちの方が僕も馴染みますし」
「そ、そうか……」
鼠は自分の本名に対してコンプレックスでも抱いているのか、あくまでも「ネズミ」という渾名を呼ぶように伝えると本題に戻る。ネズミが呼び寄せた「マウス」という個体の小鼠の記憶によると、ゴンゾウが捜索している「金銀の闘拳」を装備する人物を見かけたらしい。
「このマウスによると闘技区の方でゴンゾウさんの闘拳を装備している人物を発見したようです」
「誰だ?巨人族の囚人か?」
子供とはいえ巨人族であるゴンゾウの闘拳を装備出来るのは限られており、ゴンゾウは自分以外の巨人族の囚人や兵士が装着しているのかと考えたが、ネズミは冷や汗を流しながら装着している人物の正体を伝えた。
「看守……ミノタウロスと伝えれば分かりやすいですか?」
「……あいつが?」
――ゴンゾウの脳裏にミノタウロスの顔が思い浮かび、無意識に拳を握り締めてしまう。昨日、ゴンゾウが監獄都市内に転移したとき、実はゴンゾウは兵士達と交戦したときに看守であるミノタウロスとも戦っていた。彼の一撃を受けて気絶してしまい、その間にゴンゾウは装備品を剥ぎ取られ、親友からの贈り物である大切な闘拳も奪われた事を思い出す。
「そうか……今は奴が持っているのか」
「よりにもよってあの牛男ですか……取り返すのは難しいですね。看守長を覗けばこの監獄都市最強の看守だと噂される程に厄介な相手ですよ」
「そこまで強いのか?」
「はい。看守長が起きていない間は基本的にあの牛男が都市の管理を任されています。昼間に見かけたサイクロプスを覚えてますか?あの看守が暴走したとき、いつも抑えつけるのがあの牛男です」
「あいつをか?」
サイクロプスはオーガを上回る怪力とゴーレムよりも頑丈な鱗で覆われた魔人族であり、興奮して暴れ狂うと小さな村なら壊滅出来る程に恐ろしい存在である。しかし、そのサイクロプスをミノタウロスは抑えつける程の戦闘力を誇るらしく、看守長を覗けば都市最強の存在と言っても過言ではない。
実際に夜の間しか動けない看守長の代わりに昼間はミノタウロスが囚人達の監視を行い、数千人の囚人達を管理している事になる。実際に数々の修羅場を潜り抜けたゴンゾウさえも一撃で敗れており、まともに戦えば今の彼では決して勝てる相手ではない。
(レナに奴に闘拳が奪われた事を伝えるか……いや、駄目だ。何としてもあれは俺の手で取り返さなければ……!!)
ゴンゾウがレナに協力を求めればミノタウロスから闘拳を取り戻す方法を共に考えてくれるだろうが、元々は闘拳が奪われたのはゴンゾウがミノタウロスに敗北したからであり、自分の不始末は自分で解決するためにゴンゾウはネズミに願う。
「ネズミ……今回の話はレナには話さないでくれ」
「え、でも……」
「頼む」
ネズミが驚いた表情を浮かべてゴンゾウに顔を向けると、既に彼は頭を下げた状態で床に膝を着いていた。ゴンゾウの行動にネズミは呆気に取られ、しばらくすると溜息を吐き出しながら承諾する。
「はあ……分かりましたよ。何を考えているか知りませんけど、この件はレナさんには黙っておきます」
「すまない……だが、今回は俺一人で解決しなければ意味はないんだ」
「そこまで言うなら何も言いませんよ……一人で大丈夫ですか?」
「ああ、何とかしてみせる」
「ただいま~……」
ミノタウロスから闘拳を一人で取り返す事をゴンゾウが改めて決意したとき、丁度良く教室の窓から疲れた表情のレナが戻って来た。
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