426 / 2,083
放浪編
再び女装
しおりを挟む
「ネズミ、ここは衣服の替えとかも販売しているのか?」
「ええ、宿舎の購買で販売してますよ。銀貨1枚で3人分の衣服は手に入ります」
「ここ、購買まであるの?」
「大抵の物は揃ってますよ。ああ、だけど食料品は売ってませんけど……」
毎日同じ衣服を着込めば汚れて感染病を引き起こす危険性もあるため、囚人は新しい衣服を購入する事も多い。一応は洗濯出来る場所もあるが、数千人の囚人全員が洗濯を行えるわけではないので面倒な人間は衣服を破棄して新しい衣服を購入する。あまりに汚い衣服を着込んでいると兵士に注意される事もあり、場合によっては仕事を行う事も認められない。
「そういえばここって身体を洗う場所とかあるの?風呂は?」
「入浴料を支払えば宿舎の地下に築かれた風呂場に入れますよ。まあ、大抵の人間は井戸水で身体を水洗いする程度ですけど……それと週に一度は無料で風呂場が開放される日もあります」
「へえ……衛生管理も意外としっかりしてるんだ」
「その代わりに入浴料は銀貨1枚、入浴時間は15分しか許されていません。ちなみに入れる時間帯は決まっているので途中から参加したり、抜け出す事は許されません」
「シビアだな……」
15分では身体を洗ってゆっくりとお湯に浸かる事も難しく、疲れが抜け切る前に追い出されるため、入浴料を多めに支払って入浴時間を延長する人間も少なくはない。
「ネズミ、俺達が寝泊まりする宿舎の地下に風呂場があるという事は女性の囚人はどうしてるんだ?同じように地下に風呂場があるのか?」
「いえ、女囚館の2階には風呂場が存在するんです。まあ、あれを温泉というのかは分かりませんけど……女性の囚人の場合は毎日の入浴を義務付けられています。衣服に関しても自分で洗濯して洗っているようですね」
「二階の風呂場……もしかしてプールの事か?」
「ぷーる?」
ネズミの話を聞いたレナは女囚館を振り返り、建物の二階に垣間見えるプールを確認して女性囚人達がプールを温泉替わりに利用している事に気づく。恐らくは普通のプールではなく、温水プールなのだろう。それでもプールを銭湯代わりに扱われている事に苦笑いを浮かべる。
(まあ、この世界ではプールなんて概念はないだろうし、普通の人間からしたらわざわざ泳ぐためにあんなバカでかい水槽みたいな施設を作るなんて発想は浮かばないのかも)
この都市は地球の出身である人間が作り出した事は明らかなため、彼等の趣向で作り出された施設もこの世界の人間には理解しがたい物なのかもしれない。実際に学び舎である校舎や体育館が囚人の宿舎代わりに利用されている時点でレナも気づくべき事だった。
(そういえば前にアイリスが行ってたな。俺が錬金術師の能力を活用出来るのは地球での知識を持っているからだって……ここに都市を作った人間がこの状況を見たらどう思うかな)
もしも校舎を作り出したに人間がまだ生きていた場合、自分達が築いた建物が本来とは全く別の用途で利用されていると知ったらどのような反応をするのかレナは気になったが、今はそんな事を考えても仕方ないので本来の目的を思い出してネズミに質問する。
「購買では女性用の衣服も販売してる?」
「女性用……ですか?いえ、流石に売ってないと思いますよ。女囚館の方にも購買があるのでそちらでは販売しているでしょうけど……」
「じゃあ、他の方法で女性の囚人服を手に入れる方法はある?」
「う~ん……」
「何をする気だレナ?」
レナの質問にネズミは思い悩み、ゴンゾウはレナの目的が分からずに尋ねると、面倒そうに髪をかき上げながらレナは女囚館を指差す。
「入る方法を見つけたから、今度は中に入った後に怪しまれないように探す方法を試す……つまり、女装して怪しまれないように忍び込む」
「……本気か?」
「これはまた……とんでもない事を言い出しましたね」
思いもよらぬレナの提案にゴンゾウとネズミは驚愕と呆然が入り混じった表情を浮かべるが、他に忍び込む策は思い浮かばず、再びレナは自ら女装して危険地帯へ忍び込む事を決めた――
――それから1時間後、ネズミの案内の下で監獄都市内の廃棄場に移動したレナ達は焼却処分される前の女性囚人の囚人服を発見し、臭いはするが比較的に綺麗な服を見つけ出す。
「よし、これならサイズも合うかな……それにしても酷い臭いだな」
「我慢してくださいよ。毎日数千人の囚人のゴミが集まる場所なんですから……じゃあ、清掃員に見つかる前にずらかりましょう」
「待ってくれ、俺の服もここに捨てられていたようだ……酷い状態だが、洗えば着られなくもない」
囚人服を探す際にゴンゾウがここに転移する際に身に着けていた衣服も発見し、この状態では汚れと臭いが酷くて着られないが洗えば再び身に着ける事も出来そうだった。目当ての物を見つけたレナ達は早々に廃棄場を立ち去ると、まずは女囚館に向かう前に身体の汚れと悪臭を払う必要があった。
「ええ、宿舎の購買で販売してますよ。銀貨1枚で3人分の衣服は手に入ります」
「ここ、購買まであるの?」
「大抵の物は揃ってますよ。ああ、だけど食料品は売ってませんけど……」
毎日同じ衣服を着込めば汚れて感染病を引き起こす危険性もあるため、囚人は新しい衣服を購入する事も多い。一応は洗濯出来る場所もあるが、数千人の囚人全員が洗濯を行えるわけではないので面倒な人間は衣服を破棄して新しい衣服を購入する。あまりに汚い衣服を着込んでいると兵士に注意される事もあり、場合によっては仕事を行う事も認められない。
「そういえばここって身体を洗う場所とかあるの?風呂は?」
「入浴料を支払えば宿舎の地下に築かれた風呂場に入れますよ。まあ、大抵の人間は井戸水で身体を水洗いする程度ですけど……それと週に一度は無料で風呂場が開放される日もあります」
「へえ……衛生管理も意外としっかりしてるんだ」
「その代わりに入浴料は銀貨1枚、入浴時間は15分しか許されていません。ちなみに入れる時間帯は決まっているので途中から参加したり、抜け出す事は許されません」
「シビアだな……」
15分では身体を洗ってゆっくりとお湯に浸かる事も難しく、疲れが抜け切る前に追い出されるため、入浴料を多めに支払って入浴時間を延長する人間も少なくはない。
「ネズミ、俺達が寝泊まりする宿舎の地下に風呂場があるという事は女性の囚人はどうしてるんだ?同じように地下に風呂場があるのか?」
「いえ、女囚館の2階には風呂場が存在するんです。まあ、あれを温泉というのかは分かりませんけど……女性の囚人の場合は毎日の入浴を義務付けられています。衣服に関しても自分で洗濯して洗っているようですね」
「二階の風呂場……もしかしてプールの事か?」
「ぷーる?」
ネズミの話を聞いたレナは女囚館を振り返り、建物の二階に垣間見えるプールを確認して女性囚人達がプールを温泉替わりに利用している事に気づく。恐らくは普通のプールではなく、温水プールなのだろう。それでもプールを銭湯代わりに扱われている事に苦笑いを浮かべる。
(まあ、この世界ではプールなんて概念はないだろうし、普通の人間からしたらわざわざ泳ぐためにあんなバカでかい水槽みたいな施設を作るなんて発想は浮かばないのかも)
この都市は地球の出身である人間が作り出した事は明らかなため、彼等の趣向で作り出された施設もこの世界の人間には理解しがたい物なのかもしれない。実際に学び舎である校舎や体育館が囚人の宿舎代わりに利用されている時点でレナも気づくべき事だった。
(そういえば前にアイリスが行ってたな。俺が錬金術師の能力を活用出来るのは地球での知識を持っているからだって……ここに都市を作った人間がこの状況を見たらどう思うかな)
もしも校舎を作り出したに人間がまだ生きていた場合、自分達が築いた建物が本来とは全く別の用途で利用されていると知ったらどのような反応をするのかレナは気になったが、今はそんな事を考えても仕方ないので本来の目的を思い出してネズミに質問する。
「購買では女性用の衣服も販売してる?」
「女性用……ですか?いえ、流石に売ってないと思いますよ。女囚館の方にも購買があるのでそちらでは販売しているでしょうけど……」
「じゃあ、他の方法で女性の囚人服を手に入れる方法はある?」
「う~ん……」
「何をする気だレナ?」
レナの質問にネズミは思い悩み、ゴンゾウはレナの目的が分からずに尋ねると、面倒そうに髪をかき上げながらレナは女囚館を指差す。
「入る方法を見つけたから、今度は中に入った後に怪しまれないように探す方法を試す……つまり、女装して怪しまれないように忍び込む」
「……本気か?」
「これはまた……とんでもない事を言い出しましたね」
思いもよらぬレナの提案にゴンゾウとネズミは驚愕と呆然が入り混じった表情を浮かべるが、他に忍び込む策は思い浮かばず、再びレナは自ら女装して危険地帯へ忍び込む事を決めた――
――それから1時間後、ネズミの案内の下で監獄都市内の廃棄場に移動したレナ達は焼却処分される前の女性囚人の囚人服を発見し、臭いはするが比較的に綺麗な服を見つけ出す。
「よし、これならサイズも合うかな……それにしても酷い臭いだな」
「我慢してくださいよ。毎日数千人の囚人のゴミが集まる場所なんですから……じゃあ、清掃員に見つかる前にずらかりましょう」
「待ってくれ、俺の服もここに捨てられていたようだ……酷い状態だが、洗えば着られなくもない」
囚人服を探す際にゴンゾウがここに転移する際に身に着けていた衣服も発見し、この状態では汚れと臭いが酷くて着られないが洗えば再び身に着ける事も出来そうだった。目当ての物を見つけたレナ達は早々に廃棄場を立ち去ると、まずは女囚館に向かう前に身体の汚れと悪臭を払う必要があった。
0
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
魔法使いじゃなくて魔弓使いです
カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです
魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。
「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」
「ええっ!?」
いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。
「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」
攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。