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放浪編

装備の奪還のために

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「この監獄都市に送り込まれるのは死刑が確定した極悪人の犯罪者のみ……毎年、何百人もの囚人が送り込まれています。当然ですがこの都市を脱走しようしたり、あるいは看守に逆らおうとする人間も居ました。しかし、一度たりとも反抗が成功した事はありません」
「それが看守長のお陰だと?」
「ええ、正確に言えば看守長と他4人の看守の存在のお陰です。普通の監獄と違い、ここでは看守が囚人を殺しても罪になりません」
「何?それは……許される事なのか?」
「そもそもここにいる全員が終身刑を下された人間の集まりですからね。殺されても何も問題はないんですよ。毎年に何度も囚人が反旗を翻しては看守に鎮圧されては死体の後処理を残りの囚人が行う……そんな事を何度も繰り返せばこの都市に住む期間が長い人間ほど反抗なんて無意味な事だと理解するんです」


ネズミの話では過去に囚人が引き起こした反乱行動も5人の看守が鎮圧したらしく、毎年何百人もの囚人が反乱を起こしては看守に処分され、看守長に至っては嬉々として囚人を虐殺したという。


「吸血鬼である看守長の殺し方は非常に残酷ですよ。拘束した囚人を逆さ吊りにして手首を切り裂き、その下にバケツを置くんです。囚人が暴れないように鎖で拘束させて、後は手首から流れ落ちる血液をバケツに貯める。当然ですが血が流れる度に囚人の状態は悪化してやがては死に至ります……しかもそれを1人ずつ順番に行うんですよ?処刑が確定した人間達の目の前で死刑を繰り返し、自分の番が訪れるまで他の囚人の死に様を見せつけるんです」
「最悪だな……」
「悪趣味な……」


あまりの処刑方法にレナとゴンゾウは眉をしかめ、自分から語ったネズミも処刑を思い出して食欲が失せたのか口にしようとしていたスープを机に置く。


「いいですか?いくら貴方達が腕に自信があろうと看守に逆らう事は許されないんです。僕が調査を辞めたとしてもいずれは別の人間がレナさんの命を狙います。なので今後は目立たずに大人しく過ごした方が賢明ですよ」
「高い金を払ったのに碌な情報が貰えなかったな……」


自分の命を狙う者が「看守長」だと知り、更に自分から奪った装備品を所持している事が判明した以上はレナは看守長の事をもう少し調べるためにネズミに問う。


「その看守長が俺の命を狙う理由は聞いてないのか?装備を奪い返されると思ったのか?」
「さあ、そこまでは聞いてませんね。だけど、気になる事があるとすればどうしてレナさんから装備を奪った時にどうして殺さなかったのか、という点です。他の新入りの囚人の方から聞きましたけど、レナさんは気絶している時に捕まったんですよね?」
「そんな事までよく知ってるな……でも、確かにその点が気になるな」


看守長がレナの装備品を奪った張本人だとしても謎がまだ残っており、どうして退魔刀と反鏡剣が他の看守や兵士の元に届いているのかが判明していない。恐らく、レナが所持していた「紅蓮」と「魔法腕輪」だけが奪われた事と考えられる。


「そもそもレナさんは誰に捕まったのか、そこが重要だと思うんですよね。僕の予想ではその人物が看守長に武器を渡し、レナさんを殺す用に促したのでは……?」
「つまり、俺を捕まえた人間は別にいるという事か……あれ?でも、その看守長が起きているのは夜なんだろ?お前、何時から俺の事を調査するように依頼されたんだよ」
「看守長はいつも代理人を利用して依頼をしてきます。だから今日も看守長の使いの兵士から依頼を受けていますので看守長はまだ目覚めていないはずですけど……」
「という事は……今回の依頼は本当に看守長が命じたとは限らない?」


レナが意識を取り戻したのは今日の朝型だが、冒険都市でレナと同じく転移されたゴンゾウは昨日の時点で監獄都市に出現している。そう考えると転移の直後にレナは何らかの理由で気絶してしまい、半日~1日の間は意識が戻らなかった可能性も高い。

気絶している間に何者かがレナを発見し、装備品を剥ぎ取った後に監獄都市に移送される囚人の中にレナを紛れ込ませ、その隙に奪った装備を看守長に渡した。だが、何らかの理由で装備を奪ったレナを殺す必要があると判断したのか何者かは看守長に使える兵士を利用してネズミにレナの調査と暗殺の依頼を行ったとも考えられる。これまでの手がかりではこの説が一番有力に思われたが、証拠はない。


「お前に依頼した兵士はどんな奴?直接聞いてみる必要があるな」
「それはちょっと……下手にその兵士に手を出せば僕が看守長に目を付けられますから」


流石にネズミも看守長を敵に回す事は恐れるのか、人形の様な張り付いた笑顔を崩して身体を震えさせる。その態度は演技とは思えず、仕方なくレナは犯人捜しを後回しにしてまずは自分の装備を持つ看守長以外の二人の情報を聞くことにした。


「分かった。なら、俺の大剣を持っている看守の事を教えろ。ゴンちゃんを酷い目に合わせた借りも返さないといけないからな……」
「それぐらいなら構いませんけど……看守に喧嘩を売るような真似は止めておいた方がいいですよ」
「こんな場所に長居する気はないからどうでもいい」


ネズミの言葉にレナは言い返すと、まずは退魔刀を所持している看守の居場所を尋ねた――




※感想覧で吸血鬼の存在について書かれていたのでここで説明します。吸血鬼は魔人族の中でも特別に優れているわけではなく、特殊能力が持てるというわけで吸血鬼になる前の能力が飛躍的に向上するわけではありません。それと吸血鬼が増える方法は他者を吸血鬼に変化させるしかありません。子供が生まれても吸血鬼になる事はなく、元々の種族の子供が生まれるだけで吸血鬼の能力は継承されません。なので彼等に同族という概念は薄いです。

吸血鬼のゲインが強かったのは吸血鬼に変化する前から彼は強く、吸血鬼となった事で多少の身体能力は上昇しましたが、代わりに人間時の能力がいくつか制限されています。ちなみに吸血鬼になった時点で年齢は取らず、体型も大きく変化しません。つまりゲインは少年の時にキラウに吸血鬼にされてからずっと姿形は変わっていません。


ちなみに今回の投稿の5秒前……

アイリス「( ゚Д゚)ジー」←つぶらな瞳
カタナヅキ「いや、そんなに見られても渡さないから……スライムになって出直してこい(;´・ω・)」
アイリス「(#^ω^)ピキピキ」

(´・ω・`)パ-ン  ←実力行使に出たアイリス
  ⊂彡☆))Д`) ←殴られる作者

アイリス「ふう、これで邪魔ものはいなくなりました」(*´ω`*)ノ公開ボタンをポチッ
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