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都市崩壊編
放たれた槍
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――自身の変化を実感するようにミドルは握りしめた槍に視線を向け、この日のために王妃から受け取った「聖剣」に匹敵する能力を持つ槍を掲げる。名前は「ロンギヌス」と呼ばれ、製作者は過去に召喚された勇者であると伝えられているが、実際の所は槍が誰が作り出したのかは文献には残っていない。
レナが持ち込んだ「カラドボルグ」や「エクスカリバー」そしてゴウライの手に渡った「デュランダル」に対抗するために王妃も過去の勇者が作り出した聖具を集めており、ミドルが受け取ったロンギヌスも王妃の人脈によって入手した伝説の槍である。
『この槍の力を使いこなせたとき、貴方は勇者を超える存在になれるのよ』
王妃から槍を受け取ったときに言われた言葉を思い出し、彼女の期待に応えるためにミドルはロンギヌスを握りしめると、自分と向かい合うように立つレナ達に顔を向ける。その表情は先ほどまでの苦痛は一切感じられず、むしろ今までにない力の高揚感を感じていた。
「ああっ……これは凄いね。流石は竜種というべきかな」
「お前……」
「くっ……!?悪いけどもう少し小さく喋ってくれないかな?どうやら五感が完全に馴染んでいないせいか、妙に耳が聞こえるようになってね」
ミドルの変化にレナが呟いた途端、彼はまるで至近距離から大声を放たれたように聴覚が過敏に感じ取ってしまう。その様子を見た剣聖達はミドルの変化に危機感を感じ取り、各々が武器を構える。
「こいつ……やりやがったな」
「竜種の経験値を全て奪い取ったというのか……」
「既に英雄の領域に至った人間が竜種の経験値を得た場合……どうなるのでしょうか?」
「知らないわよそんなこと……前例がないんだから」
歴史上でも竜種に戦闘を挑み、勝利をする人間は少なからず存在する。しかし、今回のミドルの場合は地竜の体内に眠っていた核を破壊したことで全ての経験値を独り占めした事に等しい。過去に召喚された勇者のような偉大な存在ならばともかく、この世界で生まれ育った人間の中で上位の竜種の経験値を一人だけで受け入れた人間は存在しない。
「おい、ゴウライ!!お前は何度も竜種を仕留めているんだろ!?あいつみたいに変化することはあるのか?」
『確かに吾輩は何度か竜種を討伐している。しかし、ここまでの大物を相手にしたことはないぞ』
最強の剣聖であるゴウライも過去に何度か竜種の討伐を行っているが、彼女が倒した竜種の殆どは成体ではなく幼体の竜種ばかりであり、今回の地竜のような怪物を倒したことはない。だが、幼体とはいえ単独で竜種を屠る力を誇るのはゴウライだけであり、彼女は背中のデュランダルを引き抜いてミドルの元へ向かう。
『だが、これほどの大物と戦える機会が巡り合うとは行幸だ。ここは手合わせを願おうではないか』
「……構いません。僕も貴方とは一度戦ってみたかった」
「なっ!?おいっ!?」
大剣を引き抜いて近寄ってくるゴウライに対してミドルも槍を構え、二人は嬉々とした表情を浮かべて向かい合う(片方は兜に隠れて顔は見えないが)。そんな二人の行動にシュンは声を掛けようとしたが、彼が止める前にミドルは動き出す。
「だが……まずは先に君との決着を付けさせてもらう!!」
『何っ!?』
「レナ!!」
武器を構えたゴウライに対してミドルは目にも止まらぬ速度で彼女の横を駆け抜けると、ゴンゾウに抱えられているレナの元へ向かう。咄嗟にレナの周囲に存在した人間は彼を庇うために動こうとしたが、今のミドルの視界はまるでカメラ映像のスローモーションのように周囲の人間の動作がゆっくりと見えた。
「もう、遅いっ!!」
他の人間が行動を移す前にミドルはレナの肉体に目掛けて槍を振りかざし、投擲する。投げ放たれたロンギヌスは全身に不気味な光を放ちながら標的であるレナの胸元へ向かい、その肉体を貫こうとした。
「くっ……!?」
迫りくる槍の刃に対してレナは両目の眼を光り輝かせ、剣鬼としての能力を発動させる。その瞬間、レナの肉体に重力を操作する紅色の魔力が滲み、周囲の光景がスローモーションのように物体の動作が減速する。
(間に合えっ!!)
加速した肉体を動かし、どうにかゴンゾウの肩の上から飛び降りようとした。結果的には槍が肉体に衝突する前にレナは地面に向けて落下する事に成功し、投擲された槍を回避する事に成功した。
(なっ!?)
だが、ロンギヌスは空中で方向転換を行い、軌道を変更して地面に向けて飛び降りたレナの心臓に目掛けて最接近する。まるで自動追尾のように近づいてくる槍にレナは目を見開き、このままでは助からないことを理解する。
(不味い……!?)
咄嗟に両腕を交差して胸元への直撃を避けようとしたレナだったが、ロンギヌスの刃がレナの肉体を傷つける事はなく、衝突の寸前にレナの傍に存在した人物が庇うように身を乗り出す。
「させないっ!!」
「っ……!?」
レナの耳元に聞き覚えのある声が響き渡り、その直後にレナの視界には自分の身代わりとなって胸元に槍を受けた人間の姿が映し出された――
レナが持ち込んだ「カラドボルグ」や「エクスカリバー」そしてゴウライの手に渡った「デュランダル」に対抗するために王妃も過去の勇者が作り出した聖具を集めており、ミドルが受け取ったロンギヌスも王妃の人脈によって入手した伝説の槍である。
『この槍の力を使いこなせたとき、貴方は勇者を超える存在になれるのよ』
王妃から槍を受け取ったときに言われた言葉を思い出し、彼女の期待に応えるためにミドルはロンギヌスを握りしめると、自分と向かい合うように立つレナ達に顔を向ける。その表情は先ほどまでの苦痛は一切感じられず、むしろ今までにない力の高揚感を感じていた。
「ああっ……これは凄いね。流石は竜種というべきかな」
「お前……」
「くっ……!?悪いけどもう少し小さく喋ってくれないかな?どうやら五感が完全に馴染んでいないせいか、妙に耳が聞こえるようになってね」
ミドルの変化にレナが呟いた途端、彼はまるで至近距離から大声を放たれたように聴覚が過敏に感じ取ってしまう。その様子を見た剣聖達はミドルの変化に危機感を感じ取り、各々が武器を構える。
「こいつ……やりやがったな」
「竜種の経験値を全て奪い取ったというのか……」
「既に英雄の領域に至った人間が竜種の経験値を得た場合……どうなるのでしょうか?」
「知らないわよそんなこと……前例がないんだから」
歴史上でも竜種に戦闘を挑み、勝利をする人間は少なからず存在する。しかし、今回のミドルの場合は地竜の体内に眠っていた核を破壊したことで全ての経験値を独り占めした事に等しい。過去に召喚された勇者のような偉大な存在ならばともかく、この世界で生まれ育った人間の中で上位の竜種の経験値を一人だけで受け入れた人間は存在しない。
「おい、ゴウライ!!お前は何度も竜種を仕留めているんだろ!?あいつみたいに変化することはあるのか?」
『確かに吾輩は何度か竜種を討伐している。しかし、ここまでの大物を相手にしたことはないぞ』
最強の剣聖であるゴウライも過去に何度か竜種の討伐を行っているが、彼女が倒した竜種の殆どは成体ではなく幼体の竜種ばかりであり、今回の地竜のような怪物を倒したことはない。だが、幼体とはいえ単独で竜種を屠る力を誇るのはゴウライだけであり、彼女は背中のデュランダルを引き抜いてミドルの元へ向かう。
『だが、これほどの大物と戦える機会が巡り合うとは行幸だ。ここは手合わせを願おうではないか』
「……構いません。僕も貴方とは一度戦ってみたかった」
「なっ!?おいっ!?」
大剣を引き抜いて近寄ってくるゴウライに対してミドルも槍を構え、二人は嬉々とした表情を浮かべて向かい合う(片方は兜に隠れて顔は見えないが)。そんな二人の行動にシュンは声を掛けようとしたが、彼が止める前にミドルは動き出す。
「だが……まずは先に君との決着を付けさせてもらう!!」
『何っ!?』
「レナ!!」
武器を構えたゴウライに対してミドルは目にも止まらぬ速度で彼女の横を駆け抜けると、ゴンゾウに抱えられているレナの元へ向かう。咄嗟にレナの周囲に存在した人間は彼を庇うために動こうとしたが、今のミドルの視界はまるでカメラ映像のスローモーションのように周囲の人間の動作がゆっくりと見えた。
「もう、遅いっ!!」
他の人間が行動を移す前にミドルはレナの肉体に目掛けて槍を振りかざし、投擲する。投げ放たれたロンギヌスは全身に不気味な光を放ちながら標的であるレナの胸元へ向かい、その肉体を貫こうとした。
「くっ……!?」
迫りくる槍の刃に対してレナは両目の眼を光り輝かせ、剣鬼としての能力を発動させる。その瞬間、レナの肉体に重力を操作する紅色の魔力が滲み、周囲の光景がスローモーションのように物体の動作が減速する。
(間に合えっ!!)
加速した肉体を動かし、どうにかゴンゾウの肩の上から飛び降りようとした。結果的には槍が肉体に衝突する前にレナは地面に向けて落下する事に成功し、投擲された槍を回避する事に成功した。
(なっ!?)
だが、ロンギヌスは空中で方向転換を行い、軌道を変更して地面に向けて飛び降りたレナの心臓に目掛けて最接近する。まるで自動追尾のように近づいてくる槍にレナは目を見開き、このままでは助からないことを理解する。
(不味い……!?)
咄嗟に両腕を交差して胸元への直撃を避けようとしたレナだったが、ロンギヌスの刃がレナの肉体を傷つける事はなく、衝突の寸前にレナの傍に存在した人物が庇うように身を乗り出す。
「させないっ!!」
「っ……!?」
レナの耳元に聞き覚えのある声が響き渡り、その直後にレナの視界には自分の身代わりとなって胸元に槍を受けた人間の姿が映し出された――
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