上 下
376 / 2,083
都市崩壊編

地竜の核の位置

しおりを挟む
『オオオオッ……』
「……なんだ?急に大人しくなりやがったな……」
「ここまで痛めつけられたのならば当然だろう」


四肢を失った地竜は先ほどまでの勢いを完全に失い、本物の亀のように動作が鈍くなる。これまでの戦闘で地竜も負傷しており、身体全身を覆う外殻も亀裂が存在しない箇所は無い程に損傷を受けていた。


「それで?実際に誰がこいつに止めを刺すんだ?そもそもこいつの中にある核とかいう奴を破壊しない限りは止めを刺した事にはならないんだろう?」
「その通りよ。このまま放置すればゴーレムやガーゴイルのように再生するでしょうね。そうなる前に止めを刺さないと……」
「リンダさんの発徑で内部の中の核を破壊出来ないんですか?」
「流石にここまで巨体の相手だと……」


内部に衝撃を放つ発徑の戦技ならば地竜の核を直接攻撃を加える事も可能だと思われたが、リンダの力量では地竜の肉体全体に発徑の衝撃を与える事は出来ず、核の居場所を特定しない限りは破壊は難しい。そのため、どうにか核を探し出す必要があるのだが、ゴウライが地竜の背中の甲羅を指差す。


『ふむ、恐らくだが核が存在するのはあの甲羅の奥だろう』
「え?本当ですか?」
「分かるのかゴウライ?」
『ふははははっ!!お前等も気配感知の能力を使えるだろう?背中から強い反応が感じ取れるぞ!!』


ゴウライの言葉に全員が甲羅に視線を向け、すぐにレナは「魔力感知」と「気配感知」の能力を発動させる。先ほどまでの戦闘中は気付かなかったが、確かにゴウライの言葉通りに地竜の背中から強力な反応が感じ取られ、更にレナは「心眼」の能力を発動させる。


(これは……地竜の核?)


瞼を閉じた視界は一瞬だけ暗闇に包まれるが、心眼の効果で生物の気配を感じ取り、暗黒空間の中に地竜の虚像シルエットが浮き上がる。ゴウライの言葉通り、地竜の背中の甲羅の中心部から生命力が溢れており、恐らくは地竜の核と思われる存在をレナも感じ取った。


「本当だ……確かに背中の中に何かある」
「そうなのか?ではそれを破壊すれば……」
「でも、随分と奥の方に眠っているわね。こいつの外殻を掘り尽くしながら取り出す方法しかなさそうだわ」
「ミナも呼んできて螺旋槍で削り取って貰おうかな」
「それは流石に難しいと思いますが……」


地竜の核の位置は判明したが、小山程の大きさは存在する土竜の甲羅の中心部まで岩石の外殻を掘り進めなければならず、試しにレナは土塊の魔法で岩石を操作する事は出来ないのか試すが、やはり土砂の類と比べて岩石を操る事はレナには不可能だった。


「おいおい、皆で仲良くこいつの背中に登ってスコップを片手に地道に掘り進めるしかねえのかよ?冗談じゃねえぞおい!!」
『がはははっ!!吾輩はそれでも構わんぞ?中々に楽しそうではないか!!』
「そういう訳には……街中ではまだ敵が残っているかも知れませんし、あまり時間を掛け過ぎると地竜が再生を果たして復活してしまいます」
「私の発徑でもこれ程の巨体だと威力が拡散して弱まってしまう可能性があります」
「参ったわね……水を浴びせれば外殻が脆くなるでしょうけど、ここまで大量の水を運び込む方法も考えないといけないわね」
「……おい、ちょっといいか?」


全員が地竜の甲羅を破壊して内部の核を取り出す方法を考えていると、傷だらけのアカイが地面に座りながら地竜の開けた大穴に視線を向ける。彼の言葉に全員が振り返ると、アカイは周囲の状況を調べさせていた風の精霊を呼び寄せる。


「……俺の精霊によると、あの大穴の方に地下の通路が存在する。恐らくこの街の下水道だろうが、そこに人間が居るそうだ」
「それはハンゾウの事だろう。俺の妹弟子だ、まだ地竜に対抗するために腐敗石を探していたのか?」


アカイの言葉にカゲマルは先に下水道に移動して地竜の嗅覚を封じるために腐敗石の回収に向かったハンゾウの事を告げる。しかし、アカイは険しい表情を浮かべてカゲマルの言葉を否定するように首を振った。


「精霊によれば人数は一人ではない……二人だ。片方がそのハンゾウという者だとすると、もう一人は一体誰だ?」
「何……?」
「二人?」


下水道に2人の人間の存在を風の精霊が感じ取り、ハンゾウ以外にもう一人の人物が下水道に存在するという話を聞いてレナは魔力感知の能力を発動させる。戦闘職ではないレナの気配感知の能力では感じ取れる範囲は限られているが、魔術師の魔力感知のスキルならば感知の範囲は広い。


(……確かに魔力を感じる。でも、何だこの感覚?)


地下の方からレナは二つの魔力を感じ取り、一つは慣れ親しみのある反応だが、もう一つの方は今までにレナが感じた事がない異様な圧力を発する魔力だった。どうしてハンゾウ以外に他の人間の反応が存在するのか疑問を抱くが、カゲマルがハンゾウの元へ向かう事を告げる。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。