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都市崩壊編

ハヤテの退散

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――激しい振動が都市全体に広がる中、都市の中央に存在する噴水広場ではゴウライとシズネは存在した。二人はハヤテの襲撃を受けて交戦していたのだが、唐突に逃走してしまう。


『待てハヤテ!!勝負の途中で何処へ行く!?あ、厠かっ?』
『違う、馬鹿っ……付いてくるなっ!!』
「待ちなさい!!」


外見は子供の用に小柄なハヤテを全身を甲冑で纏った女性と傭兵の姿をした少女が追いかける構図となり、周囲の人々は何事かと視線を向けるが、徐々に振動が強まって彼女達に気にする暇もなくなる。


「な、何が起きているんだ!?地震じゃないのか!?」
「いつまで続くんだよ!!」
「不味い!!建物が崩壊するぞ、外へ出ろっ!!」


激しい振動によって碌に耐震の対策が施されていない建物が傾き、既に建物が崩壊を始めている地域も存在した。一体何が起きているのかはシズネにも分からないが、事情を知っているとしたら自分が追跡しているハヤテだけだと考えた彼女は声を掛けた。


「ハヤテ!!この地震も王妃の仕業なの!?」
『知るかっ!!くそっ……こんなの聞いていない!!』
『ほう!!そういえばお前の技は安定した足場でないと発揮できなかったな!!』
『うるさい!!』


ハヤテの得意とする「居合」の戦技は安定した足場でなければ発動出来ず、振動した地面の上では発動する事も出来ない。そのために彼女は逃走を余儀なくされ、忌まわしそうに刀を握りしめながら空中に跳躍する。


『決着は必ず着ける……覚えておけっ!!』
『ぬうっ……流石に追いつけんか』
「飛んだ……森人族の精霊魔法ね」


風の精霊を利用して飛翔したハヤテの後姿を確認したゴウライとシズネは立ち止まり、流石の二人も振動を続ける地面を走り続ける事は難しく、追跡を断念した。だが、ハヤテの反応から考えても冒険都市を襲う謎の地震の正体は彼女も聞かされていなかったらしい。


『ふむ……気付いているかシズネ?』
「ええっ……下から嫌な気配が感じるわね」


シズネもゴウライも「気配感知」の能力で地中から感じ取る強大な気配を感じ取り、嫌な予感を抱く。地中から巨大な何かが移動している事だけは分かるのだが、反応が大き過ぎて正確な位置が把握できない。


『恐らくは都市の地下に大物が潜んでいるな。それにこの反応、竜種だろうな』
「そんな事が分かるの?」
『うむっ!!吾輩は何度も竜種どもと交戦しているからな!!奴等の気配は独特で分かりやすいからな……しかし、ここまで大きい気配の相手と戦った事はないがな!!がははははっ!!』
「この状況でよく笑えるわね馬鹿っ!!」


地中から竜種が接近しているという話にシズネは頭を抑え、自分の刀に視線を向ける。レナから受け取った新しい刀は一流の鍛冶師が作り出した名刀にも劣らぬ優れものだが、やはり「雪月花」と比べると能力面で見劣りしてしまう。しかし、王妃に返却した事を今更後悔するわけにはいかず、彼女は自分達がどのように行動するべきか考える。


『むっ?あれを見ろシズネ!!』
「何よこんな時に……あれは?」


ゴウライの言葉にシズネは考え事を止めて顔を上げると、街道の方に緑色の影を発見し、先ほどまで人々を襲っていた魔獣兵の残党を発見する。魔獣兵たちは悲鳴を上げて地面を走り抜け、街の住民を無視して一目散に都市の防壁に向けて逃げ出していた。


『ギィアアアアアッ――!?』
「な、何よあれは……怯えている?」
『魔物は人間よりも生物の気配に敏感だからな。奴らは知能が高い分、この場に残るのは危険だと悟って逃げ出しているのだろう』
「ならもう奴等の対応は考えなくていいという事ね……不幸中の幸いというのかしら?」


街を襲撃した魔獣兵たちも地中から接近する気配を感じ取ったらしく、最初の威勢はどうしたのか恐怖の表情を浮かべて都市の外へ向けて逃走を開始する。その様子を見たシズネは安堵する一方、同時にあれほど厄介な魔獣兵が恐れ怯える程の存在が都市に襲い掛かろうとしている事に気付く。


「……ここで立ち止まっていても仕方ないわ。私はレナ達と合流するわ」
『ん?奴等の居場所が分かるのか?』
「探すのよ。それと住民の避難も手伝う必要があるわ……あんたはどうするのよ?」
『吾輩はギルドに戻ろう。こういう時はギルドマスターに相談するのが一番だからな!!』
「そう、なら勝手にしなさい」


シズネは途中で別れたレナ達との合流を目指し、ゴウライは自分のギルドに帰還する事を決める。二人は別に仲間同士ではないので共に行動する理由はなく、お互いの仲間と合流するために行動を開始しようとした時、別れる前にシズネはどうしても聞きたいことを思い出す。


「待ちなさいゴウライ!!」
『む?なんだ?まだ吾輩に用事があるのか?』
「……その兜の下の顔を見せなさい」
『はっ?』


戦闘の最中、ハヤテが告げた「甲冑女」という言葉にシズネは非常に気にかかり、ゴウライの正体を確かめるために兜を外して顔を見せるように要求した。
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