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闘技祭 決戦編
バルの奇策
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「私は抵抗しません!!だから、手荒な真似は止めて下さい!!」
「姉さんっ!!」
「マリア、これは私達家族の問題なの……大丈夫よ。きっと何とかなるわ」
「……分かりました。では、同行をお願いします」
アイラの言葉にバルは止めようとするが、彼女は首を振ってアルトの元へ赴く。そんな彼女の姿にアルトは安心したように武器を収めるが、彼等の前にバルが立ち塞がる。
「待ちなっ」
「……まだ邪魔をする気ですか?」
「バルちゃん……もういいの。この人達の邪魔をしちゃ駄目よ」
アルトとの前に大剣を携えたバルが割って入り、アイラは聞き分けのない子供を諭すように優しく語り掛けるが、バルは溜息を吐きながら頭を掻く。
「この姉妹ときたら……相変わらずあたしの事を子ども扱いするのが気にくわないね」
「バルちゃん?」
「バル?」
バルの言葉にアイラとマリアは彼女に視線を向けると、バルは苛立ちを隠さずに右腕を振り上げ、戦技の「硬化」を発動させる。筋肉を凝縮させ、肉体の硬度を高めるとバルは勢いよくアイラに向けて右腕を振り翳す。
「おらぁっ!!」
「はうっ!?」
「バル!?」
「なっ!?」
――全員の目の前でバルはアイラに対して右腕を振り抜き、彼女の頭部を叩きつける。流石のアイラも彼女のからの攻撃には予想外だったらしく、派手に地面に倒れてしまう。その姿を確認したバルは右腕を抑え、深いため息を吐き出す。
「ふうっ……本当にすいませんねアイラさん。でも、今のあんたのやり方は正しいとは私は思えないんだよ」
「バル……貴女、何を……」
「一体何をするんだ!!その方を誰だと思っている!?」
バルの行動にマリアだけではなく、アイラを捕まえにきたアルトでさえも彼女を止めようとするが、バルは即座に倒れているアイラを肩に持ち上げて兵士の包囲網を突破するために駆け出す。
「おら、退きな雑魚共っ!!」
「うわっ!?」
「ぎゃあっ!?」
大剣を振り払い、武装した兵士達を薙ぎ払いながらバルはアイラを抱えたまま走り出す。その姿を見てアルトは即座に引き留めるために兵士に命令を下す。
「何をしている!!早くその女を捕まえるんだ!!」
「待ちなさいバル!!貴女、何をっ……」
「うるさいんだよっ!!」
アルトとマリアの言葉を耳にしてもバルは止まらず、大剣を片腕のみで振り払いながら兵士を吹き飛ばし、包囲網を突破する。兵士の囲いから抜け出したバルは一度だけ振り返り、マリアに向けて大声を上げる。
「前々からあんたらの事は気にくわなかったんだよ!!この女はあたしが貰っていく!!邪魔をするなら誰であろうとぶっ飛ばすよ!!」
「何を言っている!!マリア殿、貴女達は王国を敵に回すつもり……うおっ!?」
バルの行動をマリアの指示だと判断したアルトはマリアを叱責しようとした瞬間、彼とマリアの間にバルが放り投げた大剣が突き刺さり、両者は驚いた表情を浮かべてバルに振り返ると、彼女はアイラを抱えたまま怒鳴りつけた。
「その女がどうなろうとあたしには関係ないんだよ!!そいつのせいでうちのギルドはいつも赤字に追い込まれていたからね……これはあの時の礼だよ!!」
アイラを抱えたままバルは足元の石を拾い上げ、マリアに視線を向ける。その際に彼女だけに分かるように目配せを行い、バルは拾い上げた石をマリアに向けて投擲した。
「喰らいなっ!!」
「あぐっ!?」
『マリア様!?』
投げ込まれた石に対してマリアは歯を食いしばり、敢えて「回避」せずに額に衝突させて倒れこむ。その光景を見て氷雨の冒険者たちは目を見開き、アイラを拘束するために訪れていた兵士達も呆気に取られる。その一方でバルは冷や汗を流しながらもアイラを抱え、駆け出す。
「おらっ!!追いつけるもんなら追いついてみろっ!!」
「待て!!逃がす……」
「てめぇええええっ!!」
「よくもマリア様をぉっ!!」
兵士が追跡を行う前に建物の前に集まっていた冒険者の中で魔術師の職業の人間達が先に杖を構え、容赦なくバルに向けて砲撃魔法を発動させる。射線上に存在した兵士達は慌ててその場を離れると、無数の砲撃魔法がバルの背後に狙いを定めて放たれる。
「ファイアランス!!」
「アイスカノン!!」
「フレイムアロー!!」
『うわぁあああっ!?』
本気で仕留める気で魔術師達は次々と魔法を発動させ、街中に爆発が生じる。様々な属性の砲撃魔法に狙われながらもバルはアイラを抱えたまま街道を駆け抜け、兵士達を振り切る。
「逃がすなっ!!追うぞっ!!」
「生かしちゃおかねえっ!!」
「あの女ゴリラ!!今日は我慢できねえっ!!」
「ま、待て!!落ち着け……うわっ!?」
王国兵よりも先に氷雨の冒険者達がバルの後を追いかけ、慌てて王国兵も彼等の後に続き、氷雨の冒険者ギルドから兵士達は立ち去った――
「姉さんっ!!」
「マリア、これは私達家族の問題なの……大丈夫よ。きっと何とかなるわ」
「……分かりました。では、同行をお願いします」
アイラの言葉にバルは止めようとするが、彼女は首を振ってアルトの元へ赴く。そんな彼女の姿にアルトは安心したように武器を収めるが、彼等の前にバルが立ち塞がる。
「待ちなっ」
「……まだ邪魔をする気ですか?」
「バルちゃん……もういいの。この人達の邪魔をしちゃ駄目よ」
アルトとの前に大剣を携えたバルが割って入り、アイラは聞き分けのない子供を諭すように優しく語り掛けるが、バルは溜息を吐きながら頭を掻く。
「この姉妹ときたら……相変わらずあたしの事を子ども扱いするのが気にくわないね」
「バルちゃん?」
「バル?」
バルの言葉にアイラとマリアは彼女に視線を向けると、バルは苛立ちを隠さずに右腕を振り上げ、戦技の「硬化」を発動させる。筋肉を凝縮させ、肉体の硬度を高めるとバルは勢いよくアイラに向けて右腕を振り翳す。
「おらぁっ!!」
「はうっ!?」
「バル!?」
「なっ!?」
――全員の目の前でバルはアイラに対して右腕を振り抜き、彼女の頭部を叩きつける。流石のアイラも彼女のからの攻撃には予想外だったらしく、派手に地面に倒れてしまう。その姿を確認したバルは右腕を抑え、深いため息を吐き出す。
「ふうっ……本当にすいませんねアイラさん。でも、今のあんたのやり方は正しいとは私は思えないんだよ」
「バル……貴女、何を……」
「一体何をするんだ!!その方を誰だと思っている!?」
バルの行動にマリアだけではなく、アイラを捕まえにきたアルトでさえも彼女を止めようとするが、バルは即座に倒れているアイラを肩に持ち上げて兵士の包囲網を突破するために駆け出す。
「おら、退きな雑魚共っ!!」
「うわっ!?」
「ぎゃあっ!?」
大剣を振り払い、武装した兵士達を薙ぎ払いながらバルはアイラを抱えたまま走り出す。その姿を見てアルトは即座に引き留めるために兵士に命令を下す。
「何をしている!!早くその女を捕まえるんだ!!」
「待ちなさいバル!!貴女、何をっ……」
「うるさいんだよっ!!」
アルトとマリアの言葉を耳にしてもバルは止まらず、大剣を片腕のみで振り払いながら兵士を吹き飛ばし、包囲網を突破する。兵士の囲いから抜け出したバルは一度だけ振り返り、マリアに向けて大声を上げる。
「前々からあんたらの事は気にくわなかったんだよ!!この女はあたしが貰っていく!!邪魔をするなら誰であろうとぶっ飛ばすよ!!」
「何を言っている!!マリア殿、貴女達は王国を敵に回すつもり……うおっ!?」
バルの行動をマリアの指示だと判断したアルトはマリアを叱責しようとした瞬間、彼とマリアの間にバルが放り投げた大剣が突き刺さり、両者は驚いた表情を浮かべてバルに振り返ると、彼女はアイラを抱えたまま怒鳴りつけた。
「その女がどうなろうとあたしには関係ないんだよ!!そいつのせいでうちのギルドはいつも赤字に追い込まれていたからね……これはあの時の礼だよ!!」
アイラを抱えたままバルは足元の石を拾い上げ、マリアに視線を向ける。その際に彼女だけに分かるように目配せを行い、バルは拾い上げた石をマリアに向けて投擲した。
「喰らいなっ!!」
「あぐっ!?」
『マリア様!?』
投げ込まれた石に対してマリアは歯を食いしばり、敢えて「回避」せずに額に衝突させて倒れこむ。その光景を見て氷雨の冒険者たちは目を見開き、アイラを拘束するために訪れていた兵士達も呆気に取られる。その一方でバルは冷や汗を流しながらもアイラを抱え、駆け出す。
「おらっ!!追いつけるもんなら追いついてみろっ!!」
「待て!!逃がす……」
「てめぇええええっ!!」
「よくもマリア様をぉっ!!」
兵士が追跡を行う前に建物の前に集まっていた冒険者の中で魔術師の職業の人間達が先に杖を構え、容赦なくバルに向けて砲撃魔法を発動させる。射線上に存在した兵士達は慌ててその場を離れると、無数の砲撃魔法がバルの背後に狙いを定めて放たれる。
「ファイアランス!!」
「アイスカノン!!」
「フレイムアロー!!」
『うわぁあああっ!?』
本気で仕留める気で魔術師達は次々と魔法を発動させ、街中に爆発が生じる。様々な属性の砲撃魔法に狙われながらもバルはアイラを抱えたまま街道を駆け抜け、兵士達を振り切る。
「逃がすなっ!!追うぞっ!!」
「生かしちゃおかねえっ!!」
「あの女ゴリラ!!今日は我慢できねえっ!!」
「ま、待て!!落ち着け……うわっ!?」
王国兵よりも先に氷雨の冒険者達がバルの後を追いかけ、慌てて王国兵も彼等の後に続き、氷雨の冒険者ギルドから兵士達は立ち去った――
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