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剣鬼 闘技祭準備編

閑話 〈もしも王妃がいない世界だったら〉

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――異世界に転生してから15年の月日が経過し、第一王子であるレナは義理の姉であるナオと婚約者のシズネと共に城の一室にて談笑する。不遇職である彼には王位の継承権は存在しないが、それでも義理の姉弟達との関係は良好だった。


「へえ、それで結局どうなったの?」
「勿論、勝負は私が勝ったわ。あの時は本当に大変だったわよ。初めて同世代に負けてショックだったのは分かるけど、あれほど大泣きするとは思わなかったわ」
「ちょっと待て!!それは子供の頃の話だろう!?今なら私の方が強いぞ!!」
「それはどうかしらね。試してみる?」


レナはシズネとナオが内密に城下町で行われた剣技大会に出場した時の話を語られ、彼女達は10才の年齢で大人たちを打ち倒し、決勝で戦ったという。


「あの時は本当に苦労したわよ。ナオ姫は泣き出すし、帰ったらお父様に怒られるし、お母様にも注意されたわ」
「ふんっ!!お前だって帰った後にお尻を叩かれて泣き喚いたらしいじゃないか?ギランさんから話は聞いてるぞ?」
「なっ……泣いてないわよ!!」
「まあまあ……でも、俺が冒険都市に出向いていた時にそんな事があったなんてな」


二人が城下町で騒ぎを起こしていたころ、レナはアイラと共に冒険都市の叔母の元に訪れていた。アイラの妹は冒険者ギルドのギルドマスターを務めていると聞いてレナが会いたいと申し出ると、アイラが国王に頼んで御忍びで都市に出向いたのだが、到着して早々に大量の冒険者に出迎えられ、叔母であるマリアに歓迎された。

マリアはアイラとは性格が全く違うがレナにも優しくし、彼が不遇職だからと言って馬鹿にすることも哀れに思う事もなく、都市で過ごしていた頃は何不自由のない生活を与えてくれた。一時期は冒険者の職業に興味を抱いたレナに簡単な訓練と魔法の指導を行い、共に大迷宮に出向いた事もある。


(大迷宮は凄い所だったな……敵は殆ど叔母様と母上が倒したけど)


大迷宮に出向いた際、レナを守る為にマリアは腕利きの冒険者を用意し、更に自身も出向いて敵を一掃する。塔の大迷宮に挑んだ際は第五階層に通じる隠し通路を発見し、第五階層に生息していた美しい白竜を遠目から見かけた時の衝撃をレナは忘れられなかった。


(あの女の子はどうしてるかな?また会えたらいいな)


冒険都市から帰り道の途中、レナは川辺で人魚族の少女のコトミンと遭遇し、友達になった。切っ掛けはアイリスと交信を行っていた時、彼女が川辺に向かうように指示をしたのでそれに従ったのだが、そこには盗賊に攫われそうになっていたコトミンを発見し、レナが救い出す。


『助けてくれてありがとう……これ、お礼』
『ぷるぷるっ』
『え、スライム……?』


別れ際にスライムを1匹渡されたときは困ったが、現在は城の中庭で飼っており、庭の鯉達と仲良く過ごしている。


(そういえばダイン君とゴンゾウ君はどうしてるのかな……最近は見かけないな)


冒険都市に立ち寄った時、レナは皆に内緒で一人で街に赴いた時に人間と巨人族の少年と遭遇する。その際に意気投合し、彼等が冒険者だったという理由もあり、一緒に依頼を果たしたことを思い出す。内容は街に存在する盗賊の捕獲であり、ミラという名前の盗賊を3人で捕まえた事も強く記憶に残っていた。


『お前、僕達の仕事手伝わないか?大丈夫!!僕の影魔法は無敵だからな!!』
『何があっても俺が守ろう』


色々と大変な目に遭ったが、初めての同世代の男友達が出来た事にレナは喜び、都市に遊びに行くときは必ず二人の元に顔を出していた。


(そういえばあの時戻ったら怒られると思ったけど、カゲマルさんがずっと尾行してたなんて知らなかったな……叔母様に感謝だな)


勝手に抜け出して危険な仕事の手伝いをした事にレナはどのように言い訳をするか考えていたが、戻ってみるとマリアは全てお見通しであり、彼女の側近の忍者の職業のカゲマルに尾行させていた事を告げる。


『あんまりお母さんを心配させたら駄目よ?次からは私に言いなさい』


アイラには今回の件を喋らない事を条件にマリアは都市で行動する際は自分に報告するように伝え、レナは沢山の友人を築いて城に引き返した。


「そういえばレナ、最近父上と狩猟に出かけたと言っていたな?どうだった?」
「あ、そうそう。大変だったよ。俺がブタンを仕留めたんだけど、父上がむきになって俺よりも大物を倒すと言って結局夜を迎えるまで諦めずに帰らなかったんだから」
「呆れたわね……よっぽど貴方に負ける事が我慢ならないのね」
「でも、外で二人だけでブタンの豚汁を作って食べた時は楽しかったよ。次の日に帰ってきたときは母上に凄い怒られたけどね」
「そう。それは良かったわね」
「シズネも一緒に出掛けようよ。婚約者の義務を果たしたまえ」
「誰の真似よ……そうね、なら今度の休日は街に出かけましょう」
「あ、ずるいぞ!!私も一緒に行くからな!!もちろん、妹達もいいよな?」
「どうしてそうなるのよ!!」


ナオの発言にシズネが怒鳴り返し、その光景を見てレナは笑みを浮かべ、平和な世界を満喫していた――





※王妃がいなければ割と早い段階でレナとアイラは王都に戻れました。(´・ω・)カワイソウニ
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