219 / 2,083
剣鬼 闘技祭準備編
アスカロン
しおりを挟む
「でも、この神器は元々はルトリア家の物なんでしょ?叔母様はそれを知ってて返そうとは考えなかったの?」
「そうね、確かにこのアスカロンはルトリア家の物よ。だけど、レミアは王妃側の人間である事は間違いないのだから敵に貴重な神器を渡す事になってしまうわ」
「あ、それもそうか」
「別に返さなくてもいいんじゃないのか?これを渡してもレミアがこっち側に付くとは限らないだろ?」
羨ましそうにシュンはアスカロンに視線を向け、ジャンヌも同様に伝説の神器に視線を向ける。剣聖である彼等は闘拳の知識に関しても豊富であり、一流の剣士ならば必ず名前を耳にするほどの代物である。
「確かにその通りね。だから説得には私が出向くわ」
「えっ!?マリアさんが直々に説得に向かう!?」
「それはいくら何でも危険すぎるのでは……」
「それでも私が出向く必要があるわ。レミアをこちら側に付けば何かと都合が良いのも事実、それなら多少の危険を犯してでも会いに行く必要があるの」
「……駄目だ。いくらなんでもそれは認めねえ」
「ど、どうしたのでござる?」
マリアの言葉にシュンが表情を変えて反対意見を示し、彼の隣に立っていたカゲマルも同意するように頷く。
「マリア様、私もシュンと同意見です。もしもマリア様に何か起きたら我々はどうすればいいのですか」
「……貴方達は私の実力を知った上で発言をしているのかしら?」
「無論です。マリア様の御力は我々も存じております。しかし……ハヤテが敵に回った以上、今まで以上に慎重に動くべきです」
「何とっ!?どういう事でござるか!?ハヤテ殿が敵に回った……!?」
「ハヤテ?」
レナは少し前に自分に襲い掛かってきた森人族の少女の事を思い出し、祖母のハヅキの話によればマリアの監視役として送り込まれた「守人家」と呼ばれる森人族である。外見は幼いが実年齢はレナよりも年上であり、彼が生まれる前からマリアの監視役として行動していると聞いている。
ハヤテは表向きはマリアに仕えているが、実際の所は彼女の行動をハヅキ家の当主であるハヅキと守人家に報告していた。しかし、シュンによると彼女は自分の役目を放棄し、王妃の元へ向かったという。
「どうしてハヤテ殿が敵に回ったというのでござるか!?」
「さあな……それは俺よりも嬢ちゃんの方が知っているんじゃないのか?」
「私も詳しい事は知らないわ。だけど、ハヤテが戻ってから王妃がレナの存在を知ったのは確かね」
「俺?」
唐突に自分の名前が出てきたことにレナは驚くが、マリアの話によるとハヤテが街に戻った時期からレナの存在が王妃に知られたらしい。
「ハヤテが王妃と繋がっていたのは間違いないわ。理由は分からないけど、少なくともレナの存在を報告していたのは彼女で間違いないわね」
「だけどよ、それだけの理由でどうして師匠が疑われるんだよ?別にこの坊主が嬢ちゃんの甥だって知っている人間は他にもいるだろ?」
「確かにその通りね。だけど、レナの件を抜きにしてもハヤテが怪しい行動をしていたのは間違いないわ。それでも今日までは確信を持てなかったのだけど、今回の手紙の騒動でハヤテが犯人である事は確定したわ」
「手紙……」
「この手紙を貴方の家に送り込んだのはハヅキ家ではなく、ハヤテとしか考えられないのよ。それにあの人からもらった手紙にも気になる文章があったわ」
マリアはレナの家に送り込まれた手紙とハヅキから受け取った手紙を取り出し、この二つの手紙によってハヤテが裏切者である事に気付いた。
「あの人の手紙には年に一度しか報告を行わない事を注意されたのだけど、実際の所は私は月に一度は手紙を出していたのよ。だけど、その手紙の殆どが届いていないわ」
「え?という事は……」
「報告の連絡役を任されていたのはハヤテよ。つまり、彼女が意図的に私が送った手紙を破棄していた事になるわ」
「何でそんな事を……」
「シュン……貴方は本当は知っているんじゃないの?ハヤテが王妃と繋がっている理由を」
「……さあな」
マリアの言葉にシュンは黙り込み、その反応を見て全員が彼が何かを隠している事を悟る。しかし、敵に回ったとはいえ自分の師匠の秘密を語りたくはないのか、シュンは答えようとしない。
「どんな理由があろうと、師匠は嬢ちゃんを裏切った。それだけの話だろ」
「ならば……弟子のお前もマリア様の元を去る気か?」
「一緒にすんな!!俺は嬢ちゃんを気に入ってるんでね……このまま残るぜ」
「そう、ならいいわ」
シュンの言葉にマリアは一応は納得したように視線をアスカロンに戻し、溜息を吐きながらもケースの中に戻す。
「そこまで言うのであれば私が出向くのは諦めるわ。だけど覚悟しておきなさい、大将軍は王国を支えるために人生を捧げた人間だけが許される重職よ。彼女の実力を甘く見ると痛い目に遭うわよ」
大将軍を担うレミアの実力は計り知れず、実際に負傷していたとはいえ、剣聖3人とレナ達を含めて戦ったジンを一撃で昏倒させている。恐らく実力はレナが闘技場で戦った白騎士レイナにも劣らず、闘技祭で交えた場合は簡単に勝てる敵ではない。
※あと数話で闘技祭決戦編に入ります。
「そうね、確かにこのアスカロンはルトリア家の物よ。だけど、レミアは王妃側の人間である事は間違いないのだから敵に貴重な神器を渡す事になってしまうわ」
「あ、それもそうか」
「別に返さなくてもいいんじゃないのか?これを渡してもレミアがこっち側に付くとは限らないだろ?」
羨ましそうにシュンはアスカロンに視線を向け、ジャンヌも同様に伝説の神器に視線を向ける。剣聖である彼等は闘拳の知識に関しても豊富であり、一流の剣士ならば必ず名前を耳にするほどの代物である。
「確かにその通りね。だから説得には私が出向くわ」
「えっ!?マリアさんが直々に説得に向かう!?」
「それはいくら何でも危険すぎるのでは……」
「それでも私が出向く必要があるわ。レミアをこちら側に付けば何かと都合が良いのも事実、それなら多少の危険を犯してでも会いに行く必要があるの」
「……駄目だ。いくらなんでもそれは認めねえ」
「ど、どうしたのでござる?」
マリアの言葉にシュンが表情を変えて反対意見を示し、彼の隣に立っていたカゲマルも同意するように頷く。
「マリア様、私もシュンと同意見です。もしもマリア様に何か起きたら我々はどうすればいいのですか」
「……貴方達は私の実力を知った上で発言をしているのかしら?」
「無論です。マリア様の御力は我々も存じております。しかし……ハヤテが敵に回った以上、今まで以上に慎重に動くべきです」
「何とっ!?どういう事でござるか!?ハヤテ殿が敵に回った……!?」
「ハヤテ?」
レナは少し前に自分に襲い掛かってきた森人族の少女の事を思い出し、祖母のハヅキの話によればマリアの監視役として送り込まれた「守人家」と呼ばれる森人族である。外見は幼いが実年齢はレナよりも年上であり、彼が生まれる前からマリアの監視役として行動していると聞いている。
ハヤテは表向きはマリアに仕えているが、実際の所は彼女の行動をハヅキ家の当主であるハヅキと守人家に報告していた。しかし、シュンによると彼女は自分の役目を放棄し、王妃の元へ向かったという。
「どうしてハヤテ殿が敵に回ったというのでござるか!?」
「さあな……それは俺よりも嬢ちゃんの方が知っているんじゃないのか?」
「私も詳しい事は知らないわ。だけど、ハヤテが戻ってから王妃がレナの存在を知ったのは確かね」
「俺?」
唐突に自分の名前が出てきたことにレナは驚くが、マリアの話によるとハヤテが街に戻った時期からレナの存在が王妃に知られたらしい。
「ハヤテが王妃と繋がっていたのは間違いないわ。理由は分からないけど、少なくともレナの存在を報告していたのは彼女で間違いないわね」
「だけどよ、それだけの理由でどうして師匠が疑われるんだよ?別にこの坊主が嬢ちゃんの甥だって知っている人間は他にもいるだろ?」
「確かにその通りね。だけど、レナの件を抜きにしてもハヤテが怪しい行動をしていたのは間違いないわ。それでも今日までは確信を持てなかったのだけど、今回の手紙の騒動でハヤテが犯人である事は確定したわ」
「手紙……」
「この手紙を貴方の家に送り込んだのはハヅキ家ではなく、ハヤテとしか考えられないのよ。それにあの人からもらった手紙にも気になる文章があったわ」
マリアはレナの家に送り込まれた手紙とハヅキから受け取った手紙を取り出し、この二つの手紙によってハヤテが裏切者である事に気付いた。
「あの人の手紙には年に一度しか報告を行わない事を注意されたのだけど、実際の所は私は月に一度は手紙を出していたのよ。だけど、その手紙の殆どが届いていないわ」
「え?という事は……」
「報告の連絡役を任されていたのはハヤテよ。つまり、彼女が意図的に私が送った手紙を破棄していた事になるわ」
「何でそんな事を……」
「シュン……貴方は本当は知っているんじゃないの?ハヤテが王妃と繋がっている理由を」
「……さあな」
マリアの言葉にシュンは黙り込み、その反応を見て全員が彼が何かを隠している事を悟る。しかし、敵に回ったとはいえ自分の師匠の秘密を語りたくはないのか、シュンは答えようとしない。
「どんな理由があろうと、師匠は嬢ちゃんを裏切った。それだけの話だろ」
「ならば……弟子のお前もマリア様の元を去る気か?」
「一緒にすんな!!俺は嬢ちゃんを気に入ってるんでね……このまま残るぜ」
「そう、ならいいわ」
シュンの言葉にマリアは一応は納得したように視線をアスカロンに戻し、溜息を吐きながらもケースの中に戻す。
「そこまで言うのであれば私が出向くのは諦めるわ。だけど覚悟しておきなさい、大将軍は王国を支えるために人生を捧げた人間だけが許される重職よ。彼女の実力を甘く見ると痛い目に遭うわよ」
大将軍を担うレミアの実力は計り知れず、実際に負傷していたとはいえ、剣聖3人とレナ達を含めて戦ったジンを一撃で昏倒させている。恐らく実力はレナが闘技場で戦った白騎士レイナにも劣らず、闘技祭で交えた場合は簡単に勝てる敵ではない。
※あと数話で闘技祭決戦編に入ります。
2
お気に入りに追加
16,545
あなたにおすすめの小説
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。