最弱職外伝 〈貧弱の勇者は異世界で生き抗う〉

カタナヅキ

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エルフ王国

影魔法

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『ブラック・サイクロン――自身の影を操作し、地面に広範囲に拡大化させ、あらゆる物を引き寄せる影魔法 熟練度:1』
「影魔法?風の魔法じゃないのか……」


試しにナオは熟練度を上昇させる前に魔法を発動させる。ステータス画面を見るだけでは使用方法は分からないが、他のスキルと同様に名前を口にした。


「ブラック・サイクロン」


何気にこの世界に訪れて空間魔法以外に初めて使用する魔法になるが、言葉を口にしても最初は特に何も起きず、発動に失敗したのかと考えた時、彼は足元に違和感を感じる。


「何だ……うわっ!?」


地面に視線を向けるとナオの影が形を変え、最終的に「渦巻き」を想像させる形状に変化を果たす。空間魔法の黒渦と酷似しているが、こちらの場合は本物の渦巻きのように周囲に存在する物体を引き寄せているらしく、慌ててナオは「跳躍」のスキルを発動してその場を離れた。


「あ、本体には影響ないのか?」


ナオが離れても地面に存在する黒渦は聞けることはなく、周囲に存在する緑鼠の死骸やグリドンの殻を引き寄せ、やがて効果が切れると一か所に死骸と殻が集まる。直接攻撃というよりは相手を引き寄せるだけの魔法らしく、このような状況では都合が良い。


「よし、それなら熟練度を最大にまで上げて……一応は限界値も更新するか」


魔法の場合は技術スキルが発現するのか気になったナオは「ブラック・サイクロン」を最大限にまで強化を施すが、指弾の戦技の時と違って今回は技術スキルは芽生えなかった。


「ブラック・サイクロン!!」


ナオが魔法の発音した途端、彼の足元の影が形を変化する。今回は先ほどよりも規模が広く、しかもナオが想像した位置に影が地面を伝って移動し、まるで掃除機にように地面に存在する死骸と殻を引き寄せながら移動を行う。


「おお、これは便利だな」


掌を動かす方に黒渦が移動し、次々とゴミを吸い上げていく光景にナオは興奮し、本当に自分が魔法らしい魔法を使っている事を実感する。最も戦闘では使いどころが難しい魔法であり、せいぜい相手の足元を引き寄せて一か所に集める程度の事しか出来ないだろう。


「こんなもんか」


訓練場に落ちていたゴミを一か所に集め、ナオはネズミの死骸の山に視線を向け、どのように対処するかを悩む。空間魔法に吸収すれば証拠は残さないだろうが、こんな物を所持していたところで仕方がなく、この際に別の魔法で処理できないのかを試す。


「焼いちゃうと焦げ跡が残っちゃいそうだし、この城自体が木材というか、樹木その物だから危ないな。といってもどんな魔法がいいのか……お?」


戦技の中から扱える魔法を捜索中、ナオは「黒盾」と呼ばれる名前を発見し、名前が気になった彼は魔法を習得すると、ステータス画面に説明文が表示された。


『黒盾――闇属性の魔力で構成された壁面を作り出す。この壁は物理攻撃を無効化するが、聖属性の魔法は防げない 熟練度:1』
「壁面?盾じゃないのか?」


説明文だけを見る限りでは詳細が良く分からず、試しにナオは掌を構えて魔法名を唱える。今度はしっかりと足元の地面に視線を向けるが、影魔法とは異なるのか今度は掌から黒色の魔法陣が誕生し、魔法陣の内部から30センチ程度の大きさの壁が出現した。


「これが壁面?まあ、確かに盾というよりは壁だな……あ、新しいのも出せるのか」


空中に浮揚している「黒壁」にナオは疑問を抱き、ナオの意思に合わせて操作する事が可能らしく、試しに攻撃に利用できないのか疑問を抱いて彼は床に叩きつける。


「これで直接攻撃は……出来ないみたいだな」


黒壁は勢いよく床に衝突させたが、緩衝材のように衝撃を吸収するように特に衝突音もならず、床には傷一つ付いていなかった。この壁自体には攻撃力はないようだが、あらゆる衝撃を吸収するのか試しにナオが触れてもゴムのような物に触れたような感覚が広がり、拳を叩きつけてもびくともしない。


「うわっ……変な感触、だけどこれなら防御には使えそうだな。大きさも自由に変えられるようだし……大きさ?」


作り出した黒壁は規模を自由に変化させる事が可能らしく、物理攻撃を無効化するという文章にナオはある考えを抱き、即座に熟練度を上昇させ、限界値も更新する。だが、先ほどの「ブラック・サイクロン」と同様に技術スキルは発現せず、魔法の場合だと技術スキルが存在しない可能性が高まった。


「これでよしと、黒盾!!」


ナオは長袖を捲り、まずは地面に横たわらせるように2メートル程度の大きさの黒壁を作り出す。その上にナオは表情を引きつらせながらも死骸とゴミの山を両手で掴んで乗せ、腕に付着した汚れは「清浄」のスキルで消し去る。全ての死骸とゴミを移動させると、今度は新しい黒盾を出現させ、最初に作り出した壁に張り付かせる。


「……箱だな」


最終的に頭上も塞ぐと、ナオの前には「黒色の箱」が誕生し、彼は掌を構えて冷や汗を流しながら箱の中身が毀れないように密着させる。


「上手く行くと良いけど……えいっ!!」


ナオが両手を挟み込む動作を行うと、彼の視界に存在する「黒箱」が縮小化し、内部の確認は出来ないが中に入れた死骸とゴミの山が圧縮されている事は間違いない。外見は特に変化はなく、音も聞こえないが逆にそれが不安を煽り、やがて10センチにも満たない大きさにまで変化させる。この状態でもまだ縮小化は可能らしく、さらに10分の1の1センチにまで縮小化させた。


「だ、大丈夫かな。開けた瞬間に死骸が飛び散ったりしないかな」


ナオは指先に浮揚させた黒箱に視線を向け、どのように取り扱うか悩む。
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