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エルフ王国
能力値 オール1
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「攻撃力、防御力、移動速度、魔法威力、魔法耐性、魔力容量……全て1です」
「何っ!?」
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
「ええっ!?」
リンの言葉に玉座の間に存在した人間(エルフだが)全員が驚愕し、ナオ自身も慌てて水晶玉に表示されたステータス画面を確認すると、何故かアイリスと相対していた時とステータスの数値が変更されている事に気付く。少なくとも彼女に見せてもらった画面の能力値の数値は最低値でも「20」は存在したはずだが、即座にアイリスとのやり取りを思い出す。
『貧弱……なんだこりゃ?これが能力なの?』
『それは初期ステータスと能力の成長率が最低値になる代わりにレベルの制限と新しいスキルを覚えるときのSPの消費量が固定化します』
「あれかぁっ!!」
「ど、どうされました勇者様!?」
ナオはアイリスの言葉を思い出し、自分の初期ステータスが低い理由が「貧弱」の異能を身に着けた事が原因だと悟る。レベルの制限とSPの消費量が固定化される能力を身に着けた事になるが、その反面に初期ステータスが大幅に低下しているのだ。そんな事情を知らない森人族達はナオの能力値の異様な低さに疑問を抱く。
「何かの間違いではないのか?」
「い、いえ……鑑定の水晶玉は正常に作動しています。しかし、この数値は……」
「能力値が全て1だと……生まれてきた赤子でさえも2か3は存在するはずだぞ!?」
「ええっ……」
イヤンの言葉にナオは自分がこの世界の赤子よりも能力が低い事を知り、その割には普通に動ける事に不思議に思うが、画面に表示されている能力以外は普通の人間と同程度は存在するのかも知れない(体力など)。
「国王様、どうされますか?」
「ううむ……他に特筆した能力はないのか?」
「いえ、翻訳の技能スキル以外は彼は何も覚えていません」
「翻訳?」
リンの言葉にナオは水晶玉に視線を向けると、いつの間にか技能スキルの項目に「翻訳――あらゆる言語・文字を理解できる」と表示されており、恐らくはこの世界に訪れる際に覚えた能力だろう。だが、それ以外の能力は何も身に着けていなかった。
「父上!!やはり召喚の儀式は失敗していたのです!!こいつは勇者ではなく、只の一般人です!!」
「うっ……」
イヤンの言葉にナオは表情が引きつり、あながち彼の言葉は間違ってはいない。本来は召喚される勇者の代わりにナオはこの世界に送り込まれたため、彼自身も自分が勇者とは言い切れない。しかし、そんな王子の言葉に国王は慌てて宥める。
「まあ、待て……まだ彼が勇者ではないと確定したわけではない。もうしばらくの間は様子を見ようではないか」
「ですが父上!!」
「ともかく勇者殿……いや、ナオ殿と言ったな。しばらくはこの城の中で過ごすと良い。色々とこの世界の事を教えなければならんからな。リン将軍、悪いが世話役を頼むぞ」
「は、はい!!」
国王の言葉にリンは頷き、王子がこれ以上に何かを言い出す前に彼を外に連れ出す。その様子を王子は忌々しそうに見つめ、そんな彼の視線を感じながらもナオは玉座の間から抜け出した――
――その後、ナオはリンに連れられるままに通路を進み、今更ながらに自分が巨大な建造物に存在する事に気付く。但し、国王は「城」と言っていたが実際は巨大な大樹の内部を削り取って作り出された建造物である事に気付き、全長が300メートルを超える巨大な大樹の中に自分が存在する事を知る。
「うわぁっ……凄い景色だな」
「ここは勇者様のために用意したお部屋です。どうぞご自由にお使いください」
「あ、はい」
ナオが案内されたのは大樹の頂上付近に存在する部屋であり、窓の外の光景を見ると大樹の根本の方に木造性の建物が幾つも並んでいた。リンの話によるとここがエルフ王国の王都らしく、人口は数万人存在するという。
「それでは早速ですが世話役を任された私がこの世界の情勢や常識を教えます。よろしいでしょうか?」
「あ、えっと……」
「お疲れのようでしたら後で説明しますが、どうしますか?」
リンの言葉にナオは考え込み、まだ少し頭が混乱しているので休みたい気持ちはあったが、出来るだけ早くこの世界の事を知りたいと考えた彼は構わずにリンに情報を教えてもらう。
「説明をお願いします」
「分かりました。では、まずはこの世界に存在する種族の国家からお教えしましょう――」
――そこから先はリンの説明が延々と続き、ナオはこの世界には「森人族」の他に「人間」「獣人族」「巨人族」「小髭族」「魔人族」の六種族が存在する事を知る。そして魔人族以外の種族は国家を築いており、人間に至っては「バルトロス帝国」と「和国」の2つの国家を築いていた。
森人族が築いた国家の名前は「エルフ王国」であり、六種族の中でも最も歴史が深い王国だという。しかも驚くべきことに現在の国王は百年以上前から王位を引き継いでおり、実年齢は300才を超えているらしい。森人族は他の種族と比べて長命で魔法の能力に優れた種族だと判明した。
「何っ!?」
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
「ええっ!?」
リンの言葉に玉座の間に存在した人間(エルフだが)全員が驚愕し、ナオ自身も慌てて水晶玉に表示されたステータス画面を確認すると、何故かアイリスと相対していた時とステータスの数値が変更されている事に気付く。少なくとも彼女に見せてもらった画面の能力値の数値は最低値でも「20」は存在したはずだが、即座にアイリスとのやり取りを思い出す。
『貧弱……なんだこりゃ?これが能力なの?』
『それは初期ステータスと能力の成長率が最低値になる代わりにレベルの制限と新しいスキルを覚えるときのSPの消費量が固定化します』
「あれかぁっ!!」
「ど、どうされました勇者様!?」
ナオはアイリスの言葉を思い出し、自分の初期ステータスが低い理由が「貧弱」の異能を身に着けた事が原因だと悟る。レベルの制限とSPの消費量が固定化される能力を身に着けた事になるが、その反面に初期ステータスが大幅に低下しているのだ。そんな事情を知らない森人族達はナオの能力値の異様な低さに疑問を抱く。
「何かの間違いではないのか?」
「い、いえ……鑑定の水晶玉は正常に作動しています。しかし、この数値は……」
「能力値が全て1だと……生まれてきた赤子でさえも2か3は存在するはずだぞ!?」
「ええっ……」
イヤンの言葉にナオは自分がこの世界の赤子よりも能力が低い事を知り、その割には普通に動ける事に不思議に思うが、画面に表示されている能力以外は普通の人間と同程度は存在するのかも知れない(体力など)。
「国王様、どうされますか?」
「ううむ……他に特筆した能力はないのか?」
「いえ、翻訳の技能スキル以外は彼は何も覚えていません」
「翻訳?」
リンの言葉にナオは水晶玉に視線を向けると、いつの間にか技能スキルの項目に「翻訳――あらゆる言語・文字を理解できる」と表示されており、恐らくはこの世界に訪れる際に覚えた能力だろう。だが、それ以外の能力は何も身に着けていなかった。
「父上!!やはり召喚の儀式は失敗していたのです!!こいつは勇者ではなく、只の一般人です!!」
「うっ……」
イヤンの言葉にナオは表情が引きつり、あながち彼の言葉は間違ってはいない。本来は召喚される勇者の代わりにナオはこの世界に送り込まれたため、彼自身も自分が勇者とは言い切れない。しかし、そんな王子の言葉に国王は慌てて宥める。
「まあ、待て……まだ彼が勇者ではないと確定したわけではない。もうしばらくの間は様子を見ようではないか」
「ですが父上!!」
「ともかく勇者殿……いや、ナオ殿と言ったな。しばらくはこの城の中で過ごすと良い。色々とこの世界の事を教えなければならんからな。リン将軍、悪いが世話役を頼むぞ」
「は、はい!!」
国王の言葉にリンは頷き、王子がこれ以上に何かを言い出す前に彼を外に連れ出す。その様子を王子は忌々しそうに見つめ、そんな彼の視線を感じながらもナオは玉座の間から抜け出した――
――その後、ナオはリンに連れられるままに通路を進み、今更ながらに自分が巨大な建造物に存在する事に気付く。但し、国王は「城」と言っていたが実際は巨大な大樹の内部を削り取って作り出された建造物である事に気付き、全長が300メートルを超える巨大な大樹の中に自分が存在する事を知る。
「うわぁっ……凄い景色だな」
「ここは勇者様のために用意したお部屋です。どうぞご自由にお使いください」
「あ、はい」
ナオが案内されたのは大樹の頂上付近に存在する部屋であり、窓の外の光景を見ると大樹の根本の方に木造性の建物が幾つも並んでいた。リンの話によるとここがエルフ王国の王都らしく、人口は数万人存在するという。
「それでは早速ですが世話役を任された私がこの世界の情勢や常識を教えます。よろしいでしょうか?」
「あ、えっと……」
「お疲れのようでしたら後で説明しますが、どうしますか?」
リンの言葉にナオは考え込み、まだ少し頭が混乱しているので休みたい気持ちはあったが、出来るだけ早くこの世界の事を知りたいと考えた彼は構わずにリンに情報を教えてもらう。
「説明をお願いします」
「分かりました。では、まずはこの世界に存在する種族の国家からお教えしましょう――」
――そこから先はリンの説明が延々と続き、ナオはこの世界には「森人族」の他に「人間」「獣人族」「巨人族」「小髭族」「魔人族」の六種族が存在する事を知る。そして魔人族以外の種族は国家を築いており、人間に至っては「バルトロス帝国」と「和国」の2つの国家を築いていた。
森人族が築いた国家の名前は「エルフ王国」であり、六種族の中でも最も歴史が深い王国だという。しかも驚くべきことに現在の国王は百年以上前から王位を引き継いでおり、実年齢は300才を超えているらしい。森人族は他の種族と比べて長命で魔法の能力に優れた種族だと判明した。
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