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入学試験編
第44話 魔人族
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「ぷるぷるぷるっ」
「うわっ!?角が生えた!?」
「いや、耳じゃねえの?」
「もう、二人とも静かにしないとスラミンちゃんが落ち着いて探せないよ~」
スラミンは二つの角(耳?)をぴこぴこと動かして探索を行い、前方に顔を向けて飛び跳ねる。
「ぷるるんっ!!」
「こ、この先に何かいるのか?」
「ぷるんっ」
ダインの問いかけにスラミンは頷き、ハルナの頭の上に戻った。三人はスラミンが示した方向に視線を向け、緊張しながらも先へ進もうとした。
「よ、よし、二人ともいつでも逃げる準備はしておけよ」
「おう、分かった……って、逃げる準備かよ!?そこは戦う準備じゃないのか!?」
「馬鹿野郎!!さっきは僕達の魔法なんて全然通じなかっただろ!?」
「うっと……あ、でもハルナの姉ちゃんならあの化物を従えられるんじゃないのか!?」
「ど、どうだろう……やってみないと分からないけど」
「ぷるんっ……」
赤毛熊のことを思い出した三人は足が震えて前に進めない。しかし、ハルナは自分達を助けてくれた他の魔術師のことを思い出して勇気を振り絞る。
「い、行こう!!もしも危険な目に遭いそうだったら二人は逃げて!!私が何とかしてみせるから!!」
「姉ちゃん……へへ、意外と勇気あるじゃん」
「ううっ……僕一人にするなよ。分かったよ、こうなったら最後まで付き合うよ!!」
「ぷるんっ」
ハルナの言葉にネココは笑みを浮かべ、ダインは渋々と同行する。スラミンは主人のために身を犠牲にする覚悟はできており、川を離れて森の中に踏み込む。
森の奥に進むにつれて足場が悪くなり、足跡を追うのも苦労するがスラミンの探知能力のお陰で魔物の位置は常に特定できた。だが、森の奥に進む程にスラミンは怯える。
「ぷるるるっ……」
「だ、大丈夫?スラミンちゃんが怖いなら鞄の中に隠れてていいよ」
「ぷるんっ」
ハルナが持ち運ぶ鞄にスラミンは潜り込み、彼の反応を見て目的の相手が近いと察した三人は常に周囲を警戒する。
「なあ、本当に赤毛熊の奴は僕達を助けてくれた奴を追ってるのかな……」
「どういう意味だよ?」
「だって冷静に考えたらおかしいじゃないか?赤毛熊を追ってここまで来たけど、そもそも僕達を助けた奴を赤毛熊が今も追いかけてる保証なんてないだろ?」
「あっ!?言われてみれば確かに……」
ここまでの追跡でダインは赤毛熊が本当に自分達を救った人間を追いかけているのが疑問を抱き、実は既に逃走者は赤毛熊を振り切っているのではないかと考えた。
「ここに来るまで足跡を折ってきたけど、そもそも人間の足跡は見つかってないだろ?ならやっぱり赤毛熊は見失ったんだよ」
「じゃ、じゃあ……あたし達のしてることは無駄骨だったのか?」
「きっと僕達を助けた奴はもう逃げ出してるよ!!今なら赤毛熊に見つかる前に逃げられるから、さっさと引き返そう!!」
「う~ん……」
ダインの言葉は正論であり、今までの道中で人間の足跡は発見していない。しかし、ハルナだけは川を渡る時に岩に残された足跡を発見していた。
足跡を見たのは一瞬だけだったが、ハルナは誰かが川を渡ったと確信していた。だが、それから先は一度も足跡を発見していないことは不思議であり、本当に赤毛熊が自分達を救った相手を今も追いかけているのか分からない。
「もしもあたし達を救った奴が逃げ出したなら赤毛熊を追いかけるのはやばくないか?」
「やばいに決まってるだろ!!ハルナ、もういいだろ?きっと僕達を助けた奴は逃げ切れたって……」
「でも、私達が足跡を見つけられていないだけかもしれないよ?」
「その可能性もあるかもしれないけど、ここに来るまで足跡を一つも見つけられないなんておかしいだろ?それにこうして話している間も赤毛熊に見つかる可能性だってあるんだぞ!!」
「う~ん……あたしも兄ちゃんの言うことに賛成だな。きっと逃げ切れたんだよ」
ネココとダインはこれ以上の追跡は無意味だと判断し、元の道を引き返すように提案する。しかし、ハルナは自分達を救ってくれた人物が近くにいるような気がした。
(川を渡る時に見えた足跡は絶対に見間違え何かじゃない。でも、ここまで足跡はないのはどうしてだろう……あれ?)
ハルナは耳を澄ませるとこちらに近付いてくる足音が聞えた。そして彼女の鞄の中に隠れていたスラミンが飛び出す。
「ぷるぷる~んっ!?」
「あ、スラミンちゃん!?」
「どうしたんだよ急に!?」
「ま、まさか……赤毛熊が近付いてるのか!?」
スラミンは一目散に身体を飛び跳ねて移動を行い、それを見て危機を察した三人は後を追いかける。スラミンは飛び跳ねながら移動を行い、最初に通った道を辿って川へと戻る。
「ぷるぷるっ!!」
「スラミンちゃん、落ち着いて!?」
「や、やばい!!こっちに何か来てるぞ!?」
「は、早く川を渡らないと!?」
恐怖のあまりに暴走したスラミンをハルナは落ち着かせようとするが、ダインとネココは森の方から赤毛熊の鳴き声を耳にした。
――ガァアアアアッ!!
先ほど三人を襲ったのと同一個体の赤毛熊が迫っており、慌ててダインはスラミンを捕まえて川を渡るように指示すると、ハルナはスラミンを何とか捕まえる。
「スラミンちゃん!!お願いだから言うことを聞いて!!」
「ぷるんっ!?」
「ああ、姉ちゃんに挟まれて凄い形に変化した!?」
「ふざけてる場合か!?やばいってこれ……こっちに来るぞ!?」
茂みを掻き分けながら移動する音まで聞こえ始め、あと数秒もしないうちに赤毛熊が現れると判断したダインは影魔法の準備を行う。ネココも杖を地面に突き刺して魔法を発動させた。
「兄ちゃん、あたし達が時間を稼ぐぞ!!アースハンマー!!」
「く、くそぉっ……やるしかないのか!?」
「スラミンちゃん、早くおっきくなって!?」
「ぷるるるっ……」
ハルナは逃げるためにスラミンに川の水を吸わせて巨大化させる。スラミンが膨れ上がれば三人は川を安全に渡ることができるが、その前に森の奥から遂に赤毛熊が出現した。
「ガァアアアッ!!」
「わああっ!?もう来ちゃった!?」
「く、来るならこい!!ダインの兄ちゃんが相手だ!!」
「待て待て待て!!僕を犠牲にするつもりか!?」
土砂を練り固めて杖に土塊をくっつかせて「土槌」を完成させたネココだったが、ダインの後ろにちゃっかりと隠れる。だが、森から現れた赤毛熊は様子がおかしく、三人を無視して川の方へ向かう。
何があったのか赤毛熊は既に怪我を負っており、全身が鋭い刃物で切り付けられたような傷跡が残っていた。既に傷だらけの赤毛熊を見て三人は驚き、一方で赤毛熊は三人など無視して川を渡ろうとする。
「ガアアッ……!?」
「な、何だこいつ……傷だらけじゃないか?」
「まさか川を渡るつもりか?」
「む、無茶だよ!!そんな傷で川に入れば死んじゃうよ!?」
全身に傷を負いながらも川を渡ろうとする赤毛熊をハルナは引き留めようとするが、彼女が近付く前に森の方から巨大な斧が飛んできた。
「アガァッ――!?」
「きゃあっ!?」
「ひいっ!?」
「な、何だよ今度は!?」
森から飛んできた斧は赤毛熊の後頭部に的中し、頭に斧の刃がめり込んだ赤毛熊は川原に倒れ込む。三人はそれを見て愕然とするが、森の奥から木々が倒れる音が鳴り響き、巨大な牛と人間が合わさったような化物が出現した。
――ブモォオオオッ!!
獣魔の森の中でも一、二を誇る危険度の魔人族の「ミノタウロス」が三人の前に姿を現わした。
「うわっ!?角が生えた!?」
「いや、耳じゃねえの?」
「もう、二人とも静かにしないとスラミンちゃんが落ち着いて探せないよ~」
スラミンは二つの角(耳?)をぴこぴこと動かして探索を行い、前方に顔を向けて飛び跳ねる。
「ぷるるんっ!!」
「こ、この先に何かいるのか?」
「ぷるんっ」
ダインの問いかけにスラミンは頷き、ハルナの頭の上に戻った。三人はスラミンが示した方向に視線を向け、緊張しながらも先へ進もうとした。
「よ、よし、二人ともいつでも逃げる準備はしておけよ」
「おう、分かった……って、逃げる準備かよ!?そこは戦う準備じゃないのか!?」
「馬鹿野郎!!さっきは僕達の魔法なんて全然通じなかっただろ!?」
「うっと……あ、でもハルナの姉ちゃんならあの化物を従えられるんじゃないのか!?」
「ど、どうだろう……やってみないと分からないけど」
「ぷるんっ……」
赤毛熊のことを思い出した三人は足が震えて前に進めない。しかし、ハルナは自分達を助けてくれた他の魔術師のことを思い出して勇気を振り絞る。
「い、行こう!!もしも危険な目に遭いそうだったら二人は逃げて!!私が何とかしてみせるから!!」
「姉ちゃん……へへ、意外と勇気あるじゃん」
「ううっ……僕一人にするなよ。分かったよ、こうなったら最後まで付き合うよ!!」
「ぷるんっ」
ハルナの言葉にネココは笑みを浮かべ、ダインは渋々と同行する。スラミンは主人のために身を犠牲にする覚悟はできており、川を離れて森の中に踏み込む。
森の奥に進むにつれて足場が悪くなり、足跡を追うのも苦労するがスラミンの探知能力のお陰で魔物の位置は常に特定できた。だが、森の奥に進む程にスラミンは怯える。
「ぷるるるっ……」
「だ、大丈夫?スラミンちゃんが怖いなら鞄の中に隠れてていいよ」
「ぷるんっ」
ハルナが持ち運ぶ鞄にスラミンは潜り込み、彼の反応を見て目的の相手が近いと察した三人は常に周囲を警戒する。
「なあ、本当に赤毛熊の奴は僕達を助けてくれた奴を追ってるのかな……」
「どういう意味だよ?」
「だって冷静に考えたらおかしいじゃないか?赤毛熊を追ってここまで来たけど、そもそも僕達を助けた奴を赤毛熊が今も追いかけてる保証なんてないだろ?」
「あっ!?言われてみれば確かに……」
ここまでの追跡でダインは赤毛熊が本当に自分達を救った人間を追いかけているのが疑問を抱き、実は既に逃走者は赤毛熊を振り切っているのではないかと考えた。
「ここに来るまで足跡を折ってきたけど、そもそも人間の足跡は見つかってないだろ?ならやっぱり赤毛熊は見失ったんだよ」
「じゃ、じゃあ……あたし達のしてることは無駄骨だったのか?」
「きっと僕達を助けた奴はもう逃げ出してるよ!!今なら赤毛熊に見つかる前に逃げられるから、さっさと引き返そう!!」
「う~ん……」
ダインの言葉は正論であり、今までの道中で人間の足跡は発見していない。しかし、ハルナだけは川を渡る時に岩に残された足跡を発見していた。
足跡を見たのは一瞬だけだったが、ハルナは誰かが川を渡ったと確信していた。だが、それから先は一度も足跡を発見していないことは不思議であり、本当に赤毛熊が自分達を救った相手を今も追いかけているのか分からない。
「もしもあたし達を救った奴が逃げ出したなら赤毛熊を追いかけるのはやばくないか?」
「やばいに決まってるだろ!!ハルナ、もういいだろ?きっと僕達を助けた奴は逃げ切れたって……」
「でも、私達が足跡を見つけられていないだけかもしれないよ?」
「その可能性もあるかもしれないけど、ここに来るまで足跡を一つも見つけられないなんておかしいだろ?それにこうして話している間も赤毛熊に見つかる可能性だってあるんだぞ!!」
「う~ん……あたしも兄ちゃんの言うことに賛成だな。きっと逃げ切れたんだよ」
ネココとダインはこれ以上の追跡は無意味だと判断し、元の道を引き返すように提案する。しかし、ハルナは自分達を救ってくれた人物が近くにいるような気がした。
(川を渡る時に見えた足跡は絶対に見間違え何かじゃない。でも、ここまで足跡はないのはどうしてだろう……あれ?)
ハルナは耳を澄ませるとこちらに近付いてくる足音が聞えた。そして彼女の鞄の中に隠れていたスラミンが飛び出す。
「ぷるぷる~んっ!?」
「あ、スラミンちゃん!?」
「どうしたんだよ急に!?」
「ま、まさか……赤毛熊が近付いてるのか!?」
スラミンは一目散に身体を飛び跳ねて移動を行い、それを見て危機を察した三人は後を追いかける。スラミンは飛び跳ねながら移動を行い、最初に通った道を辿って川へと戻る。
「ぷるぷるっ!!」
「スラミンちゃん、落ち着いて!?」
「や、やばい!!こっちに何か来てるぞ!?」
「は、早く川を渡らないと!?」
恐怖のあまりに暴走したスラミンをハルナは落ち着かせようとするが、ダインとネココは森の方から赤毛熊の鳴き声を耳にした。
――ガァアアアアッ!!
先ほど三人を襲ったのと同一個体の赤毛熊が迫っており、慌ててダインはスラミンを捕まえて川を渡るように指示すると、ハルナはスラミンを何とか捕まえる。
「スラミンちゃん!!お願いだから言うことを聞いて!!」
「ぷるんっ!?」
「ああ、姉ちゃんに挟まれて凄い形に変化した!?」
「ふざけてる場合か!?やばいってこれ……こっちに来るぞ!?」
茂みを掻き分けながら移動する音まで聞こえ始め、あと数秒もしないうちに赤毛熊が現れると判断したダインは影魔法の準備を行う。ネココも杖を地面に突き刺して魔法を発動させた。
「兄ちゃん、あたし達が時間を稼ぐぞ!!アースハンマー!!」
「く、くそぉっ……やるしかないのか!?」
「スラミンちゃん、早くおっきくなって!?」
「ぷるるるっ……」
ハルナは逃げるためにスラミンに川の水を吸わせて巨大化させる。スラミンが膨れ上がれば三人は川を安全に渡ることができるが、その前に森の奥から遂に赤毛熊が出現した。
「ガァアアアッ!!」
「わああっ!?もう来ちゃった!?」
「く、来るならこい!!ダインの兄ちゃんが相手だ!!」
「待て待て待て!!僕を犠牲にするつもりか!?」
土砂を練り固めて杖に土塊をくっつかせて「土槌」を完成させたネココだったが、ダインの後ろにちゃっかりと隠れる。だが、森から現れた赤毛熊は様子がおかしく、三人を無視して川の方へ向かう。
何があったのか赤毛熊は既に怪我を負っており、全身が鋭い刃物で切り付けられたような傷跡が残っていた。既に傷だらけの赤毛熊を見て三人は驚き、一方で赤毛熊は三人など無視して川を渡ろうとする。
「ガアアッ……!?」
「な、何だこいつ……傷だらけじゃないか?」
「まさか川を渡るつもりか?」
「む、無茶だよ!!そんな傷で川に入れば死んじゃうよ!?」
全身に傷を負いながらも川を渡ろうとする赤毛熊をハルナは引き留めようとするが、彼女が近付く前に森の方から巨大な斧が飛んできた。
「アガァッ――!?」
「きゃあっ!?」
「ひいっ!?」
「な、何だよ今度は!?」
森から飛んできた斧は赤毛熊の後頭部に的中し、頭に斧の刃がめり込んだ赤毛熊は川原に倒れ込む。三人はそれを見て愕然とするが、森の奥から木々が倒れる音が鳴り響き、巨大な牛と人間が合わさったような化物が出現した。
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