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衝撃は突然に② ※ある貴族令嬢
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「ここが騎士団の寮なのね。…それにしても凄い人の数だわ。」
私達が王立公園の騎士団寮に着いた時、そこには既に30人近くの女性がおりました。
若い女性が多く、おそらく全員がリフエール様目当てなのでしょう。
「ディアナがいてくれて良かったわ!」
リアの声に、隣のディアナが頷きます。
「任せてちょうだい!リフエール様の勤務時間は把握しているわ!」
このディアナは、私とリアを馬車に乗せてくれた貴族街に住む令嬢なのですが…。
馬車の中でこんな事を教えてくれたのです。
『ええ⁉︎貴女達リフエール様目当てだったの?
今日の勤務時間だと、今からでは見られないわよ?』
彼女はしょっちゅう家を抜け出して街に繰り出しているお転婆で、騎士団寮にも何度も行っているそうなのです。
そのディアナが言うには、騎士団には『勤務シフト』と言うものがあり、ただ行っただけではリフエール様に遭遇できないとの事。
『今日は夜警だから、明日の朝お帰りになるわ!
今日は我が家に泊まって、明日の朝一緒に行きましょうよ!明日は学院も休みだし!』
気のいい彼女の提案を有り難く受けさせていただき、私達は翌日…つまり今日の朝出直す事となったのです。
あ、学院の方にはディアナのお家から届けを出して貰ったので大丈夫ですわよ。
ディアナのお家は我が家と違って寛容で、とてもユニークなご両親のようです。
さて、そうしてやって来た騎士団寮。
建物自体は綺麗ながらも落ち着いた様相なのですが、ヨシノの花がそれは見事に咲き誇っていて大変に華やかです。
それも相まってか、女性達の間には興奮したお喋りに花が咲きとても賑やかでありました。
それにしても、こんなに人が居てはお邪魔になってしまうのではないかしら?
私が一抹の不安を感じた時でした。
「誰かしら、あれ。」
誰かが声を上げた方向を見ると、そこには一人の男性が立っています。
ーー男性、ですよね?
背は高くスラリとしていて、男性なのだとは思うのですが…それにしては美しすぎるのです。
白い肌に、風にフワリと舞うアッシュブラウンの髪。
輝くエメラルド色の瞳に艶々の唇。
造形が柔らかく整っていて『可憐』と言う言葉がピッタリなのです。
「…私にだけ見える訳じゃないわよね?」
隣でリアが呟きますが、気持ちは分かります。
ヨシノの花に囲まれた麗人は、まるで妖精であるかのよう。
「しっ!静かに!あまり騒ぐと驚いてしまうかもしれないわ!」
市民の間で流行っている『ポニーテール』と言う髪型の女性が、その場の皆に語りかけます。
「この場で大人しく見ていましょう。
ここより前には出ちゃダメ!しっかり並んで!」
今まで好き勝手に散らばっていた女性達がその言葉に素直に従います。
ピシリと列を組んだ女性達は、さながら訓練された騎士のよう。
「裏口の子達にも教えてあげて!」
ポニーテールさんの指示の元、数人が音を立てずに裏口に回ります。
「伝令と隠密…」
隣でディアナがポツリと呟きました。
暫くして訝しげにやって来た裏口にいた女性達も、彼を目にして惚けたように隊列に加わりました。
その場にいた全員の思いは一つ。
この方が、思う存分ヨシノを楽しめますように。
そして、そのお姿を私達に堪能させて下さい!
その時でした。
ふいに、彼がこちらを見てフワリと微笑んだのです。
「(ななな!なんて神々しいの⁉︎)」
隊列が声を顰めて興奮します。
そのお顔の破壊力たるや、美しすぎて女として張り合う等と言う気も起こりません。
そして、彼はこう言ったのです。
『リフエール様』
『お会いしたくて来てしまいました。』
驚いて背後を見ると、隊列の後方に男性が三人おりました。
何方も素晴らしい体躯なので、騎士団の方でしょう。
その中の真ん中にいらっしゃるのが、太陽に煌めく金髪の男性。
輝く碧の瞳が世の女性を虜にしている方ーーー。
「リフエール様…。」
憧れの男性を前に、リアが呟きます。
ですが彼女は興奮する事もなく、ジッと彼を見詰めるだけ。
周りの女性も全員がリフエール様目当てに来ているはずですが、全く騒ぐ気配はありません。
理由はただ一つ。
ヨシノの妖精がリフエール様とお話しされる事を望まれている!!!
これは絶対に叶えなければなりません。
どうしたものかとポニーテールさんを見ると、彼女がくっつけた両手を離す動作をします。
これは…道を開けろの合図だわ!!!
彼女のハンドサインの意味を明確に理解した私達は、二つに別れて道を作りました。
この道が、お二人を繋ぐのだわ!!!
そう思うと誇らしい事をした気持ちになります。
『お会いできて光栄です、シエラ様。』
リフエール様が驚きながらもそうおっしゃいました。
どうやら、妖精はシエラ様と言うお名前のようです。
『ですが、なにかあったら心配なので次からは私に迎えに行かせて下さいね。』
そう言って微笑む様子は限りなく優しいお顔。
そして、それを言われた妖精…もとい、シエラ様は頬をほんのりと染められてーー。
お二人共まるで、愛しい恋人を見るような、甘い甘い眼差しーーーー。
尊いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
雷に打たれたかのように、全員が地面に膝をついたのでした。
●●●
久しぶりの更新になりましたm(_ _)m
今後書きたいシーンが沢山あるんですが…ままならない!笑
私達が王立公園の騎士団寮に着いた時、そこには既に30人近くの女性がおりました。
若い女性が多く、おそらく全員がリフエール様目当てなのでしょう。
「ディアナがいてくれて良かったわ!」
リアの声に、隣のディアナが頷きます。
「任せてちょうだい!リフエール様の勤務時間は把握しているわ!」
このディアナは、私とリアを馬車に乗せてくれた貴族街に住む令嬢なのですが…。
馬車の中でこんな事を教えてくれたのです。
『ええ⁉︎貴女達リフエール様目当てだったの?
今日の勤務時間だと、今からでは見られないわよ?』
彼女はしょっちゅう家を抜け出して街に繰り出しているお転婆で、騎士団寮にも何度も行っているそうなのです。
そのディアナが言うには、騎士団には『勤務シフト』と言うものがあり、ただ行っただけではリフエール様に遭遇できないとの事。
『今日は夜警だから、明日の朝お帰りになるわ!
今日は我が家に泊まって、明日の朝一緒に行きましょうよ!明日は学院も休みだし!』
気のいい彼女の提案を有り難く受けさせていただき、私達は翌日…つまり今日の朝出直す事となったのです。
あ、学院の方にはディアナのお家から届けを出して貰ったので大丈夫ですわよ。
ディアナのお家は我が家と違って寛容で、とてもユニークなご両親のようです。
さて、そうしてやって来た騎士団寮。
建物自体は綺麗ながらも落ち着いた様相なのですが、ヨシノの花がそれは見事に咲き誇っていて大変に華やかです。
それも相まってか、女性達の間には興奮したお喋りに花が咲きとても賑やかでありました。
それにしても、こんなに人が居てはお邪魔になってしまうのではないかしら?
私が一抹の不安を感じた時でした。
「誰かしら、あれ。」
誰かが声を上げた方向を見ると、そこには一人の男性が立っています。
ーー男性、ですよね?
背は高くスラリとしていて、男性なのだとは思うのですが…それにしては美しすぎるのです。
白い肌に、風にフワリと舞うアッシュブラウンの髪。
輝くエメラルド色の瞳に艶々の唇。
造形が柔らかく整っていて『可憐』と言う言葉がピッタリなのです。
「…私にだけ見える訳じゃないわよね?」
隣でリアが呟きますが、気持ちは分かります。
ヨシノの花に囲まれた麗人は、まるで妖精であるかのよう。
「しっ!静かに!あまり騒ぐと驚いてしまうかもしれないわ!」
市民の間で流行っている『ポニーテール』と言う髪型の女性が、その場の皆に語りかけます。
「この場で大人しく見ていましょう。
ここより前には出ちゃダメ!しっかり並んで!」
今まで好き勝手に散らばっていた女性達がその言葉に素直に従います。
ピシリと列を組んだ女性達は、さながら訓練された騎士のよう。
「裏口の子達にも教えてあげて!」
ポニーテールさんの指示の元、数人が音を立てずに裏口に回ります。
「伝令と隠密…」
隣でディアナがポツリと呟きました。
暫くして訝しげにやって来た裏口にいた女性達も、彼を目にして惚けたように隊列に加わりました。
その場にいた全員の思いは一つ。
この方が、思う存分ヨシノを楽しめますように。
そして、そのお姿を私達に堪能させて下さい!
その時でした。
ふいに、彼がこちらを見てフワリと微笑んだのです。
「(ななな!なんて神々しいの⁉︎)」
隊列が声を顰めて興奮します。
そのお顔の破壊力たるや、美しすぎて女として張り合う等と言う気も起こりません。
そして、彼はこう言ったのです。
『リフエール様』
『お会いしたくて来てしまいました。』
驚いて背後を見ると、隊列の後方に男性が三人おりました。
何方も素晴らしい体躯なので、騎士団の方でしょう。
その中の真ん中にいらっしゃるのが、太陽に煌めく金髪の男性。
輝く碧の瞳が世の女性を虜にしている方ーーー。
「リフエール様…。」
憧れの男性を前に、リアが呟きます。
ですが彼女は興奮する事もなく、ジッと彼を見詰めるだけ。
周りの女性も全員がリフエール様目当てに来ているはずですが、全く騒ぐ気配はありません。
理由はただ一つ。
ヨシノの妖精がリフエール様とお話しされる事を望まれている!!!
これは絶対に叶えなければなりません。
どうしたものかとポニーテールさんを見ると、彼女がくっつけた両手を離す動作をします。
これは…道を開けろの合図だわ!!!
彼女のハンドサインの意味を明確に理解した私達は、二つに別れて道を作りました。
この道が、お二人を繋ぐのだわ!!!
そう思うと誇らしい事をした気持ちになります。
『お会いできて光栄です、シエラ様。』
リフエール様が驚きながらもそうおっしゃいました。
どうやら、妖精はシエラ様と言うお名前のようです。
『ですが、なにかあったら心配なので次からは私に迎えに行かせて下さいね。』
そう言って微笑む様子は限りなく優しいお顔。
そして、それを言われた妖精…もとい、シエラ様は頬をほんのりと染められてーー。
お二人共まるで、愛しい恋人を見るような、甘い甘い眼差しーーーー。
尊いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
雷に打たれたかのように、全員が地面に膝をついたのでした。
●●●
久しぶりの更新になりましたm(_ _)m
今後書きたいシーンが沢山あるんですが…ままならない!笑
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