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衝撃は突然に ※ある貴族令嬢
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その光景を目にした時、私は雷に撃たれたような衝撃でしたわ。
周りの皆様もその様だったはず。
だって、どなたも私と同じ顔をしていたのですもの。
私は、とある貴族の次女としてこのフェリトリンド王国に生を受けました。
家名は明かしませんことよ?
何故かと言いますと、私が今日、騎士団寮を訪れたのは両親には絶対に秘密だからなのです。
だってそうでしょう?
いくら幼馴染(こちらも貴族令嬢なので名前は伏せますわ)の頼みとは言え、市民に混ざって騎士団を見に行くなんて。
お父様が知ったら、私も幼馴染も領地の自室に閉じ込められてしまいます。
あぁ、誤解の無い様に申しておきますが、決して市民を下に見ている訳ではこざいません。
ただ、私達は貴族である以上、市民が幸せに生活できるように導く使命がございます。
そのように立場が違いますので、市民と一緒になって騒ぐ等と言う事は言語道断なのです。
ええ、そうなのです。
お父様的には。。。
私も概ねその意見には賛成でしたが、つい魔が差したとでも言いますかーー。
幼馴染に誘われた時、心が大きく動いてしまったのです。
『貴女、王国騎士団のリフエール様を見た事がある⁉︎それはそれは素敵なのよ!!』
私と幼馴染は貴族学院の生徒でありますから、当然リフエール様のお噂は知っておりました。
美しく男らしい外見。
均整の取れた素晴らしい体躯。
優しく親しみやすいお心。
貴族としては下位ながら、彼と結婚したいと願う貴族令嬢のなんと多いことか。
彼のお写真を密かに持ち歩いている生徒が大多数を占めるのも、無理からぬ事なのです。
「リフエール様?一度お見かけした事はあるけれど。」
『騎士団の任務中の所を遠くから、と言うことでしょう⁉︎私が言ってるのは違うのよ!間近で、何だったらお話しもできるんだから!』
大興奮の友人が言うには、リフエール様は騎士団の寮にお住まいなのだそうです。
そして、その寮があるのは王宮の隣、一般に開放されている公園の敷地内。
『つまり!寮にお帰りになるリフエール様を誰に咎められる事もなく見られるのよ!!』
まぁ。それは凄い事ですわね。
友人が興奮するのも分かる気がします。
ですが、次の台詞には言葉を失いました。
『行くわよ!ヴィオラ!!』
行くって…私達は貴族令嬢ですわよ⁉︎
そんな風に騎士様を待ち伏せなんて大変はしたない事はできません。
お父様に知られたら、罰として何週間も邸宅に閉じ込められてしまいます。
ああ、『ヴィオラ』と言うのは私の愛称です。
それ位なら明かしても差し障りありません。
因みに友人の愛称は『リア』と言います。
「リア、そんな事ができるはずないでしょう?」
『それが、できるのよ!これを使えばね!!』
高らかに宣言したリアが鞄から取り出したのは、ワンピース。
ですが、普段私達が着る物と生地や縫製が違います。
「これは…市民の服⁉︎」
『ご名答よ!手に入れるのに苦労したんだから!これを着ていけば私達が貴族だなんてバレないわ!』
靴と帽子までセットになったそれは、ご丁寧に私の分も用意されていました。
「それでも、待ち伏せなんて目立つでしょう?
それに、どうやってそこまで行くの?」
この学院から騎士団寮があると言う公園まで、馬車で30分はかかります。
私とリアは学院の寮で生活をしているのですが、馬車は基本的に実家が迎えを寄越してくれる物。
実家に帰る時以外に寮を出るのは、原則として禁止なのですから。
『何言ってるのよ!皆んなコッソリ街に出てるじゃない。やり方があるのよ!』
私は知らなかったのですが、どうも内緒で街に繰り出す生徒は大勢いるそうなのです。
『家から馬車で通っている生徒に同乗させてもらうの。貴族街からなら公園まで歩いて行けるわ!』
成る程、学院側には『友人宅で勉強をする』とでも申請すれば良いのですね。
『因みに、請け負ってくれる生徒がいるから大丈夫よ!それにリフエール様を待ち伏せしてる女性は他にもいるから目立つ何て事もないの!』
そう言われて、反論する所が無くなってしまいました。
…いいえ、それは嘘ですわね。
私はそう思い込みたかったのです。
だって、女性しかいない学院では恋をする事がありません。
素敵な殿方を見て心をときめかせてみたいと言う思いは存分に持ち合わせていたのです。
それから、少しの冒険心も。
厳しいお父様の事は尊敬していますが、私はまだ16歳。
色々な世界を見て、体験してみたいのです。
『ほら、行くわよ!ピンクの方譲ってあげるから!』
ワンピースをヒラヒラと振るリアの言葉にも後押しされて、私はその日の放課後、騎士団の寮へ向かう事となりました。
●●●
次回もヴィオラちゃん目線です。
シエラとリフが周りからどう見えたのか、存分に語ってもらいましょう(*´∀`*)笑
周りの皆様もその様だったはず。
だって、どなたも私と同じ顔をしていたのですもの。
私は、とある貴族の次女としてこのフェリトリンド王国に生を受けました。
家名は明かしませんことよ?
何故かと言いますと、私が今日、騎士団寮を訪れたのは両親には絶対に秘密だからなのです。
だってそうでしょう?
いくら幼馴染(こちらも貴族令嬢なので名前は伏せますわ)の頼みとは言え、市民に混ざって騎士団を見に行くなんて。
お父様が知ったら、私も幼馴染も領地の自室に閉じ込められてしまいます。
あぁ、誤解の無い様に申しておきますが、決して市民を下に見ている訳ではこざいません。
ただ、私達は貴族である以上、市民が幸せに生活できるように導く使命がございます。
そのように立場が違いますので、市民と一緒になって騒ぐ等と言う事は言語道断なのです。
ええ、そうなのです。
お父様的には。。。
私も概ねその意見には賛成でしたが、つい魔が差したとでも言いますかーー。
幼馴染に誘われた時、心が大きく動いてしまったのです。
『貴女、王国騎士団のリフエール様を見た事がある⁉︎それはそれは素敵なのよ!!』
私と幼馴染は貴族学院の生徒でありますから、当然リフエール様のお噂は知っておりました。
美しく男らしい外見。
均整の取れた素晴らしい体躯。
優しく親しみやすいお心。
貴族としては下位ながら、彼と結婚したいと願う貴族令嬢のなんと多いことか。
彼のお写真を密かに持ち歩いている生徒が大多数を占めるのも、無理からぬ事なのです。
「リフエール様?一度お見かけした事はあるけれど。」
『騎士団の任務中の所を遠くから、と言うことでしょう⁉︎私が言ってるのは違うのよ!間近で、何だったらお話しもできるんだから!』
大興奮の友人が言うには、リフエール様は騎士団の寮にお住まいなのだそうです。
そして、その寮があるのは王宮の隣、一般に開放されている公園の敷地内。
『つまり!寮にお帰りになるリフエール様を誰に咎められる事もなく見られるのよ!!』
まぁ。それは凄い事ですわね。
友人が興奮するのも分かる気がします。
ですが、次の台詞には言葉を失いました。
『行くわよ!ヴィオラ!!』
行くって…私達は貴族令嬢ですわよ⁉︎
そんな風に騎士様を待ち伏せなんて大変はしたない事はできません。
お父様に知られたら、罰として何週間も邸宅に閉じ込められてしまいます。
ああ、『ヴィオラ』と言うのは私の愛称です。
それ位なら明かしても差し障りありません。
因みに友人の愛称は『リア』と言います。
「リア、そんな事ができるはずないでしょう?」
『それが、できるのよ!これを使えばね!!』
高らかに宣言したリアが鞄から取り出したのは、ワンピース。
ですが、普段私達が着る物と生地や縫製が違います。
「これは…市民の服⁉︎」
『ご名答よ!手に入れるのに苦労したんだから!これを着ていけば私達が貴族だなんてバレないわ!』
靴と帽子までセットになったそれは、ご丁寧に私の分も用意されていました。
「それでも、待ち伏せなんて目立つでしょう?
それに、どうやってそこまで行くの?」
この学院から騎士団寮があると言う公園まで、馬車で30分はかかります。
私とリアは学院の寮で生活をしているのですが、馬車は基本的に実家が迎えを寄越してくれる物。
実家に帰る時以外に寮を出るのは、原則として禁止なのですから。
『何言ってるのよ!皆んなコッソリ街に出てるじゃない。やり方があるのよ!』
私は知らなかったのですが、どうも内緒で街に繰り出す生徒は大勢いるそうなのです。
『家から馬車で通っている生徒に同乗させてもらうの。貴族街からなら公園まで歩いて行けるわ!』
成る程、学院側には『友人宅で勉強をする』とでも申請すれば良いのですね。
『因みに、請け負ってくれる生徒がいるから大丈夫よ!それにリフエール様を待ち伏せしてる女性は他にもいるから目立つ何て事もないの!』
そう言われて、反論する所が無くなってしまいました。
…いいえ、それは嘘ですわね。
私はそう思い込みたかったのです。
だって、女性しかいない学院では恋をする事がありません。
素敵な殿方を見て心をときめかせてみたいと言う思いは存分に持ち合わせていたのです。
それから、少しの冒険心も。
厳しいお父様の事は尊敬していますが、私はまだ16歳。
色々な世界を見て、体験してみたいのです。
『ほら、行くわよ!ピンクの方譲ってあげるから!』
ワンピースをヒラヒラと振るリアの言葉にも後押しされて、私はその日の放課後、騎士団の寮へ向かう事となりました。
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次回もヴィオラちゃん目線です。
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