ショコラ伯爵の悩ましい日常

あさひてまり

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説明ぃぃぃ!! ※シエラ

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「あの…ミリ?……ミリさん??」

「私、集中すると周りの音が一切聞こえないタイプなんですよね。」

戸惑う僕の声に、ミリがにべもなく返して来る。

「いやいや、それ言ってる時点で聞こえてんじゃん!」

真っ当なツッコミはスルーされた。
聞こえないふりをしてまでミリが何をしているかと言うと…

「いつもの事だけど、ファンデーションはいらないわね。ルースパウダーを少し叩いて、チークをぼかすだけでいいわ。
どうしてこんなに肌が白くて綺麗なのかしら…。」

ブツブツ言いながら、僕の顔面に化粧アートを施していく。

「うぅ、ミリぃ!どう頑張っても地味顔は変わらないよ!」


どうしてこんな事になっているのか。
それは、リフエール様と「契約」した1週間前に遡るーー。



あの日、ヨシノの花が散るまでに騎士団寮に押しかけるファンをどうにかすると約束した。

…って言うかミリが独断で約束した。

僕的には、それは流石に無理なんじゃない?って思ってたんだけど。
どう言う方法でやるのかも分かんないしさ。

ただミリには確信があるみたいで、リフエール様に仕事のシフトを聞いたりしてた。
騎士団は三交代制みたいで、特に寮に帰る時間を知りたがってたけど…何か関係あるのかな?

リフエール様も同じ疑問を持ってたと思う。
取り敢えずこっちを先に片付けて、恋人のふりはその後にと言うミリに「有難いですが、ご無理はなさらず…。」と言い置いて帰って行ったから。



驚いた事に、その日以降もミリは特に何かする訳でもなく普通に過ごしてた。

僕は不安になって「何かしなくていいの?」って何回も聞いたんだけどさ。
「大丈夫です。ご心配なく。」とだけ。

本当に大丈夫なの⁉︎
約束の2週間なんてあっと言う間じゃない⁉︎

って思ってたら、1週間経った今日。
突然ミリが動いた。

「全て揃いました。」


そして何故かお風呂にぶち込まれ、湯上がりにエステ並みのマッサージをされ…。

肌がプルプルになった所で顔面への化粧アートが始まってしまった。

髪はハーフアップで、アップにした部分は何だか複雑に編み込まれてる。

服は袖にフリルがついたシャツに細身のパンツ。
白のベストには金糸の繊細な模様が入ってる。

そして、フワリと纏うの極薄いピンクのショール。
白にほんのり色が付いたような上品な物で、触り心地も抜群だ。
リョウの感覚で言うとシルクが近いかも。

あれ、でもこんなの持ってたっけ?

「トッド様にお願いして今日届いた物ですよ。」

僕の心を読んだかのようなミリの声。

「え?ショールなら他にもあるのに?」

「その色のが欲しかったんです。」

…ますます意味が分かんないよ。


「それと、王宮の敷地内への立ち入り許可が降りました。」

ミリは僕を立たせて最終確認をしながら言う。

「ふーん。」

僕はされるがままだ。
最後に唇をツヤツヤにコーティングされて支度は終わったらしい。

はぁ。いくらとは言え、メイクまでする必要あったのかな。

……ん???


ミリがあまりにもサラッと言ったから普通に対応しちゃったけど、王宮の敷地内への立ち入り許可って何⁉︎

どうやったらそんな許可が降りるの⁉︎
伯爵家の三男なんかそうそう王宮なんて行けるもんじゃないよ⁉︎

「ミリ、聞き間違いかな?王宮の敷地内に入るなんて事ないよね?」

「合ってますよ。今から向かいます。」

ヒュッと僕が息を呑むのに構わず、ミリは僕の背を押して部屋から出す。

「ま、待ってミリ!説明して!!」

「馬車の中でします。」

「今!!今すぐに!!」

僕の剣幕に、ミリは仕方なく足を止める。

「向かうのは正確には騎士団寮です。あそこは一応王宮の敷地内なので、トッド様経由で許可を取りました。後々面倒になったら困るので。」

「これにもトッドが一枚噛んでるのか!
…え、でも何しに行くの??」

するとミリは至極当然と言った顔で言った。

「リフエール様との約束を果たしに行きます。」




●●●
トッドに不可能は無い!笑































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