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契約成立 ※リフエール
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「我が主のお願いを聞いていただけるようでしたら、ヨシノが散り終わるまでに今申しました事を実現致しましょう。」
ミリ殿の言葉が俄には信じられず唖然としていると、目の前のシエラ様も同じ反応をしていることが分かった。
この件に関しては完全にミリ殿主導らしい。
いや、恋人のふりと言う計画そのものがミリ殿の発案なのかもしれない。
シエラ様は完全にミリ殿を信頼しているようだし、この二人、主従関係と言うよりもっと親密な感じがする。
どこかで体感したようなその空気を言い表す言葉を思い出せなくてもどかしい。
計画の全容は理解したし、俺が周りを騙すことにならないように配慮もしてくれている。
シエラ様のショコラを語るキラキラした目を見れば、金儲けのためではないと言う言葉も信じられる。
と言うか、貴族街に邸宅を2軒も所有する家の子息が金に執着するとは到底思えない。
お互いに婚約者や想い人がいないことも確認済み。
正直、シエラ様に婚約者がいないと聞いた時は口元がニヤけそうになってしまった。
良く考えれば、俺がそれを喜ぶなんておかしな話しなのだがーー
そのエメラルドに映る人間がいないことに、何故か胸が躍った。
家とは疎遠らしく、コンウォール伯爵家に迷惑をかけることもないらしい。
シエラ様の夢は純粋に応援したいと思うし、これは断る理由が無くなってきたような…。
そして、もし周りから率直な質問を受けた場合の対応。
シエラ様が実践してくれたのだがーー。
可愛い過ぎて撃沈した。
一瞬伏せた睫毛が白い肌に影を落とし、憂いを帯びる。
かと思えば、潤んだ瞳でこちらを上目遣いに見上げる様は大変に庇護欲をそそられる。
そこからの、小首を傾げてはにかんだような天使の微笑み。
「リフエール様とは親しくさせていただいております。」
破壊力が強すぎて思わず呻いたのは仕方ないだろう。
この可憐な貴人の「親しくしている」相手が俺だと言うことに対して、物凄く溜飲が下がる。
そして、だいぶ傾きかけた心の内を読み取ったかのような提案。
女性達を花に例えた物言いは流石、上流階級と言った所だろうか。
つまりは、騎士団寮に殺到している彼女達をどうにかしてくれると言うことのようだ。
それも穏便な方法で、ヨシノの花が散るまでに…たった2週間でそれが可能だと言う。
俺が毎日多くの女性達に待ち伏せされていることは既に王都に広まっているが、それが原因で寮を追い出されそうな事は騎士団の上層部しか知らない話しだ。
しかし、恐らくシエラ様はその情報を掴んでいるんだろう。
ギブアンドテイクと言う「恋人」にしては何とも味気ない関係ではあるが、その申し出は大変ありがたい。
それに、それだけじゃない。
「分かりました。私でよろしければ、ショコラを広めるお手伝いをさせていただきたく思います。」
心を決めた俺はシエラ様を見つめて言った。
「本当ですか?ありがとうございます。
私の方も、今最もご懸念の事象からリフエール様をお助けできればと思います。」
少し驚いた表情を微笑みに変えてシエラ様が言う。
「大変ありがたく思います。ですが、元々私は貴方にお礼がしたかったのです。」
そのまま立ち上がった俺は、シエラ様の元まで行くと片膝を付いた。
王族にする礼以外では、最上位の騎士の礼を取る。
「不埒な賊より民をお救いくださった事、民を護る騎士として御礼を申し上げます。」
見慣れないのか目を丸くするシエラ様に思わず笑みが溢れる。
「そして、これは1人の兄としてーー。
妹をお助けくださったこと、心から感謝致します。」
そう。見ず知らずのユーナリアを助け、その後の処理までしてくれたシエラ様には何かお礼をしたいと思っていた。
その機会が巡って来た幸運に感謝しなくては。
「はい!それでは!契約成立ですね!」
元気よく話に割って入って来たミリ殿が、俺に何かを差し出す。
手紙…?
「兄様がゴネたらこれを、と。」
は?まさか…。
嫌な予感がして封を開けると、そこには間違いなくユーナリアの文字。
『私の結婚祝いは、超美人な義兄様がいいわ♡』
「~~~っ!!」
言葉が出ない俺を見て愉しげに笑うミリ殿。
「え、どうしてユーナリア嬢の手紙をミリが持ってるの?」
「文通してますので。」
「⁉︎⁉︎」
驚愕するシエラ様の表情を見て、先程から感じていた既視感の正体が分かった。
シエラ様とミリ殿の関係は、主従と言うより姉と弟に近いのだ。
女兄弟に振り回されながらも仲がいい、そんな間柄は俺の良く知る所である。
ふと、ユーナの手紙に続きがある事に気が付いた。
『何となくだけど、シエラ様はお寂しいのだと思うの。兄様、どうかお傍にいて差し上げてね。』
妹の本心が伝わるその文に、俺は思考を巡らせる。
シエラ様が、自分は実家と交流が無いと言っていた事に何か関係があるんだろうか…。
俺がその複雑な事情を知るのは、もう少し先の話しになるのだがーー。
かくして、俺とシエラ様は『恋人』になったのである。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
やっっと更新できました!
そしてやっとBL営業が始まります!
次回はミリ視点です(*´∀`*)
ミリ殿の言葉が俄には信じられず唖然としていると、目の前のシエラ様も同じ反応をしていることが分かった。
この件に関しては完全にミリ殿主導らしい。
いや、恋人のふりと言う計画そのものがミリ殿の発案なのかもしれない。
シエラ様は完全にミリ殿を信頼しているようだし、この二人、主従関係と言うよりもっと親密な感じがする。
どこかで体感したようなその空気を言い表す言葉を思い出せなくてもどかしい。
計画の全容は理解したし、俺が周りを騙すことにならないように配慮もしてくれている。
シエラ様のショコラを語るキラキラした目を見れば、金儲けのためではないと言う言葉も信じられる。
と言うか、貴族街に邸宅を2軒も所有する家の子息が金に執着するとは到底思えない。
お互いに婚約者や想い人がいないことも確認済み。
正直、シエラ様に婚約者がいないと聞いた時は口元がニヤけそうになってしまった。
良く考えれば、俺がそれを喜ぶなんておかしな話しなのだがーー
そのエメラルドに映る人間がいないことに、何故か胸が躍った。
家とは疎遠らしく、コンウォール伯爵家に迷惑をかけることもないらしい。
シエラ様の夢は純粋に応援したいと思うし、これは断る理由が無くなってきたような…。
そして、もし周りから率直な質問を受けた場合の対応。
シエラ様が実践してくれたのだがーー。
可愛い過ぎて撃沈した。
一瞬伏せた睫毛が白い肌に影を落とし、憂いを帯びる。
かと思えば、潤んだ瞳でこちらを上目遣いに見上げる様は大変に庇護欲をそそられる。
そこからの、小首を傾げてはにかんだような天使の微笑み。
「リフエール様とは親しくさせていただいております。」
破壊力が強すぎて思わず呻いたのは仕方ないだろう。
この可憐な貴人の「親しくしている」相手が俺だと言うことに対して、物凄く溜飲が下がる。
そして、だいぶ傾きかけた心の内を読み取ったかのような提案。
女性達を花に例えた物言いは流石、上流階級と言った所だろうか。
つまりは、騎士団寮に殺到している彼女達をどうにかしてくれると言うことのようだ。
それも穏便な方法で、ヨシノの花が散るまでに…たった2週間でそれが可能だと言う。
俺が毎日多くの女性達に待ち伏せされていることは既に王都に広まっているが、それが原因で寮を追い出されそうな事は騎士団の上層部しか知らない話しだ。
しかし、恐らくシエラ様はその情報を掴んでいるんだろう。
ギブアンドテイクと言う「恋人」にしては何とも味気ない関係ではあるが、その申し出は大変ありがたい。
それに、それだけじゃない。
「分かりました。私でよろしければ、ショコラを広めるお手伝いをさせていただきたく思います。」
心を決めた俺はシエラ様を見つめて言った。
「本当ですか?ありがとうございます。
私の方も、今最もご懸念の事象からリフエール様をお助けできればと思います。」
少し驚いた表情を微笑みに変えてシエラ様が言う。
「大変ありがたく思います。ですが、元々私は貴方にお礼がしたかったのです。」
そのまま立ち上がった俺は、シエラ様の元まで行くと片膝を付いた。
王族にする礼以外では、最上位の騎士の礼を取る。
「不埒な賊より民をお救いくださった事、民を護る騎士として御礼を申し上げます。」
見慣れないのか目を丸くするシエラ様に思わず笑みが溢れる。
「そして、これは1人の兄としてーー。
妹をお助けくださったこと、心から感謝致します。」
そう。見ず知らずのユーナリアを助け、その後の処理までしてくれたシエラ様には何かお礼をしたいと思っていた。
その機会が巡って来た幸運に感謝しなくては。
「はい!それでは!契約成立ですね!」
元気よく話に割って入って来たミリ殿が、俺に何かを差し出す。
手紙…?
「兄様がゴネたらこれを、と。」
は?まさか…。
嫌な予感がして封を開けると、そこには間違いなくユーナリアの文字。
『私の結婚祝いは、超美人な義兄様がいいわ♡』
「~~~っ!!」
言葉が出ない俺を見て愉しげに笑うミリ殿。
「え、どうしてユーナリア嬢の手紙をミリが持ってるの?」
「文通してますので。」
「⁉︎⁉︎」
驚愕するシエラ様の表情を見て、先程から感じていた既視感の正体が分かった。
シエラ様とミリ殿の関係は、主従と言うより姉と弟に近いのだ。
女兄弟に振り回されながらも仲がいい、そんな間柄は俺の良く知る所である。
ふと、ユーナの手紙に続きがある事に気が付いた。
『何となくだけど、シエラ様はお寂しいのだと思うの。兄様、どうかお傍にいて差し上げてね。』
妹の本心が伝わるその文に、俺は思考を巡らせる。
シエラ様が、自分は実家と交流が無いと言っていた事に何か関係があるんだろうか…。
俺がその複雑な事情を知るのは、もう少し先の話しになるのだがーー。
かくして、俺とシエラ様は『恋人』になったのである。
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