上 下
45 / 65

ソワソワ? ※シエラ

しおりを挟む
朝起きて部屋から出ると、いえに流れる雰囲気が違った。

いつも通りめちゃめちゃ静かではあるんだけど…掃除とか装飾品とかに、使用人達のそこはかとない気合いを感じる。

ミリとルドを除いて4人いるこの邸の使用人。
彼女達は僕が学院に通う為に領地から出てくる時、一生に付いて来てくれた。
卒業後は領地に戻るように言ったんだけど、今でも王都に残ってくれてる。

名前を聞いて驚くなかれ。
アリス、アリエル、アナスタシア。
三姉妹のAAAトリプルエー‼︎
しかもさ…お分かりいただけただろうか。
世界的に有名なキャラクターのお名前をしていらっしゃるのだ。
(念のため補足するとアナスタシアは某お城に住むプリンセスの義姉ね。)

前世で言う所の11LDK (+離れ+温室)の邸をたった3人で維持する彼女達は、気配を消すのが上手い。
いつの間に掃除やら洗濯やらしてるんだろう?ってくらい目にする機会が少ないんだよね。
ただ、そんな3人のおかげで邸はいつも清潔でピカピカだ。

残りの1人はシェフ兼パティシエのヒューゴ。
ルドを除くと唯一の男性で、60歳くらい。
本邸の厨房でバリバリ働いていた彼は、元々スイーツは専門外だったらしい。
ただ、僕が異様に拘るせいでそっちも本格的に作るようになった。
今では、大陸でも有数の腕前ってトッドが言う程に優秀。
僕はヒューゴに足を向けて寝られないな…。

使用人は住み込みで働いていて、各々の部屋は独立した離れにある。
だから、ここで実際に生活してるのは僕と、僕の護衛を兼ねてるミリとルドだけだ。
2人がいてくれて良かった。
こんな広い邸に独りとか寂しぬよ…。

それでもこの地区にもう一棟あるタウンハウスよりは断然狭いんだけどね。
あそこは実家に雰囲気が似てて苦手。
だってさ、僕の実家「要塞」って呼ばれてるんだよ。
繊細な装飾とか「美しい」って感じの建造物が好まれるこの国で、あそこだけが異質。
聳え立つ圧倒的な高さの城壁とか、色味が一切ない灰色の外観とか、万が一敵が侵入したら蹂躙できるようになってる創りとか…。
平和な日本人の記憶を持つ僕としてはどうにも馴染めないんだよねぇ。


「シエラ様!またそんな格好でウロウロして!」

色々考えてたもんだから、鋭いミリの声に飛び上がっちゃったよ。

「シャワーの後シャツのボタン全開でフラフラするのやめて下さい!!」

「えー、どうせ君達の他は誰も見ないんだからいいじゃん。またすぐ着替えるんだし。」

貴族と言うのは大変に面倒なのである。
朝きてシャワーを浴びたら、一度簡素な服に着替えて朝食。
朝食の後、外出や来客に備えてちゃんとした服にまた着替える。
寝巻き→朝食用の服→出かける用の服…。

脳裏に浮かぶのはパンイチで牛乳パック片手に出勤準備してたリョウの記憶。
今世で流石にそこまではしないけど、着替えが多いのはメンドイ。
その結果「ズボンは履くけどシャツは羽織るだけ」スタイルの完成である。

ミリはこれが大層気に入らなくていつもお冠だ。
ルドは「風邪引きますよ」って言ってボタンを留めてくれるから優しい。 

「次その格好でウロウロしたら、外出の時化粧しますからね。」

「えぇ⁉︎それは勘弁して!ごめんって!」

ミリは僕が1番嫌がる事で脅して来た。
「ちょっとだけですから!」とか何とか言って、ミリは僕の顔面に手を加えたがる。
何とか阻止してるけど、何で男の僕に化粧なんかしたがるんだろ。
地味過ぎて背景と同化しそうだからなのか…?
あ、顔色が悪いからかも。
僕の肌、全然焼けなくて生っ白いから。

「全くもう。今日はお客様が来るんですからシャキッとして下さい。」

「はいはい。それにしても、いつも以上にピカピカだねぇ。」

邸中が塵一つない程に磨き抜かれている。
恐るべし3姉妹トリプルエー

「トッド様以外がこの邸に来るなんて初めてですからね。皆んな張り切ったんでしょう。」

そう言われて見ればそうだ。
トッドは身内だから別として、これまで他人を邸に招いたことは無かった。
僕的には付き合いが面倒だしそれでいいと思ってたけど…使用人達にとっては張り合いが無いのかもしれない。

まぁ、だからと言って気軽に招待できる友達なんかいないけどな!
……………べ、別に…泣いてねぇよ。。。


と、とにかく!初めてのお客様だもんね!

はどうなるか分からないけど…。
リフエール様が心地よく過ごしてくれますように。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

キスから始まる主従契約

毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。 ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。 しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。 ◯ それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。 (全48話・毎日12時に更新)

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...