ショコラ伯爵の悩ましい日常

あさひてまり

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碧 ※シエラ

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「マントをしている騎士としていない騎士は何が違うんだい?」

第二部隊の先頭を行く2人はマントをつけていた。
騎士服と同じ濃紺で、裏地が銀色のやつ。
後の騎士はつけていない。

「先頭にいるのが隊長と副隊長です。マントの着用が許されるのは副隊長補佐までになります。」

僕の問いにルドが答えてくれた。
なるほどね。
そう言えば第一部隊にもいたなぁ。
マントがあるとカッコ良さが倍増する。
前世で言うと背の高いスーツの男性がロングコート羽織ってるみたいな感覚。
あれ、カッコいいよね!

「待って、もう終わってしまうのに…いらっしゃらないわ!」
「どうして⁉︎そのために来たのに!!」

第二部隊が終盤になると周りがザワザワし始めた。僕はどれがヴァンでニールでメルドラなのか判別するのに忙しくてそれ所じゃなかったけど。
もっと事前情報を仕入れとくべきだったな。
名前と特徴とか、王都のお嬢さん方に聞けば熱く語ってくれたと思うから。

「キャーーーー!!!!!!」
ふいに最後尾の沿道からが聞こえた。
物凄い歓声が上がっている。

え、何⁉︎
待って待って、やっと3人の判別がついたから顔をインプットしないと。
漸く僕が正面に向き直った時には、最後尾は目前に迫っていた。

「なんで!!なんでマントをされてるの!!!」
「副隊長補佐になられたからよ!!!」
「ダメ、鼻血出る…!!!」

祈りのポーズで滂沱の涙を流す乙女達。


「リフエール様ーーー!!!」



一際大きな歓声の先に、彼はいた。



太陽に輝く癖のない金髪、男らしいのに美しさを感じさせる顔立ち。長身の体躯はスラリとしていて、凛々しい騎士服にマントを羽織っている。
黒い馬に跨るその姿は絵画のようだーー。

そして、何よりも印象的なのは湖の底のように澄んだあおい瞳。


その碧は、真っ直ぐにこちらを捉えていた。


ーー目が、合ってるーーー。


周りの音が消えて、彼の存在だけを強く感じる。
目を逸らせないーー。



それは時間にするとほんの数秒だったのかもしれない。

「シエラ様!」

ルドの声に我に還ると、騎士団は既に前を通過していた。
少し先のほうでまた大歓声が上がっている。

「これでパレードは終わりです。少しお疲れになりましたか?」

ルドがぼんやりする僕を気遣ってくれる。

「うん…。ちょっとだけね。ミリが待ってるから戻ろう。」

馬車に向かって歩きながら、心の中で彼の名前を呟く。

リフエール…様…。

さっきの不思議な感覚は何だったんだろう。
まだ少し頭がぼんやりしてる。
アイドルと目があったら皆んな、こんな感じになるんだろうかーー。
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