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精神的に大怪我なんだが ※リフエール

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「待て、俺のことはいい。今はお前の無鉄砲の話しをしてるんだ。親父殿には報告してるのか?」

答えはイエスだった。
世話になった恩人には父から礼をしているらしい。
怪我をしたディアスも順調に回復しているようだ。

「ユーナ、今回は大事に至らなかったが本当に気を付けなさい。贈り物を大切にするのはギルも嬉しいと思うが、彼にとってお前の命以上に大切な物なんかないんだから。」

俺が真面目に言うとユーナリアは素直に頷いた。
この気の強い妹が、婚約者のことになると素直になる。頬を染めて贈り物を喜び、心からそれを大切にしている。

「俺も可愛い妹が無事で嬉しいよ。」

おいで、と立ち上がって手を少し広げれば、照れたようなユーナが笑いながら腕の中に収まる。
これが昔からお説教終わりの合図だ。
腕の中から俺を見上げてくるユーナを見て、綺麗な娘になったなと父親のようなことを思う。

「そう言えば、リフ兄様と同じことをシエラ様にも言われたの。」

どうやら、森で助けてくれたのはコンウォール伯爵家の三男らしい。
これには驚いた。
コンウォール家の私兵団「不死鳥」は王都騎士からも憧れの対象になっている。
俺にはそこまでの熱意はないが、王都騎士として鍛えて、いずれは不死鳥に入団したいと語る者も少なくない。

「長男と次男は有名だが…三男がいたとは知らなかったな。」

「とっっても素敵な方よ!あの方に剣は似合わないわ!!」

いやしかし、婚約済みとはいえ未婚の貴族女性に下の名前で呼ばせるのはどうなんだ?
「ショコラ伯爵」と言うのも、なんだか胡散臭いよなぁ。
妹はうっとりして話しているけど、俺にはあまり魅力的な人物とは思えないんだが。

「シエラ様は王都のショコラトリーのオーナー様なのよ!ほら、このショコラもいただいた物なの!!」

それは深いブラウンの箱にゴールドのリボンが飾られた高級そうな入れ物だった。
中身のショコラを見て息を呑む。
そこには男の俺から見ても美しいと感じる、宝石のようなお菓子が入っていた。

「3箱もいただいたから、リフ兄様にもお裾分けしてあげるわ!残りの1箱はもちろんギル様へ渡すの!」

そう言って笑うユーナリア見ていると、妹が心から愛する相手と結婚できることを本当に嬉しく思う。
それと同時に、自分にはそんな相手が現れることは無いかもなーーと少し寂しくなったりもする。

俺は妹の言う通り、焦がれるような恋愛をしたことがないから。

はしゃぐユーナリアの後ろから手を伸ばして、ショコラを1粒口に放り込む。
それは甘くほろ苦く溶けて、俺は少し慰められた気がしたのだったーーー。
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