ショコラ伯爵の悩ましい日常

お兄ちゃんでしょってやつ ※リフエール

そんな妹は婚約が決まると同時に、花嫁修行が始まった。
名ばかりの我が家とは違ってギルの家はちゃんとした貴族だから、社交のためのマナーは勿論、身体にも気を付けなければならない。

今までのように天気が良いからと庭でゴロゴロするな、廊下を走り回るな、身体に傷を作るなと言い聞かせた。

そこへ来ての、これである。

手紙の筆跡は妹本人で、何気ない内容の中に今回の事件をサラッと滑り込ませている。
おい、何で6日も前のことを今知らせて来るんだ。
ユーナは学院に通うため王都のタウンハウス（貴族の邸宅と違ってただの一軒家だが。）で生活しているから、同じ王都の俺へは1日あれば届くはずだ。

つまりあれだな。
他所よそから俺に伝わってしまうのを避けつつ、事のほとぼりが冷め出すギリギリを狙ったと言う訳か。

これは自分に後ろ暗いところがあって、叱られるのが分かっているからに他ならない。
妹が我が家で唯一恐れるのは俺だから。
のんびりした両親や弟など、あの妹からすれば恐るるに足らないだろう。

…いや、言っておくが家族仲は良好だ。
ただ、昔からユーナを叱るのは俺の役目だったのだ。
本当、長男って損だよな。