ショコラ伯爵の悩ましい日常

頭が痛い ※リフエール

俺がそれを知ったのは、事が起こった日から6日後のことだった。

「は⁉︎ユーナが賊に襲われかけた⁉︎」

騎士団寮に届いた手紙の内容に驚愕する。
17歳・絶賛婚約中・見た目（だけ）は美人
の妹には、充分素行に気を付けるように口を酸っぱくして言っておいたのに。
手紙を読めば無事なことは分かるのでそこは胸を撫で下ろすが…。
あのお転婆、今度は何をしでかしたんだ…。

ウェレン領を納める我が家は一応男爵家だ。
一応と付けたのは、貴族とは名ばかりの貧乏…ゴホン…なかなか質素な暮らしむきだからである。

領地がほぼ畑で構成されたウェレン領は、贅沢にまるで興味のない俺の父親そのもののような土地だ。
まぁ、平和でのんびりとした領民達もそれに不満は無いようで、父はそれなりに慕われていたりするのだが。

そんな家で育った俺も然程さほど贅沢に興味は無く、家督を継ぐのが1歳下の弟なのを良いことにさっさと王国騎士団に入団した。
騎士団には独身寮があるし、自立すれば家計の助けになると思ったからだ。

騎士団に入団した俺が配属されたのは第二部隊。
主に王都の警備を担う部隊だ。
王国の要である王都を守る第二部隊は騎士団の中でも花形と言われていて、日々の鍛錬はキツイがやり甲斐のある仕事だ。

そして喜ばしいことに、この度俺は部隊の副隊長補佐に任命された。
若手を育てる意味合いが大きいことは分かっているが素直に嬉しい。

そんな順風満帆な俺には悩みがあった。
それが件くだんの4歳下の妹ユーナリアのことである。

子供の頃からおよそ「ご令嬢らしさ」から遠かった妹だが、1年後の学院卒業と同時に結婚することになった。

お相手は同じく男爵家の長男ギルバート。
我が家とは違って裕福な彼の家とは母親同士が親しく、家族ぐるみでの付き合いがある。
そのギルバートの強い希望でユーナを嫁に貰い受けたいと打診があったのだ。
穏やかな彼が気の強い妹を好いていると言うのは意外だったが、我が家としては諸手をあげて歓迎した。
ユーナを貰ってくれるなんて！！
家族一同のあまりの浮かれっぷりにユーナ自身は憤慨していたが。